2019年2月25日月曜日

映画鑑賞『ともしび』

 
 
 
銀座4丁目、和光の裏手にある「シネスイッチ銀座」という映画館で
『ともしび』という作品を観てきた。
 
いわゆる娯楽映画ではないので、全国的にかかるようなものではなく、
映画館のセレクションで単館で上映されるタイプの映画だ。
 
なぜ、そうした映画を観に行ったかといえば、
主演がシャロット・ランプリングだということに尽きる。
 
映画は老境を迎えた主人公アンナ(シャロット・ランプリング)の心模様を
延々と静かに映し出している。
 
というか、なぜ?とかどうして?とかいう理由はまったく明かされないまま
物語は淡々と断片的に進んで行くので、
逆に全編、シャロット・ランプリングの苦悩する顔の表情だけが
映し出されているといってもいいぐらいだ。
 
先ず、冒頭に心理カウンセリングのグループワークらしきシーンで、
シャロット・ランプリングが金切り声を上げて叫ぶところから始まる。
他の何人かも順に叫び、
そうやって内なる何かを解放させているのだろう。
(心理カウンセラーとして、この冒頭シーンを知って、
どうしても観てみたいと思ったのであるが・・・)
 
しかし、見慣れぬ光景は
観るものを不安に陥れる冒頭シーンである。
 
映画は、たぶん、年老いた夫が何かの理由で収監され、
ひとりになったアンナがその孤独を受け止め、
徐々にひとりで生きていくことを受け入れる心の軌跡を描いていると思われる。
 
ただし、なぜ夫が収監されたのかとか、
なぜ、息子がアンナと会う事を拒んだのかとか、
なぜ、夫が息子を許さないのかなど、
肝心のところはいっさい語られないので、
観るものは想像し、画面のアンナから読み取り、感じることしかできない。
 
哲学的というか、不条理劇というか、
小難しい本を手に取ったけど、
よく分からなかったというのがこの映画の感想だが、
好きな女優のシャロット・ランプリングを疑似体験するかのごとく、
まじまじと観て、体感するという意味では面白かった。
 
シャロット・ランプリングといえば、
その昔、『愛の嵐』で、上半身裸にドイツ軍の軍服を着たポスターが
あまりにも有名だ。
 
ナチス・ドイツに捕まって収容所送りになる人の列から引っ張り出され、
ドイツ軍将校の愛人になっていくシャロット・ランプリングの
細くてしなやかな体と愁いを含んだ表情は、
若い日の私を大いに刺激した。
 
あの時のシャロット・ランプリングが、老いた裸身を晒し、
しわに埋もれた顔を大写しにして、苦悩する今を演じている。
 
その間の何十年を私はほとんど知らないけれど、
あの時のシャロット・ランプリングから受けた印象は今も変わらず、
ひとりの女性を通して、
人生についていろいろ感じるところ、考えるところがあった。
 
シネスイッチ銀座という映画館もまた、
銀座のど真ん中にあって、
何十年も中に入ることなく来てしまったが、
ひっそりと、だが信念を貫いて、
しっかりと発信し続けてきたことが分かる。
 
座席はそんなオールドファンが静かにやってきて、
静かに鑑賞し、
静かに席を立ち、身繕いをして帰っていく。
 
まるで桜の咲く頃のような暖かさと柔らかな日差しに恵まれ、
映画館を出ると、その明るさと人通りの多さに驚いた。
 
ちょっとした異次元に迷い込み、
見知らぬひとりの老女の人生を覗き見て、
また、現実の自分に戻ってきたという感じだ。
 
何かこの映画が私にもたらしたのか、もたらさなかったのか、
今はまだ分からないが、
シャロット・ランプリングの物憂げな表情だけは
『愛の嵐』の軍服姿同様、
脳裏に焼き付いた気がする。
  

2019年2月22日金曜日

美容鍼 体験談

 
 
 
 
 
長年通っている整体の先生のところで、
美容鍼(びようしん)をすることになった。
 
今日で、その2回目。
 
通常は版画の彫りや摺りで凝った肩や首や腰などをほぐしてもらいに
3週間に1度の割で、整体のお世話になっていた。
 
担当のY先生はカイロプラクティック(整体)の施術だけではなく、
鍼灸師の資格も併せ持っているので、
2年前、重い帯状疱疹にかかった際は、
家に5回も往診に来てくださって、
お灸をしていただいたお陰で治りが早かった。
 
鍼治療に関しては、今までお願いしたことはなく、
鍼が何となく怖いということもあって、
これまで触れずにきた。
 
しかし、最近、治療院に「美容コース」が出来、
その施術を受けた方の「before」「after」の写真がボードに張られるようになり、
にわかに気になってきた。
 
以前は、長いこと、ひとりのエステティシャンのところに通って、
美顔エステをお願いしていたのだが、
その方が、数年前に廃業してからは、
美顔に関しては、いくつかの化粧品を試すに留まっていた。
 
女性の顔に関する悩みは数々ある。
「しみ」「くすみ」「たるみ」「乾燥」「むくみ」
「ほうれい線」「マリオネットライン」「目尻のしわ」「おでこのしわ」など。
 
これらを 
年齢を重ねれば仕方がないと諦めるのか、それとも抗うのか。
 
抗うとしたら、どんな方法で抗うのか。
 
高級なエイジング化粧品なのか、エステなのか、
はたまたプチ整形や本格的な整形なのか。
 
その選択肢のひとつとして「美容鍼」が今、注目を集めているらしい。
 
私はといえば、 
エステは気に入っていたエステティシャンが辞めてしまったし、
整形は嫌だし、
高級化粧品も値段の割りに効果が大したことないし・・・。
 
というわけで、私も「美容鍼」の効果を
身をもって体験してみようじゃないかと思い至ったというわけだ。
 
2週間ほど前の私の申し出に対し、
Y先生もかなり前のめりに取り組んでくださる様子で、
今日でまだ2回目だったが、この先、数回分の予約も取ってある。
 
皮膚が再生される45日間の間に、
症状によって適切な回数の施術を行い、
結果を導き出す計画だ。
 
私が出したい結果は
「アゴのフェイスラインのシャープさ」と「マリオネットラインの解消」
「頬のむくみとたるみの解消」である。
 
今日は1回目の時より、やや深く鍼を刺しているとかで、
施術中のチクチク度合いも強かった。
こうして、鍼で刺激を与え、傷つけることで、
それを治そうとする体の力を利用して再生を促すということだったか?
 
ちょっと理論的にはあやふやだが、
肌の上からクリームを塗りたくるより、
深部に直接アプローチする方が効果がある気がしている。
 
まあまあ、信じるものは救われる。
許すまじ!マリオネットライン!!
打倒!アゴのたるみ!!
 
てなわけで、身を挺して望むこのミッションに幸あれ!
 
 
 

2019年2月16日土曜日

3日がかりの本摺り

 
 
 
 
 
 
毎日、今にも雪が降り出しそうなぐらい寒いし、
曇り空のしょぼい天気が続いている。
 
しかし、そんな曇天こそ、版画の摺り日和。
 
本当は雪でも雨でも降っていた方が、湿度という点ではベターだが、
太陽の光が強烈に窓辺に射し込んでいるよりはいい。
 
92×92㎝の大きな作品の2点目。
1月下旬に摺ったものと対の作品だ。
 
今回の作品は画面に配置されている帯締めは結ばれていない。
流れるような絡まるような動きのあるデザインになっている。
 
この帯締めは男女を表していて、
見る人が深読みして楽しんでもらえたらと思っている。
 
となるとタイトルも重要になってくるが、
それは目下、思案中。
 
摺りながらいろいろ考えているが、
発表する前、額装する段階までに決定しようと思う。
 
1度に4枚の和紙を湿して、
一昨日の午後から摺りスタート。
 
当然、その前の日に絵の具の調合をし、夜には紙を湿した。
(あの日は怪しいハガキが届いた日で、
一時は本摺りなんてしている場合かと思ったけど・・・)
 
摺りの初日は午前中に絵画教室、
2日目の午前中は整体と、出掛ける用事が入っていたけど、
かえってその方が、集中力の続く4~5時間ずつの作業になり、
気分的にも体力的にもいいのかもしれないと感じた。
 
3日目の今日はさすがに何の用事も入れず、
朝から最後のパートまで摺り続けた。
 
午後2時半ぐらいにすべての摺りの行程を終了したので、
後の水張りや後片付けのことを考えたら、
この3日方式は悪くない。
 
細切れに強制終了をせざるを得ないことによって、
集中力の欠如によるミスもなかったし、
間を開けることで、絵の具の落ち着きも得られたので、
いいことづくめだ。
 
ただし、その間、何度かやってくる食事作りの時間がストレスで、
こんな時は店屋物とかお弁当で済ませられたらいいのにと
心の底から思うが、我が家の文化にはそうした選択肢はない。
 
まあ、とはいえ、無事に4枚の本摺りが仕上がったので、
今夜はビールかワインでも飲みながら、
ステーキ・ディナーのつもりだ。
 
昨日、整体で受けた、初めての『美容鍼』
せっかく、鍼のお陰で少しシュッとなったフェイスラインが、
またまたうつむきっ放しの体勢で血流が悪くなって、
元の木阿弥かしらと心配していたが、
何と何とリフト効果は続いている。
 
これから数週間、週一で美容鍼の施術を受けることになっているので、
そちらのご報告は改めて。
 
とにかく無事の本摺り完成、
お疲れ様と自分をねぎらおうと思う。
 
 
 

2019年2月13日水曜日

新種の詐欺手口

 
 
昼前、お茶のお稽古の出がけに、ポストの中を覗くと
見慣れないハガキが入っていた。
 
私宛で「民事訴訟最終通達書」とある。
 
は?
何これ?
どゆこと?
 
民事訴訟とは穏やかじゃない。
出がけだったので、その場でさらっと読んだところ、
私はどうやら誰かに訴えられていて、
何かの契約不履行らしい。

そして、「連絡をしないと、原告側の主張が全面的に受理され、
裁判所の許可を受けた執行官立ち会いのもと、
現預金や有価証券及び、動産・不動産の差し押さえが強制的に
執行される場合があります」
とある。

ぎょぎょぎょ。
 
まったく心当たりがないが、
民事訴訟とか、契約不履行とか、強制執行とか、
誰でもちょっとぞわぞわするような単語が並んでいる。
 
「何か変」「もしかして詐欺?」といった考えが頭に浮かび、
とりあえずポストにハガキを突っ返して、お茶のお稽古にいった。
 
しかし、ハガキには「訴訟取り下げ最終期日 平成31年2月14日」とあった。
今日は2月13日だから、明日である。
 
いくら何でもそんな切羽詰まって、
そんなこと言ってくるはずはないと思いつつ、
漫然と夕方遅くまでお茶のお稽古をしているわけにもいかず、
早めに切り上げて、帰宅した。
 
家にいたダンナに
「ねえ、こんな身に覚えのない怪しいハガキが来たんだけど、
警察に届けた方がいいかな」と尋ねると、
「ほっとけよ」と素っ気ない答えが返ってきた。
 
それでも何だかモヤモヤが収まらないので、
駅前の交番ではなく、港南区の警察署まで車を出した。
 
「身に覚えのないことで、変なハガキが・・・」というと、
言い終わらないうちに「あちらの窓口へ」と言われた。
どうやら、こんなことはよくあることのようだ。
 
窓口にでてくれた警察官はなかなかキリッとした人で、
見るなり、
「あ~、これは完全に最近よくある詐欺の手口ですね」と言った。
 
つと見ると、
窓口の脇に私が手にしているハガキとよく似たハガキを
10倍ぐらいに大きく引き延ばしたコピーが張ってある。
 
そこには
● お問い合わせ・相談窓口には絶対に電話しないこと
● ハガキでこうした通達は絶対こないのでありえません
● 電話番号だけがニセ物で、犯人グループにつながる可能性がある
などの、注意喚起が添えられている。
 
警察官によれば、
一般の人が聞けば一瞬びびるような「民事訴訟」だの「法務局」だの
「警察」だのをかたって、こうしたハガキを送りつけ、
「問題が起きているので、動産や不動産が差し押さえになる」だの
「解決するにはいくらお金がいる」だのと言ってくるらしい。
 
よく見れば、つっこみどころ満載の内容なのだが、
慌てる心理を突いてくるというか、動揺したスキに漬け込むのが、
こうした犯罪の手口だということだ。
 
まあ、今回はイケメン警察官に丁寧に説明してもらって、
「やっぱりね、そうだと思った」と胸をなで下ろして事なきを得たが、
実際、お茶のお稽古も早く切り上げたわけだし、
数時間悶々としていたわけだから、
被害がゼロだったわけではない。
 
というわけで、
どんな輩があなたを狙っているかもしれないので、
くれぐれもご注意を!
 
詐欺は「オレオレ詐欺」ばかりではないというお話でした。
 
 


2019年2月6日水曜日

極寒の午後に心温まるGIFT

 
 
 
 
 
 
急に温かくなったかと思ったら、
またまた気温が急降下して、今日は極寒な上に雨が降っている。
 
午前中に郵便局の人が保険の手続きにやってくるというので、
いつもは人の出入りのないリビングを片付けた。
 
寒い中、担当の女性が冷たい雨に濡れながら、原付バイクでやってきて、
30~40分ほどで帰っていった。
 
がらんとしたリビングにいても、何かをしようという意欲が湧いてこない。
本当なら次の作品の試摺りをとってもよさそうなものだけど、
全然、気分がのらない。
 
二日後に友人が訪ねてくることもあって、
せっかくきれいにしたのに
リビングの隣の和室に版画の道具を出して、
仕事を始めるのはためらわれるのだ。
 
そこで、今日は逆に花など飾って、
家の中をもっと華やかに小綺麗にすることにした。
 
雨の中、花屋さんに行き、ミニバラや大好きなアネモネの花を買い、
アールグレイの紅茶の缶を求めた。
明日、ケーキを焼いて、金曜日に友人を迎えるつもりだ。
 
街は早くもバレンタイン一色に染まり、
催事場といわず、デパ地下の特設売場といわず、
チョコレートで溢れかえり、
見たことも聴いたこともないオシャレなチョコレートが並んでいた。
 
今年は和風のチョコレートが人気らしく、
日本酒やわさびなど、和の食材が練り込まれていたり、
歴史上の人物をテーマにしたチョコレートなどが、
メインの売場を飾っている。
 
自分チョコにこうした変わり種を買うのもいいなと横目で見ながら、
今日のところは辞めておいた。
何しろチョコレートはかなり高価なので、
気分がのってる時じゃないと気安くは手が出せない。
 
家に帰り、寒いのでうどんを作ってすすっていると、
宅急便が届いた。
見ると次女からのクール便で、中身はなんとチョコレート!
 
バレンタインとついこの間のダンナの誕生日を兼ねてのプレゼントだという。
 
美味しそうなナッツやドライフルーツやキャラメルなどがのった
オシャレなかち割り式の流行のチョコレートだ。
 
チョコレートに合ったコーヒー豆もセットになっている。
 
ダンナに「こんなプレゼントが届いたわよ」と見せると
「そんな金を使わなくてもいいのに・・・」と、まんざらでもなさそうに
小鼻を膨らませた。
 
ダンナは家の家事には一切タッチしない
「お前は昭和初期か!」という人間だが、
コーヒーだけはこだわって豆から挽いて煎れている。
 
なので、このプレゼントは嬉しいはずだ。
(たぶん、何のかんのと講釈はいうと思うが・・・)
 
今日みたいに寒くてテンションが上がらない日に、
娘からのサプライズ・プレゼントがあると、
否が応でもテンションも上がるし、ほっこりする。
 
とりあえずはプレゼントじゃないコーヒーを煎れてくれたので、
プレゼントのチョコレートをかち割って、
一緒にいただくことにしよう ♪♪
 
 
 
 

2019年2月4日月曜日

先生をお祝いするお茶会

 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
節分の昨日、茅ヶ崎のお茶室で「年女になられた先生を寿ぐお茶会」が、
私達、弟子の主宰で行われた。
 
いつもはお茶会といえば、
「亭主」といってお招きする人(先生)ひとりの仕切りで
行われるものなのだが、
茶会の流れ、しきたり、お道具の準備、組み合わせ、懐石料理など、
どれひとつとっても弟子のひとりではまかないきれない大事なので、
全員野球方式で、分担して執り行うことになった。
 
そもそもこの話が弟子のひとりから出たのは昨年の秋だったので、
そこから場所の選定、下見、各自の分担をどうするかなど、
決めなければならないことの多さにびっくりしながらも、
徐々に気運は高まり、
それぞれ任された料理の試作などに励んで、
遂に当日を迎えた。
 
私の分担は懐石料理に登場するいくつかの器を自作のものにするということと、
「八寸」といって、
お食事の後半に、亭主がお酒の銚子と共に持って出る
「海のもの」「山のもの」と呼ばれる酒の肴を作ることだった。
 
お茶会の大きな流れとしては
「炭点前」「懐石料理」「濃茶」「薄茶」となるのだが、
借りたお茶室は、炉の中には電熱器が仕込まれているので「炭点前」はできない。
 
なので、控えの部屋から広間に入ると、「懐石料理」から始まることになる。
もちろん全編を通して「正客」という1番目のお客様は先生。
 
お招きした「亭主」には一番入門の古いお弟子さん、
何かと亭主をサポートして立ち働く「半東」は
2番目に入門したお弟子さんがなる。
 
そして、お客の2番手「次客」には3番目に入門した私が、
「三客」には私と同時に入門したけど、私より若い人がなった。
 
そんな風に役どころを割り振り、6名のお客さんが連座するという形になった。
 
いよいよお料理が順番に運び出され、
まずは「飯椀」「汁椀」「向こう付け」の器がのった「折敷き」と呼ばれるお盆が
ひとりひとりに運ばれてくる。
 
いつもの初釜などで、先生がお客の中に混じることはないので、
正客としての先生と亭主のやりとり、
器の扱いや作法など、何もかにもが勉強になる。
 
最初の折敷きの段階で、
ご飯の盛り方やいただく順番、ご飯の残し方、お箸の置き方など
、レクチャーは止めどなく続く。
 
毎回、出されたお料理を手がけたのが誰か発表されるのだが、
「汁椀」の具の紅白生麩や羅臼昆布でとったお出汁、白味噌の加減、
「向こう付け」の鯛のお造り、柚酢、青のりなど、
それぞれの渾身の作という感じで、とても美味しかった。
 
レシピは私が持っていた「柿傳」の分厚い料理本をコピーしたものを元に、
それぞれが何度か試作したもので、
1回で成功したわけではなく、試行錯誤が見て取れる。
 
最初に出てきた折敷きの中で、 
「向こう付け」の器は「笹舟」をかたどった私の器だったのだが、
先生や皆さんから色や形を褒めていただき、嬉しかった。
 
次に続く「煮もの椀」「焼き物」「強肴」「預け鉢」「八寸」「香の物」、
果ては「主菓子」「干菓子」に至るまで、
すべてに担当メンバー手作りの力作が並び、
いずれもプロ裸足の出来映えで本当にびっくりした。
 
私の「八寸」は
海の物が「海老の山椒焼」で、山の物が「金柑の甘露煮」だったが、
こちらも喜んでいただけ、作り方など訊いていただけ、一安心。
 
もう1点、肝入りで出した「焼き物用の陶板」(なんちゃって魯山人風)も大好評で、
本格的に炭火で焼いた鰆の幽庵焼を作って、
その器に載せて出すことになった担当の友人が喜んでくれたのは
嬉しい限りだ。
 
懐石料理が済んで、
場所を広間から小間に移しての「濃茶」と「薄茶」にも趣向が凝らされ、
とりわけ「濃茶」に関するお道具は「亭主」役のお弟子さんが
福島のご実家から貸し出してもらった立派なお道具が
ずらり並んで素晴らしかった。
 
この長丁場のお茶事に必要なお道具や知識や経験を
先生はひとりでもって主宰なさっているんだと思うと、
全員ただただ感心・感謝するばかり。
 
それでも逆に弟子がここまで育って先生のために自主茶会を開いてくれたと
先生はとても嬉しそうにしていらしたので、
ここまで大変だったけど、本当によかったとみんなで喜びあった。
 
なんだか夕方、帰路についた時には、
フラフラするほど疲れたけど、
何かを出し切った感と、達成感に包まれ、
しあわせな気分だった。
 
帰りの電車で「また、やりましょう」といわれても、
「今日を超えられる気がしない」などと話して笑い合ったが、
ひとつの目的に向かって努力できる仲間と、
打ち込めるものをもっていることの
ありがたさをしみじみと感じた1日だった。
 
茶の道は深く、そして、ゆかしきものなり♪