2025年8月7日木曜日

新作は超大作

 












2025年の夏は間違いなく
今まで生きてきた中で一番暑い夏である。

とりわけここ数日の暑さは
もはや外に出るのは危険だと思うほど。

だからといって家に籠っていたわけではないが、
とにかく今週中に、新作版画の原画を
版木に転写し終えたいと思って
毎日、アトリエの彫り台の前に座っていた。

彫り台は体重をかけて彫りやすいように
少し前に傾斜している。
そのままでは奥行きが足りないので
90㎝×90㎝の板を乗せる。

そして、同じ大きさの版木をその上に乗せて
トレッシングペーパーに描いたトレぺ原画から
必要な部分をカーボンで写しとる、
それが版木転写である。

今回の新作はイメージサイズが
80㎝×80㎝の超大型の版画なので、
版木もアーティスト用のシナ材の6mm厚のベニヤを
3裁ではなく2裁といって
90㎝×90㎝の大きさに裁断してもらっている。

イメージサイズとは絵の大きさのことなので
和紙の大きさは余白が周囲に必要なので
90㎝×90㎝になる。

大きなサイズの版画作品を創ろうと思うと、
版木もトレッシングペーパーも和紙も
特注するか、
つぎはぎにしてその大きさにする
必要があるので、
いちいちめんどくさい。

ならば、なぜそんなに大きな作品を創るのか
もっと手軽な大きさでいいではないかとも思うが、
やはり、個展の時や団体展の時の
大きな壁にかけることを考えると
大きな作品も必要なのだ。

それに今回はどうしても正方形の作品が創りたく、
原画のラフプランの段階から
それにはある程度以上の大きさがないと
言いたいことが表現できないと感じたのだ。

作品は大きくなると
二乗三乗と難易度が上がる上に
体力的にもしんどくなる。

そろそろ「体力の限界」と言って
引退した横綱のように
自分の体力との兼ね合いを考えなければならない。

周囲の絵描きの友人と会えば
会うたびに断捨離の話が出る。
そんな切ない事情を抱えながらも
みんな制作している。

もはや「体力の限界」ではなく、
「創作意欲の限界」を迎えて
作品自体を創らなくなってしまった友人も
何人もいる。

それを思えば、
まだ創りたいと思うものが湧いているだけ
自分は幸せなんだと思って
この溶けそうな暑さの中、アトリエに籠って
版木転写の作業をした。
もちろんクーラーは昼夜の別なく
ガンガンに効かせている。

木版画は隣り合った色は別の版に起こす。
私の場合、
ひとつの作品は約10~12版に分割される。
色数は25~35色ぐらいだろうか。
今回、準備した版木は2点で4枚。

版木は両面彫れるので、
1点の作品は2枚の版木、
つまり4面使うことができる。

版の面数は4面だけど、
少しずらしたり、天地に取ったりしながら
4面の中に、10~12版、転写する。

これはちょっとした頭の体操なので、
神経を使う。

隣り合わせた色は正確に転写できれば
ボールペンの太さの分0,5mm重なる計算である。

それをいい加減に転写してしまうと
ずれたり隙間ができたり重なり過ぎたりする。

まだ一応、退院してから1か月の病後の体なので
水分を多めにとって
小まめに休憩を入れ、
座りっぱなしにならないようにすることを
自分に課しているのだが
出来ているようないないような…。

4日間かけて、2点分、
合計8面の版木を転写し終えた。

大汗をかいた後、シャンプーし、
髪をとかすと
丁度、手術の時の剃り跡に生えてきた髪の毛が
1㎝ほどに伸び、
かぶせていた長い髪を突き破って
つんつんと自己主張するようになっている。

それを見ると、
「まだ、無理は禁物よ」と
いつも心配してくれる友人の言葉を思い出す。
隠そうとしてもつんつん飛び出て主張するので
「まだ病後なんだな」と思わされるのだ。

8月はまだまだずっとこんな暑い日が続くだろう。

版木転写が終われば、
あとはひたすら彫りの作業だ。

これまた、はてしなく続くと思われるので
上手にカーブスやカウンセリングなど
出かける用事とバランスをとりながら
体調管理をしようと思っている。

皆様も水分補給を怠らず
熱中症にだけは気を付けて
猛暑を乗り切ってくださいませ。


















 







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