2026年4月26日日曜日

鷺の作品 本摺り

 
















土日の2日間で
個展までに仕上げたいと思っていた
中型作品の本摺りをした。

個展はまだ先なのだが、
30日にフォトグラファーのHさんが
我が家まで作品の撮影に来てくれるので
それに間に合わせたくて摺ることにした。

摺ることにしたのはいいのだが、
なかなかカレンダーに隙間がなく、
当初、日月の2日間に本摺りをと思っていたが
月曜日に初回カウンセリングと
英語本ミーティングが入り、
急遽、前倒しに。

しかし、土曜日は土曜日で
1ヵ月も前からカウンセリングが入っているので
それをこなしつつの本摺りと相成った。

さすがに本摺りの日は
それだけに集中したいのだが
なかなか思うに任せない。

結局、前日の金曜日、
パティシエ学校の授業から帰ってきてから
絵具の調合と和紙の湿しをし、
土曜日の午前中に2時間
午後に2時間、
夜に2時間と細切れに摺る時間を調整した。

しかし、やってみると
本摺りに集中できるのは
実質2時間が限度なので、
やむなくメークをしたり出かけることになり
案外、リフレッシュできている自分がいた。

昔の私は
「恐怖の12時間摺り」とか粋がって
夜明け前から夕方まで
一気呵成に摺っていたものだが、
そうすると途中で何だか頭がふらつき
イージーミスをしたりする。

よく9割がた摺った作品の
最後にチョンボをして
叫びながら和紙を丸めるなんてことがあった。

若いからこそできる無茶な摺り方だったが、
やはり人間の集中力や持続力は
そうそう続くわけではない。

なので、今回みたいに細切れに摺って
姿勢を変え、外に出てカウンセリングする
みたいなやり方は効率がいいのかもしれない。

さすがに本日、日曜日は1日中、
アトリエに籠って
本摺り後半戦にじっくり取り組んだ。

お陰でノーミスで6枚の本摺りが
出来あがった。

この作品は9月初めの「文学と版画展」にも
出品予定で
『白鷺立つ』という小説の装丁に使うつもりで
創り下ろしたものである。

開催時期が個展と丸被りなので
個展には出品しないかもとも思っていたけど
出来あがってみたら
なかなかいい作品になったので
同時期に2会場で展示することになりそうだ。

冷却期間をおかないと
自分の作品を冷静にジャッジできないけど
とりあえず、
無事に本摺りを終えることが出来、
作品撮影にも間に合ったので
やれやれという気持ちだ。

鷺という鳥は物語や映画では
かなり重要な役どころで出てくるので
意味ありげな美しい鳥だと思う。

さて、この鷺の作品、
私の個展やグループ展などで
どんな役どころで出てくるのやら。

少し間をおいて
キャスティングを考えようと思う。

タイトルは
『凛として』にしようかな。









































2026年4月23日木曜日

本摺りに恵みの雨

 
















昨日は
とても爽やかなお天気に恵まれ
お茶のお稽古にも着物で出かけた。
もし雨だったらお稽古に着物は着ない。

本日23日は
終日、雨降り予報だったので
ここぞとばかり本摺りを決行した。

本摺り準備として、昨日の午前中は、
着物にアイロンをかけつつ、
本摺り用の和紙を湿し、絵具を調合した。

今朝はちょうど午前5時に目が覚めたので
そのまま起床して
ひとり静かにアトリエに籠った。

今回の本摺りは
以前、彫ってあった紫陽花をモチーフにした
小品で
昨年6月の紫陽花展に間に合わず
彫った版木のまま寝かせていた作品だ。

試し摺りは先週、とってあるので
今日は粛々と本摺りを進めるだけだ。

しかし、来週に予定されている
プロのカメラマンによる撮影までに
もう1点本摺りをしなければと考えているので
小品とはいえ無理をせず8枚和紙を準備した。
(小品だと9~10枚摺るところ)

摺りの手順は
いつも通り白っぽい雨のパートから。

今回の作品は
絵全体に雨が降っているので、
「~な雨」みたいなタイトルにしようと思う。

昨日の自分と今日の自分が
まるで別人のような1日だ。
それが私だと新しく制作したHPでも
明らかにしたばかりだけど、
自分でもその変わり身に笑えてくる。

版画家業をしている時は
陰キャなのではと勘違いされるが
実は本摺りをしながら、頭の中では
昨日の出来事を思い出しては
思い出し笑いをしたり妄想したりしているので
案外、ルンルンだったりする。

今日は何を思い出し笑いしていたかといえば、
新しく出来あがったもうひとつのHPの
制作担当の方とのやりとりで、
いろいろな要望を聞いてもらったことを
思い出していた。

大阪にいるMさん(男性)とは
実際にお目にかかることはないけど
ZOOMで繋がっていたり
電話でPC操作を教えてもらっている。

PC操作にイマイチな私の
我儘なリクエストに応えようとしてくれる
とてもいい人だ。

私はこうした制作会社の方は
総じて男性の方が優しいと感じている。
女性の担当さんは
こちらがPC操作に手間取ると
「そんなことも知らないの?」みたいな
空気を画面越しに感じることがあるが、
男性の方が丁寧かつ
あの手この手で要望に応えてくれるのだ。

昨日も新しいHPの保存して表示する件で
Mさんには
いろいろお世話になってしまった。

そんなやり取りをひとり思い出し、
ニヤニヤしながら
本摺りをする版画家。
相当、怪しい。

試し摺りの時はそんな余裕はなく、
1色1色どんな色にするのか
彩度はどうする、明度はどうすると
頭は作品のことでめいっぱいだ。

しかし、案外、本摺りは
絵具の調合は前日に済んでいるので
あとはミスなく摺ることだけを考えればいい。

なので、職人・摺り師としては
長年の経験があるので余裕があるのだ。

5時半から摺り始め、
8枚の本摺りをちょうどお昼頃摺り上げ
水張りをして、本日のミッション終了。

思っていたより、早く済んで
余裕のよっちゃんだ。

摺っている間にタイトルも閃いた。
タイトルの「~な雨」は
「優しい雨」にしようと思う。
































2026年4月22日水曜日

4月のお茶のお稽古












   今日は4月最後のお茶のお稽古日。

お茶道の世界では

1年の内、

大きくしつらえが2つに変わる。


11月が炉開きといって

お茶の世界のお正月にあたり、冬の始まり。

ここでお新茶(抹茶)の封が切られ

初めてその年のお茶を味わうことになる。

お茶室では炉が切られるので、

炉にお釜をかけたお点前になる。


4月いっぱいまで炉は切られていて

5月になると炉の部分は普通の畳になり

風炉の季節の到来だ。


5月から10月までが風炉になり

5月からお茶の世界の夏が始まる。


炉は畳の一部に埋め込む形なので

いかにも茶道らしい風情だと思うが、

5月に畳の上にお釜が変わるにあたって

実は3月から炉の中の景色が徐々に変わる。


3月、釜を乗せる五徳がなくなり、

炉段の縁に羽根がかかるような形の

裏甲釜という名のお釜になる。


4月はもうひとつお釜は畳に近づき

釣り釜になる。

釣り釜は文字通り、天井からたらした鎖で

釜を吊っている。

宙に吊られた釜が少し揺れ、

お釜の下にくべられた炭の景色が見える。


今日は4月最後のお稽古日だったので

いつもの濃茶点前と薄茶点前の他に

この釣り釜の炭点前の稽古もあった。


私は2023年の4月に釣り釜の炭点前を

やらせてもらったので、

今日は同行のNさんの番だ。


炭点前がある時はお点前を振られた人が

炭斗(すみとり)という籠に

炭を所定の形に組んだり、

香合に香を入れたりして下準備を行う。


炭点前は月の最後に1回あるかないかなので

とても勉強になるし、楽しい。

最近は茶道用の炭も

すっかり高価になり

なかなか手に入らないとかで

以前のような頻度でお稽古がないのが

残念だけど、

いつものお稽古ばかりでは飽きるので

炭点前やお免状物などがあるのは嬉しい。


今日はお天気や気温もちょうどよく

爽やかだったので、

私は春らしい色の墨流しの紬に

白地の木目柄の塩瀬の帯をしていった。


棚は「旅だんす」といって

この時期、本当なら屋外で

桜の木の下に毛氈でも敷いて使うような

お棚である。


屋外ではないけど、

釜が釣り釜で、棚が旅だんすとなれば

もうすぐ風炉の時期を迎える直前の春の

お道具組みである。


こんな風にお茶の世界ではお軸や花、

棚やお釜、お茶碗、お菓子にいたるまで

随所に亭主が季節やお客様のことを考えて

お道具組みを整える。


今日の茶杓は

大徳寺のお坊さん常閑さんの作で

銘は「花の宴」だった。


4月も20日を過ぎて「花の宴」は

地球温暖化の折に、ちと遅いけど

気持ちは赤い毛氈を敷いて

「花の宴」でお茶を点てているという物語。


こんな風に炉の季節を惜しみつつ

月日は流れ、

5月には風炉の季節に突入する。


日常の中ではどんどん季節感が薄れ、

気温は毎年、

例年より上昇しているという

ニュースばかり。


そんな中でも

節目節目に季節を愛で

行く春を惜しむ気持ちを大切にしたい。

なんてったって

日本は四季の国じゃなく二季の国になり

この夏、40℃を超えたら「酷暑」と呼ぶと

決まったばかりだ。


この先、毎日、暑い暑いと言いながら

過ごす毎日が目に見えるようだ。

せめて、爽やかな今日のような1日、

がんばって着物に袖を通し、

春を味わいたいと思う。

「日々是好日」

2026年4月18日土曜日

クロックムッシュの朝食

 







忙しい1週間も週末を迎えた。

私が忙しいと感じるのは
どういう時かというと
やるべきタスクがたくさんある時だ。
それもタスクの要素が多いと
頭の切り替えが追い付かなくて
忙しいと感じてしまう。

今週はいつものカウンセラー業、カーブス、
お茶のお稽古、英語の出版のミーティング、
友人との会食などの他に
パティシエ学校の非常勤講師業が始まった。

ルーティンに入っていないものが
始まる時には、
それが軌道に乗るか気を遣う。

昨日の金曜日が今年度の最初の授業で
オリジナルのテキストがプリントされているか、
どんな授業展開にしようか、
どんな学生がいるのかなど、
いくつも気にかかっていることがあった。

なので、11時20分スタートの3限に対して
10時には学校に着いて
まずはテキストの印刷が出来ているかを確認し、
学生の名簿をレポート用紙に書き出した。

最初の授業で行う
「○○なパティシエになりたい△△です」と
自己紹介で言ったことを
メモするためだ。

「初回から面接が始まっていると思え」と
授業では檄を飛ばし、
まずは自分のキャッチコピーを考えて
自己紹介してもらう。

そこに向かって向こう半年、
有言実行できるのか知りたいからだが、
そういう風に宣言することで
就活に立ち向かう覚悟を醸成するのが目的だ。

昨日は4クラス分、
4時間立ちんぼでしゃべり続けたので
最後はすっかりお疲れモードだったけど、
無事に初日を終え、
とりあえずホッとした。

学生の喰いつきもすこぶる上々。
「怖い先生、ヤバイ授業」だと
印象付けられたと思う。

ということで、今日と明日は
ようやく版画家業に戻れそうだ。
2日間で
2つ分の作品の試し摺りをするつもりだ。

試し摺りのパートが版画を創っていて
最もアーティスティックなので、
この2日間は雑念を払って集中したい。

そういう意味では
昨日のパティシエ学校初日が
無事、終わったことは
大きな安心材料になり
いい転換点になる。

夕べは目覚ましをかけずに寝たが、
(体が要求するだけ寝たいと思い)
自然といつも通りの時間に起床した。

頭を試摺りモードに切り替えるため、
少し時間をかけた朝食を作ることを思いつき、
タサン志麻さんのレシピで
クロックムッシュを作ることにした。

クロックムッシュはまずホワイトソースを
作らなければならないので
結構、めんどくさいけど
牛乳が丸々2本冷蔵庫にあるので
消費するにはもってこいのメニューだ。

バターを鍋にいれガスをつけ
半分溶けたら、適当に小麦粉をふり入れ
粉がバターをしっかり含んだのを見極め
少しずつ牛乳を入れ攪拌する。

いい加減な目分量だったけど
いい感じのホワイトソースが出来た。

6枚切の食パンにホワイトソースを塗り
ピザチーズをのせる。
その上にハムをのせ、
またホワイトソースを塗る。

その上にまた6枚切のパンを乗せ
再び、ホワイトソースと
ピザ用チーズをたっぷりトッピング。
脇にこぼれるくらいが丁度いい。

相当なボリュームで
この一品でカーブスご推奨の
1回の食事で摂るべき
タンパク質4点分が摂れている計算だ。

オーブンを250℃で温めておき
上段に入れて15分。
いい感じにチーズが溶け
焼き色のしっかりついたクロックムッシュの
出来あがり。

表面がカリカリのチーズとパンで
中はとろとろアツアツのホワイトソースと
糸引くチーズ。

かなりのカロリー爆弾な気もするが
カロリーの高いものは間違いなく美味しい。

それに濃厚ないつもの野菜ジュースと
果物にせとかを選び、
週末にふさわしいプチ贅沢な朝ご飯になった。

それを食べて
モードを版画家に切り替え、
本日のミッションである新作の試し摺りに
取りかかった。

試し摺りは本摺りとは違って
すでに決まっている色から摺る。

花びらや葉っぱ、
脇に使おうと思っている古代紫、
鷺の白い羽根など
色の濃淡や奥行きなどはお構いなしに
決まっている色から摺っていく。

ひと通り摺ることで
その線でいけそうだと思えることが大切。
脳内に本摺りのイメージが出来あがることが
最優先だ。

今回は背景の色がすんなりとは決まらず
ランチタイムをはさんで
しばし考えたけど
何とかなりそうなところまでこぎつけた。

本摺りの時に悪さをしそうな部分、
つまり紙の余白や鳥の白や花のピンクなど
汚れてはいけない部分をしっかり深く彫り、
版の彫り調整も行った。

クロックムッシュで摂り過ぎたカロリーは
頭を使ったので少しは消費しただろうか。

無い知恵を絞り、
大き目の作品の試し摺りを終えた。

きっと外はちょうどいい気温で
お出かけ日和だったのではないだろうか。

1日中、
アトリエに閉じこもっていたので
少し残念だが、
それでも心地よい疲れと達成感で
夕飯時の冷えた白ワインがのどに心地よい。












2026年4月14日火曜日

我が街銀座にきものでGO

 














それぞれ人には自分が住んでいる街とは別に
なじみ深い街があると思う。

例えば、長年通った学校があった街、
勤めていた会社があった街、
結婚して住んだ街など。

それが私にとっては
銀座という街だ。

高校時代から歌舞伎にはまり
玉三郎を追っかけてよく行ったのが
歌舞伎座のある東銀座だった。

大学と大学院時代には
毎週月曜日の夕方、
展覧会のオープニングパーティが行われた。

大学のあった上野のお山から
夕方銀座に向かい、
先生たちと共に個展巡りをした。
個展会場の多くが銀座にあったため、
版画家としてなじみ深いのも銀座だ。

初めての個展は
銀座5丁目にある養清堂画廊だった。
大学院2年の終わりの話だ。
今回9月の個展も新装オープンの養清堂だ。

版画専門の老舗画廊と言えば
養清堂画廊とシロタ画廊になるが、
2件ともこの50年間に場所を何回か変えつつ
銀座で画廊業を今日まで続けている。

オシャレな街銀座は
今でも大人の女性のためのファッションを
扱うブランド店がひしめている。

個人的にはブランド志向は全くないけど
やはり大学生くらいから今日まで
いざという洋服を買いたいなら
銀座に出掛けることが多い。

また、娘たちが私立の中高一貫校に入り、
ママ友とのおつきあいが始まった頃は、
私立だったのでママ友たちの住む場所が
関東近県に散らばっており、
ママ友ランチと言えば銀座になることが
多かった。

その頃は3月に1度くらいの割合で
銀座でランチをしていた。

そんなこんなで
何かあると銀座に行くというのが
この50年くらい続いている。

今日はそんな私にとっての銀座を
凝縮したような目的で
銀座の街を満喫した。

まずは歌舞伎座にほど近い東劇で
きものフレンドのAさんと
「曽根崎心中」を鑑賞。

2009年4月に歌舞伎座にかかった演目を
シネマ歌舞伎に仕立てた映画だ。

「曽根崎心中」は去年大ヒットの映画
「国宝」でも印象的な場面で出てきたので
役者は違えど興味津々。

東劇にはきもので来る人も多いので
私達もきもので行くことにした。

お初を坂田藤十郎、徳兵衛を中村雁治郎。
歌舞伎界の重鎮の演技を
大きなスクリーンで観て
吉沢亮のお初とはまた違った感動があった。

12時40分に終演して
そこからダッシュで銀座8丁目まで歩き、
次は
888ビルの地下にあるイタリアンレストランで
ランチ。

汗ばむような日差しの中、
銀座の街には外国人があふれかえり、
昔の銀座とはだいぶ様相が違う。

ネットで見つけた初めてのレストランだったけど
全て個室スタイルのお席で
とてもリーズナブルでコスパのいい
レストランだった。
お味もどれも美味しかった。

銀座でコースランチを食べて
シャンパンまでつけて
ひとり3,200円は安すぎる。

接客もとても感じがよかったので
次回も利用しようと思った。

四半世紀前、
ママ友と通っていた頃は
もっと贅沢なランチをしていた気もするけど
今はこのぐらいが身の丈に合っている。

最後は大学時代の恩師が
シロタ画廊で回顧展的な個展をしていたので
友人も一緒に覗いてみた。

御年88歳になられた先生は
すっかりお爺さんになっていて
かなりビックリした。

きもの姿の私を観て
「今日はお茶会か何か?」と話す様子は
50年前、
「今日はお茶なんです」と
大学からお茶のお稽古に行ったことを
思い出させた。

藝大の中のお茶室で
留学生も交え、私が席主で
「版研茶会」を催したことも懐かしい。

そんな昔からきものや版画、
ランチなどの舞台になってきたのが
銀座という街だ。

時は流れ、様子も違い、
一緒に歩く友人も変化しているけど
今日、銀座にいて、
やっぱり私にとって
銀座は特別な街だなとの思いを強くした。