11月に入ったので、
いよいよ新作の摺りに取りかかることにした。
版画の制作からは半年近く遠ざかっていたので、
彫りはもちろんだが、
摺りの感覚を取り戻すのは大変だ。
9月の個展を終えて、
新しいモチーフを探していたのだが、
「柿」の実と葉っぱで新シリーズを
始めることにした。
10月初めに新作2点を立ち上げた。
彫り師の作業は10月中に2点分彫り終え、
月末から月初にかけて
自分へのご褒美に北海道にいったので
ここからは気を引き締めて
摺り師の作業に入る。
この間、ご近所の柿の木は
すっかり実が色づき、
それに伴って葉っぱが落ちる木と
実が赤く熟しても葉っぱが落ちない木が
あることに気付いた。
たぶん、柿の種類の違いだと思うが、
そんなことにも気づかず
これまで過ごしてきたことを知った。
作品の柿の木は
まだ実に青いところの残っているうちに
取材したけど、写実絵画ではないので
自分の思う柿の木の色にしようと思う。
木版画は試し摺りといって
まずはこの色と思う絵具を摺りながら
イメージを固めていく。
あれこれ試行錯誤する作業なので
全行程中、
一番アーティスチックなパートと
言えるかもしれない。
昨日の午後から始め
とりあえず1枚はすべての版を摺り終えた。
しかし、絵具が乾いてみると
色が一段明るくなるせいで
あちこちの部分で気にいらない部分が出た。
絵具は乾いてなんぼの世界なので
ここから微調整しながら
もう1枚、試し摺りをとる。
1日目は久しぶりに集中して取り組んだせいか
ひとあたり摺った段階で
すっかり疲れてしまった。
今日は日曜日で
ひとり静かに摺ることができるので、
2回目の試摺りをとって
最終のイメージを掴もうと思う。
朝イチで画室に入った時の
昨日の試し摺りに対し
自分がどのように感じるのかが大切なので
少しドキドキしながら
ドアを開けた。
画室には昨日摺った試し摺りが
摺り台の上に乗っている。
「悪くない」というのが
今日の第一印象だった。
昨日、ひととおり摺り終えた時は
あっちもこちも気に入らなくて
とてもがっかりして
絵筆で直接、柿の実や背景の色を
描き加えてしまったのだが、
それが案外いい色になっていた。
自画自賛というわけではないが、
摺った色と描き加えた色が混ざって
出来た色になるよう絵具を調合して
2枚目の試し摺りに取り組むことにした。
各部分の色が決まれば
本摺りに向け色見本帳も同時に作り、
版にも直接、鉛筆で色名を書き込む。
絵具皿や絵具壺に絵具を調合し、
版にのせ、紙をおき、
バレンで摺る
色名を鉛筆でメモッたり
別の絵具を調合して紙の余白にのせ
絵具が乾くの待ち
よければ次の部分の絵具を調合し
また、バレンで摺るの繰り返しだ。
こうして出来あがった色見本帳は
いつになく「秋色」に染まっていた。
どちらかというと私の作品は
モノトーンかブルー系紫色系が多いが
今までとは少し違う色調のシリーズに
なりそうな感じだ。
2日かけて2枚の試し摺りがとれ、
本摺りに向けイメージが出来てきた。
これで何日か間を開けて
本摺り作業にむかえそうだ。
版画制作工程中、
このタイミングが案外一番ホッとする。
本日のおやつは
ココアとチョコレートと柿にして
身(実)も心も温めようと思う。
ミステリーツアーも3泊4日の内の3日目を迎えた。
同行の友人とはコロナ前は
毎年のように海外旅行に行っていたので、
気心がしれているというだけでなく
生活リズムや金銭感覚が似ている。
それは旅行にでるとよく分かることで、
1日中、寝食を共にしていると
仲がいいと思っていた友人でも
窮屈になったり、
相手に合わせるのが億劫になるなど
上手くいかないことも多い。
それは夫婦でも同じことが言えて、
よく旅行の最中に喧嘩したり
口をきかないなんていうご夫婦もいる。
その点、私と友人Kさんは
日を追うごとに考えていることや
行動パターンが似てくるので、
同じタイミングでお土産の買い物したり
お風呂に行くことにしたり
食事しようとするので
4日間、まったくもめることなく、
かといって
無理して相手に合わせたりもせず
旅を進めることが出来た。
3日目の朝、おもしろいことがあった。
私たちはそれぞれ自分で選んだ洋服を身に着け
毎朝の支度をしていたのだが、
ふと見ると
ふたりとも同じようなボウのついたセーターを
着ていたのだ。
デザインのテイストがそっくり過ぎて
思わず、キャーキャー騒いで
記念写真を撮った。
仲良しだからといって
あらかじめ
着るもののコーディネイトをしていたわけでは
ないので、余計びっくりした。
3日の旅程は相変わらず知らされていなかった。
まずは「天国へ続く道」という
北海道ならではの1本道が
登ったり下ったりする先に
道が空に向かっていくような場所に着いた。
北海道は他にも
「メルヘンの丘」とか
「流星の滝」「銀河の滝」など
ネーミングの面白さで付加価値をつけるのが
上手だ。
バスは荒れるオホーツク海を横にみながら
更に北上し網走へ向かった。
途中、「北浜駅」
(オホーツク海に一番近いレトロな木造駅舎)に
下車したのだが、日に1~2回しか来ない電車に
合わせて時間調整して
1両しかないその電車を見ることができた。
あまりに本数の少ない時刻表を見ながら
こういう土地に暮らす人々に思いを馳せた。
そして、次は
天都山展望台とオホーツク流氷館に下車し、
いよいよ北の果てに来たという体験をした。
クリオネやナメダンゴなど
流氷の下で暮らす可愛いお魚たちの水槽を見て
マイナス15度の流氷体験テラスで
タオルをブンブンまわして凍らせ記念撮影した。
もし行き先を選んでツアーに参加していたら
網走は選ばなかったと思うけど
思わぬ体験ができて面白かった。
そして、ここの流氷ソフトクリームが
また、濃厚で絶品!
塩キャラメル味でさらにオホーツク海の塩が
トッピングされている。
更に更に
お昼ご飯の「ホタテの釜めし」のホタテが
ごろんごろんのホタテで
その身の厚さにビックリした。
3日目のお宿は層雲峡で
「5つ星のオールインクルーシブの名旅館」
『層雲閣』だった。
ここも今流行のオールインクルーシブなので
植木等祭りになったのは言うまでもない。
1回でお盆の上に並びきらない量のお料理を
取ってきてしまい
大皿の上に焼き立てステーキの小皿が
乗っているという始末。
ビールも何種類もあり
グラスの形も違うので
あれも可愛い、これも飲みたいの
飲み放題だった。
4日目はこれまた「紋別空港」という
生れて初めて行く空港から
日に1便しか来ない
という飛行機で帰ることになった。
その直前に立ち寄った港には
流氷を砕きながら進むというガリンコ号が
停泊していた。
友人Aさんはここから流氷の海にでかけ
2回、挑戦したのに
2回とも、流氷には会えなかったという話を
聞いていたので
きっとここから重装備で出航しんだろうなと
想像した。
もちろん、11月初めでは流氷は流れついては
いないのだが
ここが流氷が流れつく最も南の地だという
説明を聞いて、遠くへ来たものだと思った。
旅の総括としては
「ミステリーツアー」を選んで楽しめる人とは
どんなこともどんな場所もドーンと受け止め
ポジティブに捉え
何でもエンジョイできる人。
植木等が大騒ぎしても
郷に入っては郷に従えで
お祭り騒ぎに巻き込まれることが上手な人。
踊る阿呆に見る阿呆
どうせ阿呆なりゃ
踊らにゃ損損!!
「なんくるないさ~」
全国つつ浦浦
この精神が大切だ!!
北海道ミステリーツアーの2日目。
阿寒湖畔で迎えた2日目の天気は快晴。
どうやらこのツアーはこれから北上して
道東と言われるエリアを巡ることになるらしい。
(道南・道央は雪が降っている)
ホテルを遅めの10時に出発し、
最初に向かうのは
「●●湖(展望テラスから透明度の高い
青く煌めく水面を臨む/約20分)とある。
パンフレットの湖の画像から
摩周湖ではないかとみんな予測したけど、
摩周湖と言えば「霧の摩周湖/布施明」
いつも霧が出ることで有名なのでは?
近くになって明かされた到着地は
確かに摩周湖だったのだが…。
しかし、テラスに上ってみると
そこには予想をはるかに覆す美しい湖が!!
「摩周ブルー」と呼ばれる
なかなか観られない深くて神秘的な青い湖が
そこには広がっていた。
いきなり訪れた美しい風景に
私と友人はテンション爆上がりした。
摩周湖は周囲が崖になっていて
遊覧船やボートなど人の入る余地がない。
その人の侵入を許さない感じが
ますますその気高さを生んでいる。
私たちは白と摩周ブルーの2色ソフトを手に
その絶景に見とれながら
2日目のピカピカのお天気に感謝した。
次の●●山は「硫黄山」で
間近にいくと硫黄の香りと立ち上る煙に
大地の鼓動を感じた。
昼食は
「佳宿で食す料理長自慢の標茶産ブランド牛めし」
佳宿の名前は「忍冬」と書いて「スイカズラ」
標茶は「しべ茶」と読む。
これが薄味の牛丼だったのだが、
牛肉本来の甘みだけで、味付けは酒と醤油少々
だとかで、とても柔らかくて美味だった。
バスは初日より北上しているのに
晩秋の気配はまだまだ残っている。
中標津付近の白樺の葉はすっかり落ちていたのに
白樺の黄葉、他の木の紅葉が
広い平原を秋色に染めていた。
2日目の最後の観光は
「●●●●●●湖の滝」
もうこの辺までくると大体の予想で
「オシンコシンの滝」であることが判る。
説明では「落差30mの迫力ある名瀑」とある。
そこまで迫力があるわけではないけど
姿かたちの綺麗な滝だった。
2泊目にお宿は知床ウトロ温泉の
「知床第一ホテル」
パンフレットには
世界遺産の玄関口に佇む「5つ星の宿」
当社基準最上級Sランク指定の上級客室とある。
ここまで謳われちゃ行くしかないと思って
このツアーに申し込んだお宿だ。
1日目の格の高い旅館とはまた違った魅力の
ホテルが
北の地、知床に建っていた。
私は夕食に行く前にワンピースに着替え
ビュッフェ・ダイニングに向かった。
それはフォトジェニックでありたいと同時に
ウエストがゴムでないと
思い切りお食事がいただけないからだ。
こうして盤石の体制で臨み
2夜目は海鮮丼を中心にいただくことにした。
そして2巡目、
ライブキッチンに並んで作ってもらった
揚げたての天ぷらがとても美味しかった。
これじゃあ、体重も元の木阿弥。
分かっちゃいるけどやめられない~♬
完全に植木等にのっとられたまま
飽食の一夜が終わった。
今まで何度となく旅行会社のツアーに
参加してきたが
この度、初めて『ミステリーツアー』なるものに
申し込んでみた。
『ミステリーツアー』は毎月送られてくる
小冊子とは別に
単体でりっぱな見開きのフライヤーが
送られてくる。
大量のホテルの写真やお料理の写真
観光地の写真が載っていて
やれ、当社Sランクのホテルに17時間滞在とか
やれ、焼きズワイ蟹だホタテ釜めしだと
思わず行きたい食べたいと思わせる
つり広告が並んでいる。
しかし、何で行くとか、
観光名所のここに行くとか、
ホテルや旅館の名前など、
固有名詞や場所の名前はすべて伏せられ
当日、集合場所に行ってでさえ明かされない。
それでも、
美しい風景や美味しそうな画像に吊られ
いつも一緒に行く旅友のKさんを誘ってみた。
申し込み後、大体のあたりをつけ
きっと寒い方面にちがいないと考えた。
例え雪が降っても大丈夫な服装の準備をし
前日に添乗員さんから挨拶の電話があったら
ちょっと探りを入れてみようと思っていた。
しかし、『ミステリーツアー』は
前日の電話もかけないルールらしく
私たちは本当に何も知らされないまま
集合時間の1時間前に羽田に集合した。
早めのお昼を食べるべく
ラウンジでトルコのバーガーを手に取り
にっこにこで写真には写っているが
実はその時もまだどこへ行くか知らない。
旅行会社の最終案内にある集合時間に
カウンターまでいってバッチをもらった時も
添乗員さんに「搭乗口は50Bですので、
ここから30分ちかく歩きますから急いで」と
言われたが、まだその時もどこへ行くのやら。
同時にバッチをもらった他のお客さんが
女性3人組でものすごい厚手のコートを
着ていたので
「これで沖縄なったら笑えますね」などと
冗談交じりに話した。
もし、
沖縄だったら向こうで「海人」と書かれた
Tシャツを買わなければ(笑)
荷物を預け、身一つでせっせと歩き
たどり着いた50Bの搭乗口には
「中標津行き」とあった。
やっぱり、北海道だ!
でも中標津ってどこ?
千歳空港じゃないの?
急いでスマホで検索すると
それは道東のさびれた1日2~3便しか
行き来しない小さな空港だった。
飛行機もずいぶん小型の飛行機だ。
さてさて、ここから私たちは
北海道のどこに旅するのか。
北海道、でっかいどう。
中標津空港に降り立ち、
迎えの青いバスに乗り込んだ24名は
いかにも北海道らしい原野に走り出した。
みるみる大きな空に夕陽が沈み
雲を真赤に染めていく。
空気が冷たくキーンとして美味しい。
こうして私たちのミステリーツアーは
わくわくドキドキの中、始まった。
1泊目は阿寒湖畔に立つ
「あかん遊久の里 鶴雅」
この温泉郷でもっとも格の高い名旅館だ。
実は4~5年前、
この地の別のホテルに泊まった時、
「ここが一番高級な旅館です」と
おしえてもらった旅館だった。
「鶴雅」は名前にたがわずいい旅館で
お料理も和洋中と充実して
とても1日では制覇できない種類と量だった。
私たちはまずはビールで祝杯をあげ
土地のお料理や海鮮に舌鼓を打った。
いずれも丁寧に作られた
美味しいお料理だった。
夜になってもさほど寒くはなく
露天風呂から見上げた
月明かりが煌々として美しかった。
こうして1日目が無事に終わったけど
相変わらず明日の朝からどこへ行くのか
まったく何も知らされていないのが
『ミステリーツアー』だ。