2016年7月12日火曜日

『ラスト・タンゴ』映画鑑賞

 
 
最近、一番ハマっているのがタンゴなので、
先週末から渋谷のBunkamuraル・シネマで上映されている『ラスト・タンゴ』を
観に行ってきた。
 
Bunkamuraル・シネマには時々行くことがあるが、
TOHOシネマなんかにかかる映画に比べ、マニアックで芸術性の高いものが多く、
私の中で、歌舞伎のシネマを観に行くなら東銀座の東劇、
演劇やバレエ、フラメンコなどは
Bunkamuraル・シネマという棲み分けがなされている。
 
今回のようにタンゴがテーマのものは初めて観にいったが、
観客もさすがタンゴ好きといえるのか、渋谷だからか、
ちょっと個性的な服装の初老の男性とか、
おしゃれしたマダムっぽいおば様とかがちらほら混じり、
大人の雰囲気だった。

会場には撮影に実際使ったという黒いドレスと靴が展示されていて、
そのあたりも普通の映画館というより、
演劇の会場に近い。
 
映画の内容はタンゴ界で最も有名なダンスペア、
マリア・ニエベスとフアン・カルロス・コペスの歩んだ愛と葛藤の歴史を、
2組の現役のダンスペアのダンスで綴ったドキュメンタリー。
 
映画には83歳のフアンと80歳のマリア本人が出てきて、
当時の映像を元に現在の心境を語りつつ、
若き日のふたりを、青年期と壮年期の2組のペアを使って
回想シーンとして復活させている。
 
映画自体も面白い構成だし、
50年以上ペアを組んで踊ってきたふたりの踊り手としての栄光と素晴らしさと、
人としての挫折や愛憎が生々しく描かれ、
「人生って一筋縄じゃいかないのね」とつくづく思わせる。
 
他のお客さんはどうか分からないが、
ここのところタンゴを踊ることの面白さが少し分かってきた私としては、
本物のタンゴを2時間近くたっぷり観られて、とても楽しかった。
 
どうも日本人だと男女が組んで踊ることに、すでにして抵抗があって、
なかなか相手をまじまじ見つめるとか、
ハグするように抱いたまま踊るとか、
男性の体を使ったリードを受け止めるとかに、すんなり入り込めないのだが、
ホンマモンはやっぱり違った。
 
全然いやらしい感じを出さずに美しく組んで踊ることができる。
 
日本人が目黒川沿いでキスしていたら気持ち悪いけど、
フランス人がセーヌ川沿いでキスしていたらステキ!と思うアレと同じだ。
 
しかし、話は映画に戻るが、
どんなに世界一の素晴らしいペアと言われ、踊りの名手であっても、
現実は憎しみ合う日々が続いたというし、
フアンは別の女性と結婚し子どももうけたが、
マリアはフアンに裏切られ、生涯独身である。
 
しかも、1997年、日本公演の直後、
ふたりはダンサーとしても、40年も続いたペアを解消してしまう。
当時の日本公演の時の映像も流れ、
熱狂的に迎える日本のファンの様子も映し出されていた。
 
タンゴダンスという濃密で情熱的でかっこいいパフォーマンスの裏で、
繰り広げられるドロドロの葛藤と憎しみ。
 
なかなか人と上手に距離を保つのは難しい。
まして、男女である。
 
舞台の上と現実の生活との違いなんだろうけど、
場所はいずれにせよ、
「人間って、お互いつかず離れずの距離がいいのかも」
(美輪明宏も言ってるけど)
そんなことを映画を観ながら考えていた。
 
 
 
 
 
 


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