4月20日から25日まで銀座養清堂画廊で行われた個展は、無事終了した。
来場者数約300名。
お買い上げ点数10数点。
いただいたお菓子約1年分。
私自身も画廊のスタッフも驚く数字をたたき出し、
これはまずますの成功裡に終わったと言っていいだろう。
毎日たくさんの方が来てくださり、本当に幸せな6日間だった。
なにしろここ20年以上、絵画の個展会場なんて
閑古鳥が鳴いているのが常態化していることを思えば、
嬉しい悲鳴といってもいいぐらいだ。
お客さまには3つのグループがある。
ひとつは版画家とか出版・評論とかの絵画関係者。
同業者は作り手の目線で観ているので、そうした感想を言っていく。
「えっ、この木目、自分で彫ってるの?」「これは貼ってるのか。よくやるなぁ」
「私、覗き窓のシリーズ好きです」
「僕なんかから観ると、オブジェが面白いと思うけどな」みたいな感じ。
手順や作業の大変さが身をもって分かる人達だから
我が身に置き換えて感嘆していくか、
絵画のアプローチとして共感できるところを表明してくれる。
2つめは私の友人知人で、お祝いとして個展を観に来てくれている方。
おみやげのお菓子や花を携えたり、手ぶらを恐縮しながら
銀座まではるばるやってきてくださり、会場や絵の感想を伝えてくれる。
「とっても色がきれいですね。版画とはとても思えませんでした」
「こんな銀座のど真ん中で個展なんて凄いですね」
「なるほど、それぞれ深い意味があるんですね」みたいに
場所そのものや木版画らしからぬ作品について素直な感想を伝えてくれる。
3つめは何度かすでに私の個展に来てくださっているか、
絵を購入したことがあるか、今回は買おうと思っている方。
会場をその気でぐるりと見渡し、
「何だかパワーをもらえる気がするから、これにしようかしら」
「グランドピアノの上に飾ろうと思うの。この絵があったらテンションあがりそう」
「ブルーが好きだから、こちらの『凛』にするわ」
「還暦記念だとしたら、赤いこの『華』がいいわよね」みたいに
ご自身の部屋のどこに飾るのか思い描きながら
かなりさっさと購入を決められる。
わかったことは
それぞれ個展に来てくださる目的は最初から決まっているんだなということ。
だから、その気もない方に営業してしまったのは申し訳なかったし、
来ていただけたことにもっと感謝しなければということ。
画廊からは今回の作品の内、10点ほど預からせてほしいと申し出があったし、
2月の六本木・新美術館で行われる現代美術展に出品して欲しいという
要請があったりして、
これからの展望も少し開けた。
そして何より
自身の作品として肝入りの作品『還』と『輪廻』を多くの方に認められたことは
一番の収穫だったと言えよう。
40年近く版画作品を創ってきて、
60にしてようやくそんな風に思える作品を生み出せ、
大きな安堵のため息がでる。
また、明日から制作する活力を得た思いで
頑張る気力が湧いてくる。
今、部屋には皆様からいただいた還暦祝いの赤い花達が
1週間経っても尚、元気で咲いている。
同い年の友人からいただいた深紅の薔薇の名前は「サムライ」とあった。
きっと私のイメージはそんな戦う女なんだろう。
しばし休憩し、充電したら、
再び彫刻刀を握りしめ、立ち上がろうと思う。
さあ、季満野よ
また再び、立ち上がれ、おのが力を信じて!