2016年11月25日金曜日

2枚接ぎ作品 完成

 
 
11月24日は前日からテレビで大騒ぎしたとおり、
関東地方は明け方から雨が雪に変わり、
(山下達郎の歌詞か?)
そのまま、ずんずん夕方まで降り続いた。
 
本当なら、24日の午前中は絵画教室で、カレンダーの文字を摺る予定だったが、
雪が降っていたのでは、車でいくことができない。
 
電車でいくには荷物が多すぎ、途中で転んだりしては危ないので、
あらかじめ生徒さん達に連絡して、25日に延期してもらっていた。
 
というわけで、フリーになった昨日は大作の上半分の本摺りをすべく、
朝から和紙を湿し、重しをかけて、均一に湿されるのを待って、
午後には本摺りを開始した。
 
下半分の絵には花の部分が全部入るので、版の図柄が込み入っており、
その分、版数も多く、摺るのに時間がかかった。
 
しかし、上半分は花はひとつも入らず、シンプルな絵柄なので、
同じ版の大きさがあっても、摺る時間は短くて済む。
 
上下繋がる部分にきている葉っぱの色や藁の色など、
気を遣うところはあるものの、
全体としては、版木に直接、鉛筆書きで指示を出してある注意を守って、
丁寧に摺り進めることが肝要だ。
 
そうやって、上半分の5枚も、日付が変わる頃、無事、摺り終わった。
 
上半分の5枚をベニヤに水張りして乾かし、
完全に乾いたところでテープを剥がし、
試しにギリギリのところでカットしてから、
下半分の上に絵柄が繋がるように乗せてみた。
 
バックの色が多少、濃さに差が出てしまったが、
メインモチーフである中央の藁や葉っぱはうまく色も形も繋がった。
 
接合部分の糊付けは専門家に託すしかないので、
今はただ上に乗せ、真上から写真に撮ることしかできない。
 
それでも、つなぎ合わせて、額縁に入れたところはたやすく想像でき、
今年1番の大きな作品が完成したことの感動がこみあげてくる。
 
版画はここから先、摺った作品に手を入れることは一切できないので、
こうして一瞬見た後は、半透明の紙に包んで、マップケースにしまってしまう。
 
来年半ば、展覧会が近づいた頃、真ん中を接ぎに出し、
額縁に入って戻ってくるまで、もう、見ることはない。
 
本摺りを終えると、私の場合は作品を前に感傷に浸ることはなく、
気持ちは「ハイ、次!」と切り替わってしまう。
 
来年6月初め、額縁屋さんから直接、展覧会場に搬入された『縁』を見る時には、
『縁』のモデルである長女夫婦にはベビーが誕生しているかもしれない。
 
次から次へとおめでた騒ぎが続くが、
母としてしみじみと感慨にふけって、
その気持ちを作品に落とし込むのが間に合わないほどだ。
 
ともあれ、11月中に2枚接ぎの作品『縁』の本摺りまで出来たこと。
 
これは想定以上の段取りの良さで、「自分にご褒美もの」に違いない。
 
来週火曜日、整体の予約はすでに入っているので、
U先生とおしゃべりしながら、ゆっくりしっかり体中の凝りをほぐしてもらうこと、
それがまずは最大の自分へのご褒美である。
 
楽しみ~♪
 
 

2016年11月23日水曜日

再び 本摺り開始

 
 
 
 
夏中かかって彫っていた2枚接ぎの新作の本摺りに夕べから取り組んでいる。
 
娘の結婚式の前後でストップしていた版画家業を一気に取り戻している恰好だ。
 
11月中に新作1点の試摺りと本摺り、
2枚接ぎの新作の試摺りまでを、自分に課していたのだが、
2枚接ぎの本摺りまでやり終えられれば、こんなに嬉しいことは無い。
 
年間7~8点の大小合わせた作品を生み出すことを自分へのノルマにしているが、
中でも2枚接ぎの大きな作品を創ることには莫大なエネルギーを必要とするので、
ここをどうクリアするかが毎年の悩みなのである。
 
2016年は作品テーマという意味では
長女が結婚するという大事件があったので、思う事柄には事欠かず、
『縁』という題名もすぐに浮かんだ。
 
しかし、結婚式の準備やらウェルカムコーナーの作成に加え、
案外、心理カウンセラー業も忙しくなってきて、
月10本ほどはそのために出掛けることがあって、
版画家業、とりわけ、摺り作業が後手に回っている感は否めない。
 
なので、先週、久々に新作の試摺り、本摺りを終え、勘を取り戻したばかりなのに、
引き続き、2枚接ぎの作品に取りかかるのは、体力的にもつかどうか
心配な面もあったが、気持ちの方が勝ってしまっている。
 
週末から試摺りを取りだし、例によってお天気とも相談しながら、
結局、22日の夜には2枚接ぎの内の下半分の本摺りに着手。
 
23日、『勤労感謝の日』の今日は、元気に版画が摺れることに感謝しつつ、
夕べから引き続いて摺り、5時間の睡眠時間を含むものの24時間がかりで、
5枚、摺り上げることが出来た。
 
いつもならここで、ビールでも飲んで「お疲れ~!」といいたいところだが、
部屋中に作品が水張りされているにも関わらず、
これで、まだ、作品の下半分が出来上がったにすぎない。
 
明日か、あさってか、その次か、
まだ決定していないが、
下半分と繋がるように、上半分も引き続き摺らなければならない。
 
そのために絵の具は上下すべてを摺りおおせるだけの分量を作ってある。
濃度も均一に保たないと、上下で色が微妙に変わってしまうので、
体力の回復を観ながら、即、上半分に取りかかる必要がある。
 
そんな私にとっての関ヶ原の戦いみたいな日だというのに、
この間の真夜中の電話に引き続いて、
昨日は10回ぐらい同じ人から迷惑メールが送られて来た。
 
「東山さんからメールアドレス聞いたんだけど、俺に話があるんだって?」
てな、調子で1本目が始まった。
名前は『潤』
ニックネームは『まっつん』とある。
 
「振り付けを考えてくれ」みたいな、わけのわからない内容が3本ぐらい続いたので、
「あなたに心当たりがありません。人違いじゃありませんか」と返してみた。
 
すると勢いづいて、
「アッ、ごめんなさい。人違いでした」
「でも、せっかくのご縁だから、お友達になってもらえませんか?」
「俺は潤とだけ、名乗らせてください。グループやピンでテレビとかにちょくちょく
でているんだけど、一般の人と知り合うことがないので、嬉しくて・・・」
などと10本ぐらい、しつこく送り続けてくる。
 
とまあ、これまたいたずら電話ならぬ、いたずらメールである。
どうやら松潤の成りすましという形か・・・。
 
もちろん、途中からは無視するのが一番だと思い、
放っておいたら、夜には送ってこなくなった。
 
こっちは『縁』というタイトルの大作と戦っているんだ。
「お前とのご縁なんかに関わり合っているいとまは1ミリもないわ!」と
心の中で毒づきながら、
最近、急に多くなってきた怪しい男の影に、
ネット社会の恐さを感じた。
 
明日は11月としては54年ぶりの雪が東京や横浜にも降るという。
 
湿度命の本摺り作業、
早く休んで、エネルギーを満タンにして、明日も頑張るぞ!
イエーイ!!
 

2016年11月20日日曜日

『ANOTHER STEP』 かわさきジャズ2016

 
川崎のミューザに『かわさきジャズ2016』のラストコンサートを聴きに行ってきた。
 
10日間におよぶジャズフェスティバルの最終日。
 
3部構成になっていて、
1部にバンドネオンの三浦一馬君率いる5人編成のバンド
(ヴァイオリンは大ファンの石田泰尚様)
2部は知らない外人のピアニスト
3部はジャズ界の大御所・山下洋輔という内容だったので、
面白そうということになり、友人と出かけることになった。
 
時間は17時から20時までの3時間だというので、
それぞれ45分の演奏に15分の休憩かなと思っていたら、
お目当ての1部の演奏が30分であっという間に終わってしまった。
 
久しぶりの一馬君と石田様だったのに、ちょっと物足りない。
友人も「これって、前座扱いよね」といっている。
その通り。
 
しかし、20分の休憩の後に出てきた背中を丸めた外人が引き出したピアノが
凄かった。
 
名前はファジル・サイ。男性。
トルコの人らしい。
 
独特の濃い風貌と熊さんのようなずんぐりした体。
1部とは入れ替えたこだわりのグランドピアノ。
 
強いタッチの早弾きと、
その大きな体からどうやって出しているのかと思うような優しい音色が入り交じり、
会場の空気が一挙に緊張する。
 
しわぶきひとつも許さない張り詰めた空気の中にありながら、
フォルテの強い音を弾いた後、
彼の白くふっくらした手が宙を舞う。
 
そのしなやかでふくよかな動きが何とも美しい。
 
彼はクラシックとジャズを融合させた曲を30分弾き続け、
1部とは全く違う世界へ観客を連れて行ってしまった。
 
3部はおじいちゃんになった山下洋輔と、ヴァイオリニストの大谷泰子。
ふたりで楽しく2曲セッションし、
後半、もうひとりのゲスト・大倉正之助が会場に大鼓をもって登場した。
 
大倉正之助は室町時代より代々続く能楽囃子大倉流宗家に生まれたとある。
 
上下サテンの黒いシャツとズボンという洋装だが、
椅子に腰掛けて、大鼓をを打つその姿は、背筋が真っ直ぐ伸びて微動だにせず、
まるで合気道の試合をしているかのようである。
 
そのすっくと伸びた体から、孤を描いて右手は真っ直ぐ前に付き出され、
お腹の底から発せられた「よーっ、いよーっ」の声の後に、
しなやかな瞬殺技で、鼓に向かって振り下ろされる。
 
その殺気迫る鼓の乾いた音と声とで、山下洋輔のピアノと
大谷泰子のヴァイオリンとジャズセッションする。
 
楽譜を見ているのはピアノとヴァイオリンのふたりだけなので、
鼓はふたりの弾く音楽にというか、ふたりの呼吸に合わせて、打ち鳴らされている。
 
その声と鼓の音の迫力と、座っている奏者の凛とした姿形。
 
もちろん、山下洋輔のピアノも素晴らしいし、
大谷泰子のヴァイオリンもサービス精神に富み、楽しいし、実力も本物だ。
 
会場中がこの異種格闘技みたいなセッションに圧倒されてしまって釘付けだ。
 
2部のトルコ人ピアニストの宙を舞う優雅な手と、
鼓に打ち下ろされたしなやかな大倉正之助の右手が、
目に焼き付いて離れない。
 
セッションの曲目の中に『ANOTHER STEP』というのがあった。
 
人は何歳になっても、挑戦することを恐れてはいけない。
そんな宿題を投げかけているような選曲だ。
 
大好きな面々が弾くピアソラが何だか予定調和過ぎて面白くなく感じられた。
 
何かを突き破る。
 
新しいことを面白がる。
 
それは自分にも求められている。
そう、勝手に思い込んで、密かにテンションが上がるのを感じた。
 

2016年11月15日火曜日

戻ってきた版画家生活

 
 
 
娘の結婚式騒ぎで約1ヶ月近く奔走している内に、
すっかり本業がおろそかになっていた。
 
気持ちは焦るが、一大イベントに伴って、ダンナは帰ってくるわ、
写真の整理はあるわで、ようやく先週の金曜日からいつもの生活が戻ってきた。
 
木版の摺りはお天気とも密接に関係があり、
和紙を湿して、その状態を保ちつつ作業するには、出来れば雨の日に
本摺りをした方がトラブルが少なくて済む。
 
天気予報によると昨日の夜から今日の明け方にかけ、関東地方は雨になるので、
スーパームーンが見られないとか・・・。
 
それは残念なお知らせに違いないけど、
木版画家としては、この機を逃すわけにはいかない。
 
そこで、先週金曜日に試し摺りをとり、土日で版の修正を加え、
月曜日の午前中に和紙を湿し、絵の具の調合をした。
 
そして、空模様を見ながら、昨日の夕方には本摺り開始。
 
予想より雨は早く降り出したので、それに合わせて、夜中摺るという作戦だ。
 
順調に8枚の本摺り用の和紙のパートごとに摺りを進め、
約7割ほど摺り終えたところで、夜11時になったので、一度寝ることに。
 
以前は一気呵成に体力任せで、8時間とか10時間とか摺り続けていたが、
今は小分けにして、休み休み時間をかけて摺ることにしている。
 
布団に入り、寝たいだけ寝ようと決め、お休みモードに・・・。
 
ところが、夜中の3時、いきなり手元のスマホの電話着信音が鳴った。
何ごとかと飛び起きる。
こういう時間の電話は、何か嫌な知らせかもしれないとドキドキする。
 
「非通知設定」だったから、一瞬ためらわれたが、
頭が寝起きでよく回っていないので、出てしまった。
 
「もしもし、今、ちょっとお話しできますか」と低くてささやくような男の声だ。
 
えっと一瞬たじろいて、黙っていると
「お休みでしたか。申し訳ありません。ホームページを拝見して、
相談にのって欲しくて、失礼な時間におかけしてしまいました・・・」
 
心理カウンセリングのホームページを見てかけてきたいたずら電話である。
 
個室で対面する性質上、女性限定にしているにも関わらず、
HPに顔写真も載せているし、女性カウンセラーだということを明かしているので、
時々、こうした電話がかかってくる。
 
それにしても、真夜中にかけてくるなんて・・・。
 
もちろん丁重にお断りし、なんだか興奮状態になってしまったので、
ここで起きて、作業を続けることにした。
 
真夜中のアトリエに戻り、ひとり黙々と摺っていると
さきほどのささやくような男の声が耳元によみがえってくる。
 
手は木版を摺る作業を進めているけど、
頭が男の声に翻弄されかかる。
 
真夜中だけど、大好きなJAZZのCDをかけ、摺りに集中しようと努めた。
 
真夜中にネット検索して、興味の湧いた女性心理カウンセラーに連絡してしまう。
そんな男の心理を計ると、背中がゾクゾクする。
一旦、電話では相談に応じていないからと切っても、また、かけ直し、
今度はHPの顔写真についてコメントしてくる。
 
もはや、間違いなくいたずら電話だと思って、叩ききり、電源をOFFにした。
 
きっと眠れないと思って、起きてアトリエに来たが、声が執拗に追いかけてくる。
 
それでも、ひとり、作業がおろそかにならないよう注意しながら、
摺り続けること4時間、夜が明け、雨も上がった頃、
すべての作業が終わり、8枚の本摺り作品が無事に仕上がった。
 
二足のわらじを履いて、生活していると、時にはこんなこともある。
 
しかし、心理カウンセラーという職業は見も知らぬ人の悩みに寄りそう職業なので、
見知らぬ男性の心の闇に突然触れることで、
人の心理や生理に想いを馳せることができる。
 
それが、人の理解や問題提起に繋がって、
ひょいと作品として具現化することもある。
 
人の心というやっかいなものに寄りそう心理カウンセラーと、
その喜怒哀楽を作品に落とし込もうという木版画家と。
 
何が私に作品の啓示をもたらすかわからないと前向きに捉え、
滞りなく8枚の作品が完成したことを、まずは素直に喜ぼうと思う。
 
 
 

2016年11月11日金曜日

結婚式のアルバム作成

 
 
 
海外旅行など、ビッグイベントの後には、必ず大量の写真を整理して
アルバムにまとめるのがひとつの楽しみである。
 
娘の結婚式も一生のうち初めて訪れたビッグイベントなので、
当然、アルバムを作り終えない限り、ひとごこちつかないわけで・・・。
 
といっても、花嫁の母がデジカメ片手にうろちょろ出来た場面は限られており、
次女のところへ送られて来た家族ぐるみでおつきあいのある幼なじみからの写真を
母へも転送してもらい、
パソコンにかじりついての編集作業。
 
カメラマンからのスナップ写真や集合写真は2ヶ月先だというので、
年内にお目にかかるお友達やお稽古事の友人などに報告するには、
手元の写真でなんとかアルバムを作るしかない。
 
結婚式と披露宴の写真というのは、撮ってみるとわかるが、
他の参列者の手や頭が写ってしまったり、
ベストポジションはカメラマンに取られていたり、
瞬時に動いていて、ピントが合わなかったり、
ふたりがこちらを見ているとは限らなかったり・・・。
 
と、苦労が多い。
 
そんな「あ~、残念!」をパソコン上でトリミングしたり、アップにしたりの作業をして、
最寄り駅のヨドバシへ。
 
Lサイズで大量にプリントしてから、時系列に並べて、1冊のアルバムに。
 
更に中でもよく撮れているものをセレクトして、
次の日にまた、ヨドバシに行き、2Lにプリントし、
ダイジェスト版として1冊にまとめた。
 
結婚式の疲れがどっと出ている中、
お茶のお稽古や絵画教室、心理カウンセリング、スポーツジムなど、
仕事も趣味も次々こなさなければならず、かなりのバタバタだったが、
4日がかりで何とかここまできた。
 
それもこれもダンナが結婚式の次の日にはバンコクに帰り、
静かなひとり暮らしに戻ったお陰。
 
今は独り身の簡単ご飯でお腹を満たし、アルバムをためつすがめつ眺めては
しみじみと思い出して、ニンマリしている。
 
一仕事やり終えた充実感と共に、
次なるミッションは結婚式騒ぎはいい加減にして、
版画家としての作業に取りかかること。
 
今月は新作の試し摺りと本摺りを終えること。
そして、できれば2枚接ぎの大作の試し摺りも・・・。
 
花嫁の母に求められているのは、頭の切り替えである。
 

2016年11月6日日曜日

長女の結婚式

 
 
 
 
 
うららかな晴天に恵まれた今日、11月6日、表参道アニヴェルセルで
長女の結婚式と披露宴が執り行われた。
 
半年前に婚約が整い、式場が決まってから、入籍と新居への引越を含め、
いろいろな段取りを経て、ようやく今日という日を迎えた。
 
昨日のお昼は大阪のお婿さん家族が前乗りで東京にいらしたので、
お昼に2家族顔合わせを兼ねた懐石料理の昼食会があり、
その足で長女は実家に戻っていたので、夕べは家族4人の最後の晩餐となった。
 
その時は長女から、とくだん殊勝な挨拶があったわけではないが、
シャンパンのグラスを傾けながら、
久々に自宅で静かな夕食のテーブルを囲んだ。
 
今朝は朝早くにハイヤーを手配してあったのだが、
家族4人、
車内では寡黙な時間が流れて、それぞれの想いが胸に去来しているようだ。
 
表参道の会場につくと、何人ものスタッフが挨拶にやってきて、
さっそく手はず通りに花嫁はメーク室に消え、
次女や私のヘアセットや着物の着付けも始まると、
いよいよ本番が雪崩を打ったように始まった。
 
結婚式において、花嫁の母は決してちょろちょろカメラを持って走り回ったり、
花嫁花婿に近づいて至近距離で写真を撮ったり出来ないので、
まだ、手元にいい写真がないのが、残念だが、
それでも、何枚かの写真をアップして、ご報告させていただくことにしよう。
 
お式は式場の隣のチャペルで行われ、ちゃんとどこだか外国籍の神父様が
結婚式を挙げてくださった。
 
花嫁の父は花嫁の手を取り、花婿に引き渡すという役目があるのは分かっていたが、
花嫁の母も花嫁が式場に入ったところで、花嫁のベールをかぶせるお役があった。
 
ウエディングドレスに着換えた長女が入ってきて、
控え室でそんな段取りの説明を聞いていたら、
急に長女が早くも涙ぐんでいるので、
「もしかして、この人、全編、泣いちゃうのかしら」と心配した。
 
しかし、本番では、私が入り口でベールをかぶせ、お祝いの言葉をかけ、
軽くハグして娘を送りだすと、
その後はニコニコと終始嬉しそうな笑顔を見せ、
その顔は歓びに輝いていた。
 
なんちゃって教会のお式だからと軽く考えていたけれど、
なんのなんの聖歌隊の賛美歌と神父様の心温まる言葉、
式場の清らかな空気と、
立ち会ってくださっているお友達や会社の同僚の方達の優しい拍手に包まれ、
ふたりは厳粛な気持ちで、新しい夫婦としての第一歩を踏み出した。
 
披露宴に移ってからは、それぞれの主賓にご挨拶をいただき、
乾杯のご挨拶をいただいて、ケーキカットに引き続いて、
和やかにフルコースの食事がはじまった。
今流行の「ファーストバイト」は自分達らしくないからとしない分、
面白いサプライズ演出があった。
 
それは、ひとつはお色直しの色ドレスで登場したときに、
お婿さんが大きなビールサーバーをリュックのようにしょって、
各テーブルにビールをついで回りながら、挨拶をするというもの。
 
まあ、キャンドルサービスの代わりだが、
ユーモアがあって、いいアイデアだ。
 
そして、もうひとつ、小さい頃の写真で振り返るムービーが流れている間に、
今度はシェフの恰好に着換えたお婿さんとエプロンをつけた花嫁が登場し、
隣の部屋に設けたスイーツバイキングのサーブをするという企画。
 
すでにフルコースを食べ終えたお腹に、
数多くのスイーツは入りそうになかったけれど、
皆さんすっかり打ち解け、お酒も回って、
楽しそうにシェフやエプロン姿の花嫁とスイーツのお皿を手に、
スナップ写真を撮っている。
 
会場をふたつ大きく使っての演出はさすがアニヴェルセル、
人気の秘密はこのあたりかと感心した。
 
その上、お料理もスイーツもとても美味しかった。
 
そして、披露宴の最後はお定まりの両親への感謝の手紙を花嫁が読み上げ、
ふたりの母親にはローズピンクの花束が贈られた。
 
長女にとっての私は「生まれた時から画家で、パワフルで前向き、理想の女性」とのこと、
影響力の強い母であり、常に味方でいてくれる人という評価だった。
 
ここでも、私は花束を受け取って、娘を抱き寄せたので、
さすがに感極まって、娘と私は勿論のこと、会場にいた多くの方のほおを涙が伝った。
 
こうして、温かくて、ユーモアがあって、優しい結婚式が無事、終わった。
 
終わってみれば、3歳年下の婿殿はすっかり姉さん女房の尻に敷かれて、
「万事、これでうまくいくよ」というお墨付きをいただいたようだ。
 
若いふたりが何度も何度も通って、
ひとつひとつ決めた式と披露宴がこうして無事に終わり、
ひと組の夫婦が晴れて正式に誕生した。
 
娘が結婚して、別の姓を名乗る。
ほとんどまだ、何も知らない青年が義理の息子になる。
更にもっと知らない人達が親族になる。
 
そんな不思議なご縁をしみじみと味わいながら、
娘が幸せを掴んだことが、親の自分をこんなに幸せにしてくれるんだと
心のそこから歓びが湧き上がってくるのを感じた。