どうしてもこのバレエ公演を観たいと思って、
上野の東京文化会館大ホールで行われた『クレオパトラ』を観に行ってきた。
バレエ公演は友人のお嬢さんがバレリーナなので、
お嬢さんの発表会を、おつきあいで観る程度。
熊川哲也が現役で踊っている時に観に行きたかったが、
それを言い出した時には、すでにピークを過ぎ、
「今は前ほどジャンプできなくなっているのよ」と言われ、
何だか機を逸してしまった。
今回の『クレオパトラ』は熊川哲也率いるKバレエカンパニーの公演で、
ゲストプリンシパルの中村祥子さんがとにかくいいらしいというので、
ぜひ、観に行こうと思い立ったわけである。
確かに矢を射るような鋭いまなざし、
174㎝の高身長、細い体に長い手足。
本物は写真より一層細く、手足が長い。
クレオパトラは美しいだけじゃなく、強い女性だし、独特の振り付けなので、
まるで女郎蜘蛛のようだ。
クレオパトラを取り巻く5人の男達というのが副題だが、
5人の男の他にも、神殿の男娼達という肉体美を固持するように踊る
ふんどし一丁の男達5人も登場。
更に「選ばれた神殿男娼」というパートでは、
お酒だか媚薬だかを煽った男娼とクレオパトラがからむエロティックな踊りが
観客の度肝を抜く。
クラシックバレエでここまでありなのかと、
オペラグラスでふたりの姿態を追いかけていた自分が気恥ずかしくなるほどだ。
『クレオパトラ』は
『白鳥の湖』や『くるみ割り人形』、『ロメオとジュリエット』などとはまったく違う。
かなり扇情的な踊りが含まれる。
当たり前だが、バレエという表現方法は言葉をひと言も発しない。
歌や音楽は、人の心に響くし、
演劇もミュージカルも言葉の力無しには成立しない。
しかし、バレエは2時間の物語を、ひと言の言葉も無しに
身体表現だけで紡いでいく。
観客はあらすじを知った上で、
物語のすじとバレエテクニックの両方を観て、追いかけている。
でも、拍手は高度なバレエテクニックにより多くおくられている気がした。
客席には明らかにバレエレッスンをしている、もしくはかつてしていたと思われる
ダンサー特有の空気感を身にまとった人達が大勢詰めかけていた。
きっとそうした人達は中村祥子さんの一挙手一投足にため息をつき、
羨望のまなざしをおくっていたに違いない。
上野の東京文化会館、
大昔、6年間も通っていた学舎のある場所で、毎日、脇を通っていたのに、
残念ながら、大ホールに入ってオーケストラを聴いたり、
バレエを観たりしたことは、ほとんどない。
少し早めに着いて、本当に久しぶりに2階の上野精養軒で、
2種のソースのオムライスと、パンダ模様のカフェラテをいただいてから、
近くて遠いバレエ芸術を堪能した。
この歳になって、まだまだ知らない世界がたくさんあるんだなと実感。
歌舞伎並みにチケット代がかかるので、
なかなか行けそうにもないが、
また、ピピッと来たら足を運ぼうと思う。
中村祥子さん、要チェック!
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