久しぶりに歌舞伎座へ。
半年ぶりぐらい。
今月は「團菊祭 五月大歌舞伎」
父方・母方、ふたりのおじいちゃんが、人間国宝という
類い希なる由緒正しきお血筋に生まれた
尾上丑之助丈の歌舞伎座本公演の初舞台。
團菊祭といえば、團十郞一座と菊五郎一座という
歌舞伎界の二代名跡のご一行様勢揃いの舞台なのだが、
今年は「丑之助丈、初舞台」とあって、
それはそれは豪華な顔ぶれがお祝いの意味合いで舞台に立っている。
いつもの歌舞伎の師匠に
いつもの前から2番目ど真ん中の席を取っていただき、
心躍らせて歌舞伎座ののれんをくぐった。
夜の演目は
「鶴亀千歳」
時蔵と松緑の踊り。
脇を時蔵さんの長男・梅枝、次男・萬太郎、
松緑さんの長男・左近、そして、歌昇が務め、
歌舞伎界は親子二代研鑽を積んでおりますよのアピール。
時蔵さんはいつもどおり艶やかで色っぽく、
松緑さんはいつもどおり、
終始、鳩が豆鉄砲を食ったようなきょろきょろお目々で、
なんだかな?という感じ。
「絵本牛若丸」
尾上菊之助を父に持ち、
尾上菊五郎を父方の祖父、中村吉右衛門を母方の祖父にもつという
尾上丑之助丈が、
牛若丸に扮する歌舞伎座の初舞台。
弱冠6歳。
丑之助としては七代目。
そんな小さな牛若丸が豪華な役者陣を引き連れ、
殺陣に挑戦し、見得を切る。
シュッとした姿で気負うことなく、平常心。
可愛いというより、素直でてらいない様子に
会場からは温かい拍手が贈られた。
孫の様子をみる祖父達は役がついているのに、じぃじの顔で微笑ましい。
弁慶役の菊之助さんは、内心はらはらドキドキに違いない。
「京鹿の子娘道成寺」
夜の部の目玉はこれ。
何年か前、玉三郞さんと菊之助さんの「二人京鹿の子娘道成寺」を観たが、
今回は独り立ちした菊之助がひとりで踊る。
前から2番目ど真ん中の席ゆえ、
本当に息づかいさえ感じられるような至近距離から観ることが出来たが、
立派に独り立ちしたと感じた。
玉三郞さんの道成寺は
どこか神々しく、この世のものとも思えない神秘的な感じがしたものだが、
菊之助さんの道成寺はもっと生々しい女の情念のようなものを感じ、
恋い焦がれて叶わぬ恋に、遂には蛇に姿を変えていく様が、
息苦しいまでの切なさで表現されていた。
師匠によれば、
まだまだ自分の型を作るような年齢でも段階でもないということだが、
確実に玉三郞さんとは違う娘道成寺に向かって、
歩みを進めているのだと思う。
本当に目の前で観られて幸せだった。
最後は
「曾我もよう侠御所染」
尾上松也扮する御所五郎蔵と、彦三郎扮する星影土右衛門が
傾城皐月を巡って取り合いになり、
訳あって仲裁に入った傾城逢州が誤って殺されてしまうというお話。
松也が随分、大きな役がつくようになったということと、
彦三郎さんの声の張りがあって口跡がいいことに感心した。
ふたりの傾城の衣装も見物で、
美術館級の打ち掛けを目の前で堪能し、
ため息がでた。
ふたりの傾城の皐月役の梅枝さんは、実力をつけてきているけど、
何せ、細長いお顔がちょっと細長すぎて・・・。
もうひとりの逢州役の尾上右近さんの方がちょっとの差なのに
断然、美しい。
女役はまず見目麗しいことが先に来てしまうので、
そこに男っぽさとか、貧相さとか感じてしまうと
残念な印象が否めないのは辛いところだ。
しかし、全体からいえば、
歌舞伎界の若手は着実に育ってきていて、
欠けた50代60代を補うように
次世代やそのまた下の世代が研鑽を積んでいることがわかって、
ばぁば世代の端っことしては安心した。
これからは若い世代にご贔屓を見つけて、
また、歌舞伎座に通う楽しみにしようと思った
「團菊祭」であった。
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