今日10月31日。
明日からは2023年も11月に突入する。
今年もあと2カ月しかない。
そう思うと、なんだか焦るが、
本当にこの1年は早く過ぎてしまった。
夏が異様に長くて暑かったので
10月に入っても、まだ真夏のような日があった。
金木犀も開花が半月遅れになり、
ようやく秋めいてきたのが
10月の半ば過ぎだった。
私は毎月のカレンダーに
その月の版画制作の目標を書き込み、
出来るだけやりおおせようと心掛けている。
10月は大きな新作の
「原画作成」「トレぺ原画作成」
「トレぺ版木転写」そして「彫り」とある。
しかし、「彫り」は完成することなく
31日の今日も彫ったが
まだまだ残っている。
5面あるうちの4面の半分しかできていない。
もちろん
飾り彫りと呼んでいるパートは
全くの手つかずだ。
とにかく9月が暑すぎて、
中型サイズの作品の試摺りと本摺りを
2点分、終えたかったけれど、
1点分しかできなかったことに
ひとつは起因している。
結果、2点目の作品の試摺りと本摺りが
10月の始めにずれ込んだのだ。
また、10月は心理カウンセリングの予約が
カウンセラー始まって以来の多さで
20件を超えてしまったので、
悩める子羊たちの対応に追われたことも
もうひとつの原因だ。
かてて加えて20日から3日間旅行に出かけたので
その間、版画に携わることができなかった。
それを11月に取り戻し、
更に大きなその作品の試摺りと本摺りも
やり終えるのが目標なので、
今はかなりプレッシャーがかかっている。
今朝は彫り台の前に座り、
BGMに誰のCDをかけようか迷ったが、
今、最も気になるピアニスト
亀井聖矢君のピアノが聴きたくなり、
最近、入手した「VIRTUOZO 20」という
CDをかけることにした。
CDのタイトル「VIRTUOZO」とは
「演奏において卓越した技巧や能力を持った巨匠」
という意味だそうだ。
収められている曲目は
「リスト:ラ・カンパネルラ」
「リスト:マゼッパ」
「リスト:ノルマの回想」
「ラヴェル:夜のガスパール」
1.オンディーヌ
2.絞首台
3.スカルボ
いずれも超絶技巧を謳い文句にした難曲ばかり。
耳なじみのいいメロディアスな曲など
ひとつもない。
それを若干20歳のイケメンの若者が
全身全霊・渾身の力を振り絞って弾いている。
といっても、叩きつけるようなピアノではなく
特にラ・カンパネルラは
耳をそばだてて聴くような美しい”ピアノ”で
(フォルテ、ピアノのピアノ)
涙が出てくるほど感情豊かな音色である。
まだ、この世に生をうけて20年しか
経っていない若者のどこにどうやって
こうした感性とテクニックを宿すことが
できるのか。
私は70年近くも生き長らえながら
一体何をやっているのだろうか。
かなり悲しくなりつつも、
聖矢君のピアノに勇気を得て、
頑張ろうという気持ちになっている。
亀井聖矢君の演奏は、2024年3月に
みなとみらいホールのチケットが
とれているので
生音をその時聴けることを楽しみに
今はCD越しの「イチ推し」だ。
CDの冊子の中で、聖矢君曰く
「僕は、どんなに複雑でどんなに音数が多くても
すべての音に意味があると思っています。
演奏効果という面も去ることながら、超絶的な技巧
によって全身全霊で魂を削る状況を作り出し
それによってあらゆる感情を心の奥底から
呼び起こす。
そうすることで簡素な音の並びでは表現
しきれなかった可能性を突き破り、
心の内側から激しく突かれるような衝動、不安、
絶望、切望、開放、歓喜…、
溢れてくるそのすべてをさらけ出すことを
可能にしたのではないか、と思うのです」
とある。
20歳の若者の言葉とも思えないが、
私も彼の爪の垢でも煎じて飲んで、
せめて全身全霊で魂を削ることはできないが
版木を削ろうと思う。