久しぶりに
みなとみらいの大ホールで行われた
コンサートに行ってきた。
昨今、コンサートに出かけると言えば
石田様に偏っていた私だが、
今回のお目当ては、期待の新星
亀井聖矢君のピアノだ。
コンサートのタイトルは
東京交響楽団 特別演奏会と銘うたれ
東京シンフォニーオーケストラのゲストとして
聖矢君がソリストとして呼ばれたという形だ。
指揮はテレビでもよく見る
原田慶太楼氏。
朝からかなり激しく雨が降っており
気温も10℃に届かないほど寒い、
桜の開花が待たれる3月26日。
桜木町駅から地上に降り立つと
みなとみらいの景色は霧の中。
まずは友人と待ち合わせ
牛タンで腹ごしらえをして、
ホールに向かった。
本日も強運の私めが引き当てたのは
前から3番目の9番10番という席で、
中央のピアノに座った聖矢君を
斜め後ろから彼の横顔を見つつ
ピアノを弾く手元がよく見えるという好位置。
指揮の慶太楼氏は
ピアノのすぐ向こう側の台に立っているので、
振り向いて聖矢君に合図を出す度に
正面顔が目の前にあるという
絶好のポジションだ。
曲目は
チャイコフスキー
「エフゲニー・オネーギン」よりポロネーズ
ショパン
ピアノ協奏曲 第1番 ホ短調op.11
プロコフィエフ
ピアノ協奏曲 第3番 ハ長調op.26
最初のポロネーズにピアノはない。
まずは東京交響楽団の演奏だったので、
指揮者の慶太楼氏がどんな指揮なのか
じっくり見ることができた。
初めて観る生慶太楼。
足が長くすらっとした体つきで
顔はテレビで見ていた通りだ。
地紋の入った凝った黒のジャケットに
無地の黒いパンツ、
エナメルの黒い靴。
そして、ちらっと見える真っ赤な靴下。
真っ赤にもほどがあると言いたくなるような
真っ赤な靴下が
ズボンの裾からチラ見えしている。
動きの大きい指揮ぶりで
すごい熱量でタクトを振ったかと思えば、
いきなり止まって
「自由に謳ってごらん」みたいなポーズ。
まあ、プロフィール写真のポーズを
見ても分かる通り
自分が大好きなことは間違いない。
でも、その自信のみなぎる背中は
脂ののっている男の色気を醸し出し
悪くない。
ハッキリ言って私好みかも。
年表をみるとまだ39歳らしいが、
経歴や受賞歴がもたらす雰囲気は
40代半ばぐらいか。
とても饒舌で魅力的な指揮だった。
2曲目からいよいよ聖矢君登場。
楽団員の座っている椅子を少しよけ、
舞台中央、
舞台ギリギリにセットされたピアノは
私の席からは4mぐらい先、すぐ目の前にある。
左の袖から出てきた聖矢君は
シュッとした体つきで
23歳の若者らしく少しはにかみながら
ピアノの椅子に座った。
最初はショパンのコンチェルト。
2022年,ロンティボー国際音楽コンクール1位
併せて「聴衆賞」「評論家賞」を獲った
実力を遂に目の前で聴くことができた。
といっても、さほどちゃんとした
クラシックファンではないミーハーな私。
第2楽章の途中で猛然と眠くなり、
危うく舟を漕ぎそうになる。
まあ、右を見ても左を見ても
みんな同じような感じなので
いいクラシック音楽は眠くなるのが常とか。
でも、後半の
プロコフィエフのコンチェルトの方は
とてもドラマティックで物語性の強い曲で
弾いている聖矢君も
時折、ピアノに突っ伏したり
天を仰いだりするので、
私も一緒になって
音楽にのめり込むことができた。
とにかく、超絶技巧の難曲で
連打している右手の上を飛び越えて
更に、左手が連打されるので、
その音符の機銃攻撃に打ちのめされてしまった。
私の席からは聖矢君の手の動きが
手に取るように分かったので、
聖矢君に宿ったプロコフィエフの魂が
鍵盤から匂い立つのを感じた。
聖矢君はもの凄いエネルギーを放出し、
大曲を2曲弾き終え、
一度は舞台袖に引き上げたが、
何度も挨拶に出てきてくれた。
その時だけ許されていたスマホのシャッターを
切りつつ、
会場のお客さんは総立ちになって拍手した。
そして、アンコールに応え、
ピアノの前に座り、
静かに曲の出だしを弾き始めた。
それは、なんと
「ラ・カンパネラ」
会場中のお客さんのざわめき。
同じく私も「えっ」と身を乗り出した。
私が生聖矢君を聴きたいと思った
一番の曲が「ラ・カンパネラ」
手持ちのCDの最初の曲だ。
その曲を楽団員と指揮者が見守る中、
ひとり、彼は演奏した。
若干23歳の若者が弾くカンパネラの解釈。
そのピアノの音色の豊かな粒立ち。
思いがけずアンコールに聴けた
カンパネラで
おばさんの気持ちは一気に持っていかれた。
いつもの石田様ももちろんいいけど、
新しい推しを見つけた気分。
慶太楼氏の指揮もとても魅力的だったし…。
雨の寒い日だったけど、
「いいもの みっけ!」
眼福 眼福
とても幸せな1日だった。
0 件のコメント:
コメントを投稿