先週の土曜日から3日間、アトリエに籠って
新作の試し摺りをとっていた。
10月に本摺りをした90×90㎝と同じサイズの
大きな作品だ。
10月の『光と影』とは対の作品なので、
出来あがりも双極作品としてのバランスも
考慮しつつ、
独立した作品として色彩を考えていく。
ブログでは毎回、本摺りの時に
折々にスナップショットを撮って
どんな風に仕上げていくのか
摺りのプロセスが分かるように書いてきた。
本摺りでは
版画の色の明るい部分、
もしくは奥にある背景から手前のものの順に
摺っていく。
つまり、明るい色の雨のパートが最初に来て、
次に淡いピンクの花びら1版目、
淡いグレーの水面1版目などが
早いうちに摺るパートになる。
そして、徐々に暗い色になって
葉っぱのグリーンの濃淡などが中盤にきて、
とはいえ、バックのこげ茶色や濃紺、
空の色なども後ろにあるものなので、
中盤のところで摺ってしまう。
そして、2版目に重ねる色を終盤に摺り、
最後に黒い線で表現している葉っぱを摺る。
和紙は湿らせた状態を保持して摺るので
色が変わる度に和紙をずりおろして
版の上に正確にのせる。
摺る時は紙の裏からあて紙をして
バレンで摺る。
その際、湿った紙に濡れた絵具がこすれ
「泣く」といって滲んだりこすれたりすることが
あるので、
黒い絵具が泣き出したりすると大変なので、
最後にするという訳だ。
しかし、試し摺りの順番はそれとは違う。
そもそも和紙は濡らさず乾いた状態で作業する。
1枚だけ摺って、都度都度色味がちょうどいいか
確認しつつ、
大事なパートから摺っていく。
つまり、淡い色の雨は本摺り同様先に摺るが、
黒い蓮の葉っぱは重要なパートなので
案外、早い時期に摺ってしまう。
黒い蓮の葉に対してどんな分量の何色の空にするか
水の色、背景の色など、
メインモチーフの状況に対して決めていく。
その時、多少の「泣き」やら「こすれ」や
「ズレ」は気にせず、
本摺りではそれは起こらないと自分を信じ、
色合わせだけに集中するのが試し摺りだ。
そんな時、いつも思うのは
「この段階、すごくいい」
「ここで辞めた方が美しいのでは」
というタイミングが必ずあることだ。
全部彫った版木を摺って完成のはずが
途中の段階で「いいな」と思うとは
どういうことを意味するのか。
以前から、その疑問はあって
数年前に版数を減らし、
和紙の白を活かした作品作りをしているのに
相変わらず、全くの途中でいいなと思う
自分がいる。
では、そこで辞めてしまえばいいのにと
思うかもしれないが、
それでは何を描いたのかが分からないので
結局は彫った版木すべてを摺るのだが…。
紙の白は強いし美しい。
色数が多すぎるとケンカする。
版画らしさを失わないことが大切。
といった学びを肝に銘じ、
試し摺りを進めていく。
という訳で3日間も家から出ずに
試し摺りにいそしんだ結果、
脳みそがとても疲れてしまった。
その上、鼻かぜをひいてしまったようで
うつむいて摺っていると
鼻水まで垂れるようになってしまった。
こういう時は早く寝るのが一番だ。
分かってはいるが
作業がまだ終わらないし
まだ本摺りに向けてピンときていない。
版画家が最もナーバスになっている時だ。
そんな時、なぜか
モーレツに餃子が食べたくなった。
我が家で餃子といったら
冷食でもなく外食でもない。
めんどくさいの極みではあるが
自分で作った餃子が食べたいのである。
そんなわけで
一番疲労がピークの時に
こんなこともあろうかと買っておいた
厚口大判の餃子の皮で
26㎝のフライパンめいっぱいに餃子を作った。
何回もフライパンの位置を変え
火の入りを均一にし、
最後にぴったりの大きさのお皿をかぶせ
ひっくり返す。
試し摺りのモヤモヤを振り払うように
きれいな焼き色の餃子が出来た。
珍しくビール抜きでそれを食べ
英気を養い
早めに就寝し、最後の1日の朝を迎えた。
鼻かぜも私の勢いにビビったのか
1日でほぼ終息。
3日目は鴨の彫りを修正したりして
何とか本摺りへのイメージが出来た。
これで、仕切り直して絵具を調合し、
週の後半は本摺りの予定である。
日曜日から始まった大相撲。
推しの大の里も3連勝の横綱相撲だ。
全く関係ないのだが
彼も頑張っているんだからと
自分を鼓舞する健気なおばちゃんである。
どすこい!!







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