6月11日から始まる紫陽花展というグループ展のために
4月に入ってから新作を制作していたのだが、
3点の内の最後の1点、一番小さな作品の本摺りが終わった。
今月中にはタイトルや販売価格を書いて
キャプション係に送らなければならないので、
展覧会が6月11日からとはいえ、
最後の作品には新規に額も注文することも考えるとあまり余裕のない状態だった。
試し摺りを一昨日終え、
月末に本摺りをと考えていたが、昨日、夜中に激しい雨が降るという予報が出され
その後は月末まで連日ピーカンらしいとわかったので
例によって、摺りをするならここしかないと決心し
夜中に起きて本摺りを決行することにした。
夕べは確かに夜中の雨脚が一番激しく
何と朝には小雨になり、8時過ぎには日が差してきてしまったので
今回の判断は正解であった。
小さな作品だったのでたくさん摺れるとふんで、15枚分の和紙を湿し
ひとり画室に籠もって、雨音をBGMに、夜中中、摺り続けた。
一昨日、とったばかりの試し摺りを微調整しながら、
より精度の高い色の組み合わせにしていく。
かなりぶっつけ本番なところもあるが、
頭の中で完成のイメージは出来ているので
そんなに苦労せずに色も決まっていく。
初夏の湘南の風景だ。
本当の富士山は夏場はくっきりとは見えないことがほとんどなのだが
イメージの中の富士山はまだ頂きに雪を残し
薄紫色に染まり、美しいラインをみせそびえている。
実地検分としてあさって稲村ヶ崎から江ノ島にかけ友人とあるくことになっているが
これは正に稲村ヶ崎あたりから見た風景だ。
しかし、この作品はまだタイトルが決まっていない。
風景画というわけではないので、あまり説明的な題にしたくない。
摺っている間も、『湘南』『江ノ島』『稲村ヶ崎』『124号線』『富士山』など
いくつもの地名が思い浮かんでは消えた。
しかも
小さな作品なのにタイトルが長いのはかっこわるい。
何かひとことで、しゃれた題にしたいものだと思う。
『浜風』とか『はまかぜ』なんてのはどうだろう。
ちょっと日本的すぎるかな。
そういえば、銭湯の湯船の壁絵みたいにも見えてきた。
困ったな、『テルマエ・ロマエ』か?
そんなことをつらつら考えながら作業をしていると
ひょっこり
『なぎさ』
というタイトルが思い浮かんだ。
『渚』より『なぎさ』がいい。
『はまかぜ』だと昔の同人誌の名前みたいだけど
『なぎさ』ならそうでもない。
初夏らしい響きも感じる。
「うん、この作品は『なぎさ』にしよう」
誰に訊かれたわけでもないが
心の中でそうつぶやいて、ちょっと胸のつかえが下りた。
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