2014年8月23日土曜日

金魚と能面

 
 
 
 
 
 
 
8月最後(に近い)の週末、
今注目のスポット日本橋で開かれている展覧会2箇所に行って来た。
 
まず、興味があったのは三井記念美術館で開催中の
『能面と能装束』という
三井財閥が所有する能面と能装束、そして、歌舞伎の舞台衣装の展示だ。
 
その三井記念美術館の真向かいに最近できたCOREDO室町があり
その7階で金魚をいろいろな水槽に入れ、音楽や映像と融合させたアクアリウムの
展示が話題になっているので、せっかくだからそちらも見ることにした。
 
こちらは子どもから大人まで楽しめる展示なので先に行った方がいいだろうと
考えてはいたが、はたして、銀座線の三越前の改札を出ると
出た途端、
そこには何ごとかと思うほどの人・人・人。
 
更に大きな声で、これから並ぶ人はもっと奥の別の最後尾につくよう促している。
ふと見ればもっと奥もすでに長蛇の列。
一瞬ひるんだが
「ただ今40分から50分でのご案内です」との放送に
意を決して最後尾に並ぶことにした。
 
静かに能面を鑑賞するはずが
江戸庶民の夏の涼・金魚の人気はすさまじく
ディズニーランドに来たごとく、まずは私もそのとぐろに巻かれたのであった。
 
まだまだ蒸し暑さ全開だというのに、列のあちらこちらに浴衣の女性が目に着く。
カップルだったり、友達同士だったりするが、
案外、日本の夏の浴衣姿は定着していると実感。
 
着ている本人はさぞや暑いと思うけど、見ている方は微笑ましい。
 
そして、ようやくたどり着いたアクアリウムの場内は
押すな押すなの人混みだったけれど、
さすが日本人、節度をもって、禁止されているフラッシュを炊くこともなく
順番を守って、それぞれのブースの前で写真撮影に余念がない。
 
結局、50分待って、30分観て終わりだった。
これでひとり1000円は大もうけに違いない。
 
そして、次なる展示『能面と能装束』の方は
COREDO室町の斜め前のビルの7階にある。
ほぼ同じ場所にあるとも思えない静かな空間にまばらな鑑賞者。
 
三井財閥の匂いがプンプンする重厚な建物内に設けられた美術館の中に入ると
アクリル板で作られた透明な箱に宙に浮かぶがごとく能面が展示されていた。
 
つまり、能面の表と裏の両方を観ることができる展示になっているのだ。
 
能面のことを『おもて』と呼ぶが、
その裏の顔となると、本来、お能の踊り手しか見ることがないものだから
とても貴重な体験だ。
 
面打ちの焼印だったり、
『知らせ鉋』と呼ばれる作者特有の刀の跡が彫り込まれていて
とても興味深かった。
 
能面は正面から見る表の表情と裏の表情はかなり印象が違うので
面打ちが込めた想いなども、うかがい知れたような気がした。
 
能装束や歌舞伎の衣装の絢爛豪華な入念な刺繍やデザインの大胆さは
それこそ先日の印象派の画家達の驚嘆ではないが
本当に日本人として誇らしい出来映えだと思った。
 
同じアクリルの容器の中にあっても
金魚は押すな押すなの人だかり。
なのに、能面となるとまるで無関心。
 
きっとお隣にあっても、両方観る人は数えるほどなのだろう。
 
「お~い、金魚もいいけど、能面もいいよ~。
どうだいそこの浴衣のお姉さん、彼氏と一緒に観ていかないかい?
アクアリウムの半券を見せると、こっちは200円引き
800円で表も裏も見せちゃうよ!」


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