2月に入って、自分に課した版画の仕事は、
昨年夏に原画を興し、版を彫り進めていた大きな新作を摺り上げること。
昨年秋に原画を興した2点の作品は、12月と1月にそれぞれ
試し摺りから本摺りへと仕上げていたのに、
なぜか後回しになっていた大きな新作をいよいよ摺らねばと、
自分に言い聞かせていたのだ。
なぜ、後回しになっていたかといえば、
色彩のイメージがなかなか浮かんでこなかったからとも言えるし、
大きな作品だからこそ、体力気力の整ったときにしかできないからとも言える・・・。
じゃあ、そのあたり整ったのかと問われると、はなはだ怪しいが、
いつまでも後ろに倒していても始まらない。
重い腰をようやく上げたというあたりかもしれない。
先週から試し摺りに取りかかり、イメージを固めたり、版の彫りの調整をした。
昨日・一昨日と2日に分け本摺りをし、5枚の作品を完成させ、
水曜日の今日、午前中いっぱい、後片付けにかかってしまった。
最近は1日12時間摺りのような無茶はしないとはいえ、
2日に分けても、物理的にかかる時間は同じだから、
終わってみれば、達成感と安堵感と疲労感がドドーッと押し寄せる。
本当なら、水曜の11時半からスポーツジムの体幹を鍛えるレッスンと
その後のシバムという踊り系レッスンを取るつもりだったが、
とんでもない、
後片付けが終わったら、疲れてボーッとなってしまった。
2日間の本摺りを支えてくれたのは、何といっても今回は三浦一馬のCDだった。
先日のコンサートで惚れ込み、
ヴァイオリニストの石田泰尚から、
にわかに目移りして心踊らせているバンドネオン奏者だ。
先日のコンサート会場では、その場でCDを買い求め、
本人にサインをしてもらい、演奏し終わったばかりのその手で握手してもらった。
そのCDと、ついこの間買い足した別のCDを
本摺りの間中、繰り返し聴いていたのだが・・・。
三浦一馬の魅力は
まだ、弱冠25歳にして、卓越したバンドネオンの技巧と表現力を兼ね備え、
ピアソラの曲を狂おしいまでに切なく演奏することにある。
そして、何といっても石田様と一番違う点は
何もしゃべってくれない取り扱い注意の繊細な石田様に比べ、
語彙の豊富さと美しい日本語でピアソラの魅力を語ってくれるところだ。
いかに自分がピアソラに心酔し、焦がれているかを体現するその演奏。
バンドネオンを弾く際にでる楽器の空気音が、
まるで彼の呼吸のようにCDから聞こえると、
耳元で演奏されているような、ささやかれているような甘美な気分になる。
そして、握手した時のすこし湿った手の感触がよみがえる。
本摺りの真剣勝負が何時間も続く直中に
一緒に戦ってくれている三浦一馬がそばにいる。
そんな妄想が、私の本摺りの支えとなって、
どんどん溜まる肩や肩胛骨周りの乳酸と、腰の張り、首筋のきしみなどを
忘れさせてくれるのだ。
だから、本摺りが終わって、作品を水張りし、
乾燥させてから丁寧にテープを剥がし、グラシン紙という包み紙に包み終えると、
その安堵感からか、ドッと疲れが溢れてしまう。
でもって、我に返って、どうするかといえば、
電車に乗って京急新子安まで出向き、
予約してあった整体の先生に体の凝りをほぐしてもらうのだ。
先生に体をあずけ、痛みに耐え、
鉄板のように硬くなった鎖骨下の筋肉をほぐしてもらい、
肩胛骨周りの乳酸をしごし出してもらいながら、
「お風呂場のリフォーム、決着したんですね。交渉、すごかったですね」と
褒めてくださるU先生と、ブログネタで盛りあがること、
これが私の何よりのリセットと癒しの時間なのである。
三浦一馬と整体のU先生、
私の本摺りを支えてくれて、本当にありがとう!!
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