六本木の森美術館で行われている村上隆の『五百羅漢図展』を観てきた。
六本木の国立新美術館で今日から自分の作品を含む団体展の展示が
始まったので、もののついでに観に行ったのだが、
そのあまりのど迫力にかなり衝撃が走った。
今回の展覧会のメインは、たて3メートル×横25メートルの巨大な作品が4点で
合計100メートルの大きさになる「五百羅漢図」だが、
それより何より、まず入り口に立っている等身大の村上隆人形に
度肝を抜かれた。
羅漢様みたいな装束を着た等身大の村上隆人形は
驚く緻密さの精巧な作りで、どんと立ち尽くし、顔の中からもうひとつ顔を出し、
こちらを睥睨している。
間近に寄って見あげる私達がじろじろ眺めていると、
急に目玉がぎょろぎょろ動きだし、念仏まで唱え出す。
その不気味さとシュールさで、客を一気に村上隆ワールドに誘い込み、
そこから始まる人知を越えた壮大、かつ深遠な世界へといざなってくれるのだ。
個人的には、村上隆の作品が好きかと言えば、そうでもない私だが、
とてもひとりの作家ではなし得ない莫大な作品量を、
多くのスタッフを使って制作していることと、
歴史や絵画に関する深い造詣、多くの資料・文献に基づき、
つきることなく生み出されている作品には、
圧倒されて言葉がない。
村上隆は2浪して芸大の日本画科に入り、大学院と博士課程を修了。
そして、その頃、ハタと気づく。
「日本画のお客さんなんて、金持ちのおじいさんかおばあさんしかいないのに
自分は何のために絵を描くのか。誰のために絵を描くのか」と。
で、そこから、
絵描きとしてのあり方の模索が始まる。
それからは世界中が知るところのキャラクターの誕生や
フィギュアの制作が始まるわけだが、
2011年、東日本大震災を経験。
その年に生まれたのが、今回の『五百羅漢図』のシリーズだ。
計200名以上の美大生を募り、
まるで工場で生産するがごとくに、村上隆の指示の元、
今回の巨大絵画は制作されたという。
その制作過程や指示書、制作風景などの資料や写真も展示されており、
とても興味深かった。
村上隆からの指示書は「ご指示」と呼ばれ、
中には「指示どうりにやれ!!ボケ!」などと書かれた村上隆の自筆メモもあった。
同じ絵描きの端くれとして、
その組織だった人海戦術と人を使うパワー、
行動力、資金力、ビジネス展開する営業力など、
どれをとっても並外れていて、驚くことばかり。
芸大に入って、出るまでの経歴は私と似たりよったりだし、
歳も少ししか違わないのに、
どこでこんなに違いが出てしまうのだろう。
何だか作品の良し悪し以外のところに打ちのめされてしまって
とても疲れてしまった。
人は人、自分は自分なんだけど、
日本人にもこんなにパワフルでワールドワイドな人がいると知って、
とても驚いたし、かなり凹んだ。
「五百羅漢」なんていう壮大なテーマは、モチーフとして尽きることがないし、
宗教的なバックはやっぱり強い。
日本人とは何ぞやとか、生きるって?死ぬって?みたいなテーマも深淵で
深掘りし甲斐のあるテーマだよね。
「生と死」は私にとっても大切なテーマなだけに
先手を打たれたダメージがボディに響いたのであった。
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