銀座6丁目にあるギャルリー志門という画廊で、
第3回 文学と版画展が始まった。
昨年から参加メンバーに加えてもらって、自分でも楽しみにしている展覧会だ。
この展覧会は、版画家自身がまず、1冊の本を選んで、
自分の作品を本の装丁に使って表紙を作るというもので、
会場には額に入った作品は勿論のこと、
その額の下に白い棚が設けられ、そこに装丁がかかった本も展示されている。
版画家は時には依頼を受けて、本の表紙に絵を提供することもあるが、
大抵は出版社が表紙を制作する部門を持っていて、
そこのデザイナーが表紙や帯をデザインする。
だから、まず1冊の本を選ぶところから始まって、
表紙にどのように作品を入れるか、文字はどうするかなど、
普段とは違う作業の連続なのが、楽しい。
だれがどの本を選ぶのか、興味津々で、
小難しい哲学書を選ぶ人もいれば、童話を選ぶ人もいて、
その人の人となりがよく現れる。
私の場合は、「女流作家であること」、「自分が好きな文学であること」を条件に
本の選定をして、
その本の内容を意識した作品を創っている。
自分の作品ありきで本を選ぶ人もいるが、私は文学の方に敬意を払っている。
去年は瀬戸内寂聴の「爛」を選んだが、
今年は小池真理子の「沈黙のひと」である。
内容は小池真理子自身の父親がパーキンソン病を患い、次第に歩けなくなり、
話すことが出来なくなるのを側で介護しながら、
父親は人としてどう生きたのか、男としてどんな人生があったのかなどを
驚愕の内に知るというものだ。
それに対して、私の作品は、
人がパーキンソン病をいう抗いがたい病を得ることに思いを寄せて、
いつもより静かな絵柄、しかし、色味は情熱を秘めているものにしようと考え、
創った作品が「ふたり静かに」である。
また、本の「沈黙のひと」というタイトルもいいと思った。
本の表紙としては、横キャンの絵柄を真ん中で分断し、
表表紙と裏表紙に分けて使っている。
背表紙とそれに続く裏表紙の一部をベージュ色にし、
バーコードやメールアドレス、
「文藝春秋」ならぬ「文藝季満野」という文字を配した。
本当に文藝春秋から発行されている訳ではないから、
それっぽく見えるためのユーモアである。
何もないと間が抜けるからねぇ・・・。
という感じでギャラリーのオーナーと相談しながら、印刷から上がってきた表紙は
とてもいい出来上がりで、
書店にもし並んでいたら目を引くだろうと思える美しい表紙になった。
誰か出版社の目に止まって、表紙のデザインの依頼が来ないかな~と思うのは
去年も今年も同じだが、
こういう課題の出される展覧会に参加する楽しさも同様だ。
去年はオープニングパーティに出ても知らない作家ばかりだったので、
なじめない空気を強く感じた(意外と人見知り・・・)が、
2回目の今年は徐々に顔見知りも出来、打ち解けてきたので、
この企画展のメンバーとしてしばらくやっていこうかなと思っている。
「文学と版画」
印刷が発達する前は当たり前に密接な関係だった「文学と版画」を
あらためて自分の作品で結びつける機会を得、
人の文学作品に啓発されて版画作品を創る楽しさを味わっているところだ。
展覧会として、とても展示そのものが美しく、面白いと思うので、
銀座にお出かけの際は、ぜひ、お立ち寄りください。
ギャルリー志門
中央区銀座6-13-7 新保ビル3F
2017年8月28日(月)~9月2日(土)
11:00~19:00(最終日は17:00まで)
なにとぞ、宜しく!