2017年8月20日日曜日

摺り師KIMINO


 
 
 
 
雨は月曜日までしか降らないらしい。
となると、日曜日中には何としてもこの作品の本摺りを仕上げねば・・・。
 
その一途な思いだけを胸に、ここ10日ほど頑張ってきた。
 
そして、遂に昨日8月19日の夜から、本摺りに取りかかることが出来た。
 
土曜日は午前中に1本心理カウンセリングの予約が入っており、
午後は陶芸工房で水差しの削りという時間がかかりそうな作業が待っていた。
 
しかし、天気予報では夜半過ぎから関東地方はところにより大雨とか。
 
もし、夜、雨が降るとしたら、この機を逃す手はない。
夏、暑いのはどうしようもないとして、和紙の乾燥を防ぐため、
「雨の中、摺りたい」その強い思いが私を突き動かしている。
 
というわけで、土曜の朝の一番に和紙を裁断し、水を打ち、湿して、重しをした。
和紙は湿してから、全体に水分がなじむまで、
5時間ぐらいは摺り始めることが出来ない。
 
日中、他の用事を済ませ、夜、作業を開始すれば、丁度よい。
 
絵の具の調合は金曜の夜に済ませ、
すでに40色ぐらいの絵の具が摺り始めるのを待つばかりの状態だ。
 
土曜の夜、夕飯を作り食べ始める頃、
テレビのニュースでいきなりの大雨と大風のため、
花火大会が急遽中止になったと報じていた。
と同時に、横浜の雲行きも怪しくなり、ゴロゴロ、ピカッと雷鳴が・・・。
 
私は「来た来た来た~!」と、小躍りして、アトリエに駆け込み、
加湿器をオンにして、いよいよ本摺り開始だ。
 
まずは体力があるうちに大きなパートを摺り始める。
 
背景に配されたグレーの濃淡の花の部分から、版木の上に調合した絵の具をのせ、
3色グラデを作り、1枚1枚同じ部分だけを摺っていく。
 
今回は6枚の和紙を同時に摺る。
 
次は江戸紫の濃淡で出来ている大輪の花。
 
そうやって、夜中の2時まで摺り続け、だいぶ疲れたので、今日はこれまで。
シャワーを浴びて、朝まで一眠りすることにした。
 
昔は夜明けと共に作業を開始し、夕方6時ぐらいまで、昼ご飯もそこそこに
計12時間摺りみたいな無謀な摺り方をしていた。
 
しかし、ここ数年は同じ時間数を2日に分け、
初日に5~6時間摺って、一度は筆を置く。
 
すると、次の日には前日の作業がなかったかのごとく、リフレッシュし、
気分的には1からスタートして、残り半分の量を摺ることで作品は完成する。
 
その作戦で、日曜の朝は自然に起きるまで目覚ましもかけずに寝て、
体が「OK、リフレッシュしたから、再開しても大丈夫」と声をかけてくれるのを待つ。
 
今朝は8時前に目覚めたので、寝過ごした感じもなく、
いつもの日曜日という感じで、グレープフルーツとバナナ入りヨーグルト、
フランスパンで作ったフレンチトースト、野菜ジュースという朝食を採った。
 
そして、後半の作業を気分よくスタートし、版がずれるとか、
絵の具でどこか画面が汚れるとか、色味が気に入らないとかのトラブルもなく、
つつがなく午後3時にはすべての行程が終了、水張りも済ませた。
 
途中、試し摺りで考えていた背景とは少し色味を変えたりしたが、
そのあたりは摺り師KIMINOが絵師KIMINOに相談するという形で、
スムーズに決断し、ベストな選択がなされたと思っている。
 
本摺りは当然のことながら、試し摺りより摺りのクオリティが上がって、画面が美しい。
 
「さすが、摺り師KIMINO、やるじゃない」と絵師KIMINOが声をかけ、
「まあね、この作品、ちょっと凄くいいんじゃない」と摺り師も絵師もご満悦。
 
相変わらず、アトリエではひとり相撲というか独りごとというか、
怪しい会話が行き交っているが、
無事、6枚の本摺りは摺り上がり、怒濤の8月のミッションはクリアした。
 

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