今週はずっと雨という予報なので、新作の本摺りに向け、
今日は試し摺りをした。
浮世絵は絵師と彫り師と摺り師と版元という四者の共同作業で成り立っていた。
つまり、歌麿や北斎というのは絵師であって、
決して、自分では彫ったり、摺ったりはしていなかったのである。
版元というのは今でいえば、画商や出版社という位置づけで、
作品を世の中に送りだし、売ってくれる人である。
しかし、現在、版画家に画商がついて、売ってもらえる人は
ほんの一握り。
多くの版画家はほとんど作品が売れることもなく、
時に友人が買ってくれるとなると申し訳ない気持ちになるほどである。
話はそれたが、
今日の試し摺りは言ってみれば、「絵師」にあたる要素が大きい。
もちろん原画を描いたのは自分であるから、
原画作成というのが絵師の仕事なのだが、
その後、トレッシングペーパーに原画を描き写し、版木に転写し、
黙々と、延々と彫りの作業を進めた後で、
もっともアーティスティックなパートが試し摺りになる。
実は原画を興した段階では、最終の色合いまでは全く決まっていない。
大体の色みや作品のイメージみたいなものは決めてスタートするが、
細かい色をどんな風にするか、1色1色調合し、
ああでもないこうでもないと悩むのがこの段階なので、
自分ではこここそが「絵師」のパートだと思っている。
実際、今日も途中まではいい感じだと思っていたのに、
後半、迷子になってしまい、
思い通りにのせた色が、思い描いたイメージを創り出してはくれなかった。
そこで、2枚目の試し摺りを取り、
修正していくのだが、もはや、朝から作業を始めて7~8時間ぐらい経っており、
頭が疲れて働かない。
とはいえ、日曜日には本摺りにまでこぎつけたいので、
彫り調整といって、版が重なり過ぎた部分などをぎりぎりの重ねになるよう、
彫りの修正もかなり必要だ。
夕方になると、目はしょぼしょぼしてくるし、肩もパンパンだし、
ずっと長時間正座していたせいで、ふくらはぎの血流が滞っているのがわかる。
そんな自覚症状がでるまでやらないよう注意する、
整体の先生の困った顔が目に浮かぶが、
頭の中は明日の予定、あさっての予定などが渦巻き、
やっぱり今やらなくてはと焦る自分に押し切られてしまう。
何とか、最終のイメージが掴めるところまできて、筆と刀を置き、
夕飯の仕度のため重い腰を上げた。
本気で重い腰になっていて、
一瞬、立ち上がりざまによろけた。
このまま、ここで倒れてはシャレにならない。
絵師KIMINOは何としても摺り師KIMINOにバトンを渡さねば・・・。
バトンといえば、日本のお家芸になりつつある、4×100メートルのリレー、
今回初めて見た第1走の多田修平君は可愛い。
何と言っても笑顔がいい。
素直な性格が顔に表れている。
ケンブリッジ飛鳥が故障で最終滑走が藤光謙司君になったのは残念だけど、
こちらもイケメンだったなぁ。
それにしても、ボルトのあの劇的な幕切れ。
まるで映画の1シーンのような衝撃的な最後の姿。
力を出し切った男がそこにいた。
私も力を出し切らねば・・・。
なんて、ひとり妄想し、独り言をつぶやきながら、
アトリエでは熱き戦いが繰り広げられていたのである。
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