関内のライヴハウス「KAMOME」で行われたトリオ・リベルタの
ライヴコンサートに友人と行ってきた。
「KAMOME」が近日中に閉店になってしまうというので、
これは見逃すわけにはいかないと出掛けたのだが、
いずれリニューアルオープンするのかと思ったら、
完全閉店だという。
10年来、大家さんと音の問題で揉めて、
結局は存続できなくなったらしいが、
関内は昔からジャズハウスやこうしたライヴハウスの多い地区なので、
完全になくなってしまうというのはいかにも残念だ。
トリオ・リベルタのライヴは3日間4公演行われるが、
その内の2日目「ゆかたライヴ」と銘打たれた日を選んで
私達は行くことにした。
演奏者がゆかただからと、私も勇んで着物で出掛けたのだが、
会場にはチラホラ着物姿のお客さんもいて、
いつもとはだいぶ違う雰囲気だった。
整理券をとってくれている友人が、今回はとりわけ頑張ってくれて、
なんと「12」「13」番をゲットしてくれたので、
最前列右端の席を確保出来た。
いつもは壁際に並んだスツール席なので、
なんだか足が宙に浮いていて落ち着かないが、
最前列のソファ、しかも舞台ではなく同じ床面にアーティストもいるのだ。
更に彼らもゆかたを着ているわけだから、
胸元や腕、素足の足首や足の指まで目の前に見えていて、
ちょっとドギマギする。
出演者の3人は、私達が右寄りにいるので、
直ぐ目の前にサックスの松原さん、
その横にヴァイオリンの石田様、
その左、グランドピアノの奥に中岡さんが座っている。
お目当ての石田泰尚氏は譜面台を挟んで1メートル20ぐらいのところにいて、
私はソファを左斜めにして座っている。
ヴァイオリニストは右斜めになって楽器を弾くから、
結果、真正面に相対することになり、
演奏が始まると、音楽と石田様にお姫様抱っこされているような気分になった。
石田様をずっと見つめていると、
譜面台ごしに何度も目が合ったような気がする。
初めて見る石田様の生足がすぐそばにあって、
足指の爪の形まで分かり、
演奏中に下駄を脱いだり履いたりしていることまで見えているので、
何だかとにかく「生々しい」。
1部は「ラストタンゴ イン パリ」や「死刑台のエレベーター」など
映画音楽が中心で、リベルタならではの編曲がなされている。
石田様のヴァイオリンはもちろん、
松原さんのサックスのソロシーンもふんだんにあって楽しかった。
何しろ、1メートルの距離で松原さんはサックスを吹いているわけで、
ゆかただから尚のこと、その息づかいやお腹の揺れまで分かってしまい、
いかにも生演奏だ。
3人のゆかたは三人三様、
松原さんは紺にペンシルストライプの浴衣に淡いグレーの角帯。
中岡さんは明るいブルーの無地系ゆかたに柔らかい三尺でリボン結び。
石田様は紺の市松模様のゆかたに真っ赤な角帯で、
後ろの結び目を真ん中ではなく右端によせて結んでいる。
しかも頭の角刈りにそり込みが入っているので、どうみても、その道の人だ。
会場の60名ほどのお客さんは
そのほとんどが石田ファンなので、
いつもの黒づくめのスーツ姿から一転、肌も露わなゆかた姿に
ざわついているのが分かる。
常連のお客さんの顔もだんだん分かってきているが、
(それだけ私達も通ってきているということだが)
常連さんで着物の人はいないので、
自分でいうのも何だが、私の着物姿は目立っていたと思う。
2部は待ってましたのピアソラ特集。
耳なじんだ曲から、
何かのピアソラアルバム全12曲の内の8曲みたいな新しい選曲もあって
盛りだくさんだ。
今日の3人はゆかたといういつもとは違ういでたちだったせいか、
ライヴハウスということで最初からアルコールが入っていたせいか、
とにかくノリノリで、
いわゆるコンサートホールの舞台とは違う親近感の中、
私達は楽しい演奏を堪能した。
本日の名演奏は
1部の最後の「シェルブールの雨傘」と
2部の最後のピアソラの「タンガータ」だったが、
アンコールにも3曲応え、
やっぱり最後の最後は「リベル・タンゴ」だった。
トリオ・リベルタはリベル・タンゴからとって名付けられており、
リベルとは自由という意味だ。
3人で自由に音楽を楽しもうというコンセプトでこのトリオは結成されたという。
音楽が好きで、ピアソラが好きで、
音楽で遊んだり、ライヴを楽しむのが好きな3人が、
とりわけ遊んでいるゆかたライヴを、
同じフロア上の目の前で体感出来、
「あ~、私は今、この時に生きているんだな」と思った。
夏フェスに行った若者が会場一体となって熱狂する、
あの感じがギュッとコンパクトになって、狭い一部屋にいて、
みんな側で体温を感じている。
そんな生々しい夜だった。
あ~、生きているって素晴らしい!
あ~、音楽って心地よい!
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