2日続けて、映画館通い。
今日は東銀座の東劇まで出掛けて、
シネマ歌舞伎の『法界坊』を観てきた。
主演は6年前に亡くなった中村勘三郎。
今年は七回忌にあたるので、
今月の歌舞伎座は追善公演で、二人の息子が大きな役に挑戦している。
そして、助六の仁左衛門、静御前の玉三郞など、
大御所達も追善興行を華々しく盛りたてようと気を吐いている。
今日、映画で観たのは『法界坊』という演目だが、
こちらは来月の歌舞伎座では、やはり七回忌の追善ということで、
法界坊を猿之助、脇を若手で固めて、
勘三郎の代表作を今後も継承していこうという姿勢を見せている。
映画に残した『法界坊』は平成20年11月の平成中村座における公演。
勘三郎53歳、亡くなる4年前の作品ということになる。
平成中村座は歌舞伎座とは違って、昔の芝居小屋を模した作りで、
収容人数は800名。
歌舞伎座が1600名だから、半分の大きさしかない。
しかし、その分、お客さんと役者の距離が近く、
四国の金丸座がその大きさで、私も客として体験したことがあるが、
芝居を役者と観客が一体になって作り上げるような臨場感がある。
『法界坊』の勘三郎は正に昔の芝居小屋に出ている役者そのもので、
時には2階の客席から登場し、
また、通路に降りていっては客いじりをし、
舞台や花道から客に声をかけて、
会場中を芝居に巻き込んでいく。
軽妙なトークで映画なのに、爆笑を誘い、
かと思えば、歌舞伎の様式に則った見得をきったり、セリフ回しがあったりと、
変幻自在、縦横無碍とは彼のことをいうのだと思った。
他にも
男どもの取り合いになるおくみに中村扇雀、手代要助の勘太郎、
いいなずけ野分姫の七之助など、
10年前にはまだまだ若くて父親の後を必死に追っている二人の息子達が
初々しかった。
また、平成中村座ならではの役者として、
歌舞伎役者ではない笹野高史が出ているのだが、
これが本当に可笑しくて、
彼は平成中村座には必要欠くべからずの役者である。
勘三郎がやりたかった面白い歌舞伎を、演出の串田和美が具現化し、
淺草の浅草寺の裏手の敷地に小屋まで建てて実現した舞台。
最後の最後に観客の度肝を抜く演出が待っていて、
豪華絢爛に桜が舞い散る中、大見得を切った勘三郎が
舞台中央から観客を睥睨する。
よもやこの4年後に命が尽きるとも知らず、
絶頂期を迎えた勘三郎は舞台にひとつの答えを出し、
万雷の拍手は鳴り止むことがなかった。
映画館で声を出して何度も笑い、
芸の達者さに呆れ、そして、感嘆した。
悔やんでも仕方のないことだが、
同じ時代に生きていたことを歓び、
来週の月曜日には追善公演に足を運ぼうと思っている。
昨日は樹木希林、今日は中村勘三郎。
ふたりの素晴らしい役者は今は鬼門に入ってしまったけれど、
映画という形で再会できて本当によかった。
そして、違う意味で、それぞれの映画には学びがあり、気づきがあった。
改めて、今ここにあることに感謝して、
日日を大切に生きていこうと思ったのである。
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