10月の歌舞伎座は、十八代目中村勘三郎の七回忌追善興行として、
勘三郎ゆかりの演目が組まれている。
その中で、20年ぶりに助六を演じる仁左衛門見たさで、
いつもの歌舞伎通の友人にお願いして、
夜の部のチケットをとってもらった。
今回は例の前から2番目ど真ん中というお席ではなく、
だいぶ後ろの舞台に向かって右に振れた通路側のお席だった。
それにはわけがあって、
助六が花道から登場した際、
舞台にのる直前、このあたりを見て、
ご贔屓さんにお辞儀をする所作が入るからだという。
実際には、花道の中央でもひとしきり番傘を持った助六があちらの客席、
こちらの客席にとお辞儀をして、喝采を浴びていた。
昔の芝居小屋の大きさだったら、
本当にこうして客席と役者が一体になったと感じるであろう。
当時の倍の収容人数の歌舞伎座であっても、それは同様で、
出てきて数分でお客の気持ちをわしづかみにして、
仁左衛門演じる助六は江戸の華を具現化して見せた。
もちろん七之助演じる傾城・揚巻も気位高く凛として、
玉三郞の揚巻を彷彿とさせたし、
傾城・白玉の児太郎も成長著しく、次期の揚巻候補筆頭だ。
また、勘三郎さんのもうひとりの息子・勘九郎も、
勘三郎が得意とした軽妙な役の間を会得して、
可笑し味のある役をうまく演じて、客席を笑いで温めていた。
早くして亡くなった勘三郎さんの歌舞伎にかけた情熱を、
息子だけに限らず、周囲の役者たちがみんな惜しんでいることが分かるし、
何とか意思を継いで、歌舞伎を盛りたてていこうという熱意にほだされる。
成長して立派な役者になりつつある若手をこの目で観ることの出来る幸せ、
若い頃からずっと観てきた玉三郞や仁左衛門、
脇でいい味を出している彌十郎など、
今回の演目を目の当たりに出来た歓びが湧いてきた。
私も傾城とまではいかないけれど、
黒地に蔦の柄の訪問着に『荒城の月』を思わせる袋帯を締め、
芸妓風にまとめてみた。
仁左衛門さんが挨拶くださった時には目があったような気もしたが、
単なる気のせいか・・・。
ご贔屓とまではまったくいかないけれど、
ご贔屓の友人にいわれのあるお席を調達してもらって、
すっかりその気を楽しんだ夜なのであった。
よっ、姐さん!!
0 件のコメント:
コメントを投稿