2019年10月16日水曜日

『JOKER』突き付けられた問題

 
 
 
 
だいぶ前から、映画を観る度に予告編で
気になっている映画があった。
 
アメリカ映画『JOKER』である。
 
チラシにはアカデミー賞最有力!の文字が踊り、
実際ヴェネチア国際映画祭では
金獅子賞に輝いた。
 
コメディアン志望の男がピエロの扮装をして出てくるが、
なぜか悲しげであり、
涙を流している。
そして、狂気をはらんでいるようにも見える。
 
公開前にチラシの文言には
「衝撃サスペンス・エンターテイメント」
「今世紀初めて出会う衝撃。」とあり、
カテゴリーはホラー映画になっている。
 
「本当の悪は、人間の笑顔の中にある」
 
これだけのキャッチコピーでは、
どんな映画かが分からないが、
なぜか気になったので、観に行くことにした。
 
そうしたら全く予想だにしない内容だった。
 
心理カウンセラーの私としては、
「心を病んだ男の悲しい人生の物語」だとは
全く知らなかったので、
ホラー映画だなんてカテゴライズされていることに腹が立った。
 
まだ見ていない人のためにネタバレ注意と書いてあったが、
こんな偏見許していいのかという気持ちになった。
 
病めるアメリカ、
貧富の差、
精神疾患の患者も日本とは比べものにならないほどいるし、
しかもアメリカは銃社会だ。
 
夕べ、カウンセリングの勉強の一環で
「自己愛性パーソナリティ障害」についての文献を読んでいたのだが、
正にそうした障害をもつ母親が登場する。
 
ホアキン・フェニックス演じるアーサーは
そんな母親に育てられ、
生育歴の中で、虐待やネグレクトを経験している。
 
大人になった彼は
緊張したり、不安が増大すると
笑いが止まらなくなるという症状が出る。
 
その笑いは悲しいまでに激しく、
本人が止めようと思えば思うほど、
しゃくり上げるほど続く残酷な笑いだ。
 
やがて、そんな症状が悲劇の引き金を引く。
 
精神疾患の治療も、
貧困と不景気の波に飲み込まれ、頓挫する。
そこに救いはないのか。
 
全編、私は心理カウンセラーとして観ていたが、
終わった時の会場の反応は
「え~、こういう映画だったの?」
「何だかよく分からなかったわ~」
と、そんな空気だった。
 
どんなところに感動して
高い評価を得ているのか。
 
カウンセラーの私には考えさせられるところが多多あったが、
普通の人には理解しがたい人物だし、
テーマがよく分からない映画なんじゃないかと思う。
 
自分の意思とは関わりなく
脳が誤作動を起こす。
それは押しとどめようもないとしたら、
その人物が起こす事件を、
「ホラー」と呼んでいいのか。
 
私は世の中の無理解こそが
この映画のテーマなのではないかと感じた。
 
アメリカ社会は日本社会より病んでいる。
それは間違いないだろう。
 
日本のある場所には
こうした心の病を抱えた人がいるのかもしれないが、
現実の私達は知らない。
 
この映画を他人事として観るのか、
人間の誰しもが持っている心の闇として受け止めるのか、
分かれ道はそこにある。
 

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