2020年4月5日日曜日

前を向くということ





今週も不要不急の外出は自粛せよという
何とも息苦しい週末だ。

誰しもが4月はじめは
何かしら進級や新社会人など、
自分でなくても家族にそうした人がいたりして、
心浮き立つ季節なのに。

入社式も入学式も中止になったり、
ビデオで校長や社長が挨拶して終わりだったり。

ようやく再開されると思った学校も
ゴールデンウィークまで休校が延長されたりしている。

先日、私が非常勤講師を務めるパティシエ学校の講師会があり、
半数ほどの先生方が出席し、
4月以降の予定とコロナ対策が話し合われた。

私が受け持っているのは
「就職対策講座」なので、
今年度の就職が厳しくなることは間違いなしなので、
気を引き締め、前のめりになって話を聞いていた。

しかし、全体会だったせいもあるが、
就職に関する話はゼロで(ちったー心配しろよ)
校長始め、コロナウィルスに対する危機感はかなり薄く、
開校以来初めてのことにオロオロするばかりで、
はっきり言って「大丈夫か?」と
思ってしまった。

食を扱う職業とコロナ、
就職対策とコロナ、
学生の生活とコロナなど、
どうするのか問題は山積なのに、
何とかなると思っているふしがあって、心配だ。

私は5月1日から9月までの前期だけの授業なので、
自分の授業の中で、
今年の特殊事情と戦える学生を育てられたらと思っている。

その授業開始までに
他にすることは、本当ならたくさんあった。
何しろ、今年は5年ぶりの版画の個展だったんだから。

本来なら、昨日の土曜日は
取りやめにしてしまった個展の搬入と飾り付けの日だった。

今日は個展の初日のオープニングパーティのために
今頃、スペアリブとキャロット・ラぺとピクルスを
作っているはずだった。

明日の初日に着るきものにアイロンかけたり、
小物を準備したりもあったはず。

けれど、個展の作品は
少し前に押し入れにぎゅう詰めにしまってしまったし、
スペアリブも娘の引っ越しの差し入れ用に作って
持っていってしまった。

ダンナはいつ緊急事態宣言が出されてもいいように、
非常食を大きなカートンいっぱいにネット注文し、
今はキッチンが缶詰や乾物、パスタなどであふれかえっている。

ニュースで見たカップ麺やレトルト食品だけは嫌みたいで、
自分の好みの多少は調理が必要な非常食ばかりだ。
(もちろん作るのは私)

そんな中、先週は、
個展の中止をなぐさめる葉書やメールが何通も届き、
私を大いに勇気づけてくれている。

メール、LINE、Facebook、ブログ、
手書きの葉書など、
あらゆる手を使ってお知らせしたので、
中止を知った友人知人が心配して、返信をくれたのだ。

その中に「このようにコロナが蔓延していると、
家の中で制作するのが一番じゃないでしょうか。
一番幸せかもしれないです。来年、楽しみにしております」と
書いてきてくれた大学の同級生がいた。

個展が吹っ飛んでしまって、
制作意欲など湧くわけもないと思っていたのだが、
何もやることがなくてテレビかゲームしかない人もいるのに、
私には版画制作があったと
その葉書は思い出させてくれた。

大勢の人から「来年、楽しみにしている」と声をかけてもらい、
ようやく、ガックリうなだれていた私にも
じわじわと力が湧いてきた。

そうだ、新作に取り組もう。
余りある時間を制作に費やそう。

私にもその考えが浮かび、
次の作品のイメージも固まったので、
今日は新作の鉛筆原画と
トレッシングペーパーの原画を仕上げた。

新作の中で新たな試みも試してみようと思っている。

版画を創ること、これが私にとっての
前を見るということ。
やっとそれがわかった自粛の週末だった。

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