午前中に館内の仲通りギャラリーまで
友人の個展を観にいき、
その足で桜木町まで歩いた。
今日も天晴れな晴天で
歩けば汗ばむような日差しだった。
まずはブルク13という映画館で
お目当ての映画「あちらにいる鬼」の
チケットを入手し、
13時50分開始のその時間まで
ランチをとったり、ショッピングしたり
することにした。
ランチを外でとることは多いのだが、
大体はカウンセリングとカウンセリングの
合間だったりするので、
1000円が限度と決めている。
しかし、今日は仕事がらみではないので、
少し贅沢をしようと決めて、
牛タンの「利久」に行ってみることにした。
実は「利久」は最寄り駅のデパ地下にも
入っていて、
行こうと思えばいつでも行けるのだが、
やはり牛タンはそこそこの値段するので、
いままで暖簾をくぐらずにいた。
しかし、初めて食べた「利久」の牛タンは
とても柔らかくて弾力もあり、美味だった。
とりわけ、テールスープの味が秀逸で
気にいっている汐留の牛タン屋さんに
負けずとも劣らずのお味だ。
さて、肝心の本日の映画「あちらにいる鬼」だが
R15指定がかかっている大人向けの映画だ。
瀬戸内寂聴と井上光晴とその妻の間にあった
本当の話を元に、
井上夫妻の長女・井上荒野が書いた小説
「あちらにいる鬼」を映画化したものだ。
瀬戸内寂聴も物書きで
井上光晴も物書きで
その妻も実は少しはものを書く、
更にその娘・井上荒野も物書きなわけで、
そんな人間たちの実際にあった
現実のドロドロした男女の様を
つぶさに観察して書いた本なわけだから
面白くないはずがない。
映画では瀬戸内寂聴を寺島しのぶ
井上光晴を豊川悦司
その妻笙子を広末涼子が演じている。
監督・脚本は廣木隆一と新井晴彦だが、
寺島しのぶは「ヴァイブレータ」や
「やわらかい生活」などですでに組んでおり、
その映画作りへの姿勢は織り込み済みという
覚悟のほどがうかがい知れる。
つい昨年まで生きていた瀬戸内寂聴が
出家までして99歳で亡くなるまで
どんな風に生きていたのか
世間は皆、知っているだけに
役を通しても実際の出来事を生々しく
見せられているようで
想像をたくましくしてしまう。
映画のネタバレになるので
詳細は控えたいが、
映像としてはみはるが出家を決意し、
最後に篤郎と一緒にお風呂に入るシーンが
秀逸だった。
「髪を洗ってやろう」と篤郎が言い、
ふたりは向かい合い、数日後には剃髪される
肩の下まであるみはるの髪を
シャンプーのついた大きな手で
いとおしむように撫でている。
その後、剃髪のシーンでは
本当に寺島しのぶの髪にバリカンが入れられ
剃刀できれいに剃り上げられていく。
生きながらにして死んだはずのみはるだったが、
そんな僧侶になった後も
井上光晴とその妻との三角関係は続いたのだから
物書きというのは
おかしな人種だというしかない。
平成や令和にもそうした物書きがいるのか
私は知らないが、
いかにも昭和の物書き達の
常識を逸脱したドロドロさ加減と
破天荒さと達観と…、
そんな実在したお話の映画化である。
映画館は100名しか入らない小ぶりの会場だったが
ほぼ満席に近く、
多くのおじいさんとおばあさんが
観に来ていていささか驚いた。
70代80代の人にとっての
瀬戸内寂聴や井上光晴も気になるが
R15指定で濡れ場が満載のこんな映画を
どんな顔をして観ているのか
覗いてみたいような気持ちにかられた。
終映後、午後4時半のみなとみらいは
本日もほんのり夕焼けで
とても美しかった。
映画の中の蒸れたような空気を一掃する
清々しい風が海を渡り、
現実の自分はちっともドロドロしていなくて
もっとドラマティックだったらいいのにと
ふと思った。
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