10月半ばに釉薬をかけて、
本焼きに回していた器たちが焼きあがってきた。
今回は蓋のつく器が4種類もあった。
それらは釉薬をかける時に
かなりのテクニックを要したので、
ちゃんと焼きあがるか心配していた。
蓋のついた器は身と蓋を合わせた状態で
焼きに回すので、
電気釜の中で溶けた釉薬がたれて
冷えて固まった時にくっついて
蓋が開かないということになりかねないのだ。
今日の午後、まずは工房に到着してすぐに
所定の籠に入れられた器たちを取り出した。
なんと4つの蓋物すべてがすぐには蓋が開かない。
「えっ、どれもみんな失敗?もしかして」と
一瞬、目の前が暗くなる。
しかし、以前にもこういうことはあったので、
あわてず騒がず、
粘土を切る時に使う道具を
身と蓋の間に差し込み、
てこの原理でちょっと力を込めた。
するとほんの少しくっついていた身と蓋が
あっけなくはがれ、
蓋は4つとも無事に開けることができた。
まずは一安心。
今回は陶芸、つまり陶器で作る洋食器ばかり。
通常、洋食器は磁器で作られており、
こうした土ものの器ではない。
しかし、自らが決めた次のテーマが
「アフタヌーンティセット」だったので、
ティーポットやシュガー&クリーマー。
カップ&ソーサーにクッキープレート、
ボンボニエールやチョコレートプレート。
いずれも洋食器ばかりなので、
10年間の作陶期間で初挑戦のものばかり。
更に、「壁飾り」という課題も出ていたので、
そこのところはひいらぎのリースを
作ってみた。
こちらはちゃんと焼きあがってはきたが、
なんだか和風の渋いリースだ。
周囲のメンバーは褒めてくれたり、
「私、これ好き」などと言ってくれたが、
本人評価は「イマイチ」で
今のところ予想外の感じに出来上がった
とだけ言っておく。
予想外だったけど、
不思議な表情ではあるので、
じわじわと好きになるのかもしれない。
そんな風に
作り手自身の想像もしなかった風に
本焼きが焼きあがることは
よくあることで、
それが陶芸の面白みともいえる。
とにかく、蓋の付いた器が
使える状態に焼きあがっただけで
今回の焼成に関する心配が杞憂に終わり、
まずはホッとしたことだけは間違いない。
しかし、作ったものすべてが
使うに値するかというとそうでもなく、
実はカップ&ソーサー2組と
小さなチョコレートプレートは
デザインがダサすぎて写真にも撮ってもらえず
自宅のゴミ箱に直行した。
版画と同じで、世の中に出せないような
駄作を産み出してしまうこともあり、
そういう時はドラマで見る陶芸家のように
器を割ったりはしないが、
私の場合、見なかったことにして
即効、この世から抹殺する。
手間暇かけてもったいないとは思うが、
「ものつくり」としてのプライドは
守らなければいけない。
本日の出来高は
100点満点の70点あたりか。
抹殺決定で、本日、仕切り直して作陶した
カップ&ソーサーとチョコレートプレートの
素焼きが出来てくるのは
次回の作陶日。
釉薬をかけて本焼きが焼きあがるのは
2023年の1月。
版画も陶芸も工程はいろいろあって
出来上がるには日にちがかかる。
そこには「ものつくり」にしか
わからない喜びと苦悩があり、
時にはしょーもない駄作を
産み出してしまうこともあるのだ。
やれやれ。
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