2023年4月24日月曜日

1年分の作品撮影

 
















今日は、昨日、旅行から帰ってきたばかりなのに
自宅で作品の写真撮影があった。

幸い、ダンナはゴルフで早朝からいなかったので、
お気楽な気分で
バタバタと家中の片づけをしたり
撮影する1年分の作品を出したりして、
何とか午後イチの撮影に間に合わせることができた。

例年、大体この時期に
作品の撮影は行っていて、
フォトグラファーのH氏がはるばる
さいたま市から車で家まで来てくださる。

ここでプロに撮影してもらうのには
訳がある。
撮影した作品はCDに焼いてもらうのだが、
6月の紫陽花展のDMに間に合わせるための
締め切りはゴールデンウィーク明けだし、
その次は9月初めの文学と版画展、
更に10月団体展のカタログ用として
7月末にはCDーRomを送らなければならない。

いずれも精度の高い写真を要求されているので
スマホで私がちゃちゃっと撮るわけにもいかず
このH氏による作品撮影が
私の1年間の作品の記録会という
意味合いにもなっている。

ちゃんとした画像は
毎年のグループ展や団体展はもちろん、
何年かに1度の個展のDMにも必要だし、
将来、画集を作るなんていう時に
慌ててぞろぞろ昔の作品を出してきて
一斉に撮影しなくてもいいように
毎年、こうして撮影をお願いしている。

まあ、そんな時がいつ来るのやらという
気はするが…。

撮影はいつも多少は私も助手役をするので
さくさくと進み、
今日も1時間半ほどで撮影自体は終了した。

あとはお茶とお菓子でおしゃべりタイムだが
今回は自分で造った器で
お茶とクッキーをお出ししてみた。

3色かけ分けの湯飲みに大福茶、
例のマンガンとナマコという釉薬をかけた
新作の小皿に2種のクッキーを入れてみたが、
これがとても映りがいい。

あんまり何を入れるか考え無しに造ったが、
以前、大福もよく合っていたし、
今日のクッキーも紺に白いお菓子が
映えていると自画自賛。

H氏とも陶芸の話で盛り上がり、
他のケーキ用の大皿やマンガン釉の大鉢
3色かけ分けの小鉢なども出してきて
版画家の忙しいその他の日常が
徐々に種明かしされた。

また、以前、撮影された作品が
どんな風に本の装丁になったのか
文学と版画展に出品した何冊かの本も
お見せしたところ、
「素人はこういう使われ方の方が分かりやすい」と
とても興味を示してくれたので、
思わぬ形で私の仕事や趣味がどのように
展開しているのかお話しすることになった。

実際には版画を創っても
なかなかお金にはならないし、
陶芸も家中にごろごろ器ばかりが増えていくけど
こうやってあれこれ並べてみると
好きなことを続けられて贅沢な暮らしだなと
思う。

私の好きなものと好きなことには
自分なりの整合性があるのだから
それをうまく組み合わせて、
美味しくお茶を飲んだり、
料理を盛って楽しめれば、
それが豊かな暮らしなのではと
実感する。

今日も忙しい1日だったけど、
ちょっと一息ついて
まだ未使用の器に今晩のおかずを
盛り付けてみようかな。
そんなことを思った夕暮れ時である。































紀伊半島 世界遺産の旅

 


40年来の古い友人と
3泊4日のツアー旅行に行ってきた。

タイトルは
「天空の聖地高野山と熊野三山
伊勢神宮大社参拝
7つの世界遺産構成資産と
絶景の紀伊半島4日間」
という長~いタイトル。

要は高野山と伊勢神宮と熊野大社
いずれも世界遺産のビッグな
聖地ツアーということになろうか。

食べることより何より
日本を代表する神社仏閣に
お参りするツアーということである。







初日。
まず、飛行機で関空まで飛んだ。
途中、眼下に雲海に浮かぶ富士山の
神々しいお姿を臨み、
いよいよこの旅が神聖なものだと感じる。

関空にはご一行様を乗せる赤い大型バスが
待っていて、添乗員さんや4日間を共にする
メンバー37名と合流した。

最初の聖地は高野山。
今年は高野山の開祖・弘法大師の生誕1250年
記念の年。
50年に一度の記念行事も数々行われるらしい。
次の節目の年には私は生きていないので
そんな大事な年ならばとお参りすることに。
これが生まれて3度目の高野山詣でである。

今回は高野山の奥の院といって
弘法大師が今も瞑想をしているというお堂と
(日に2度、僧侶がお食事も届けている)
壇上伽藍といって修行のためのいくつかの
お堂や鐘楼など、
あまり通常のツアーではいかない場所も
含まれていた。

更に、赤松院という高野山の宿坊が
1日目のお宿で、
修行僧と同じような精進料理をいただき、
ふすま1枚で隔てられた質素なお部屋で
泊るというのはめったに出来ない体験だ。

働いている人たちも作務衣姿の男性が多く、
座禅こそ組まなかったが
ちょっとお寺の修行に来た気分。

お坊さんの修行のひとつとして
毎朝作るという胡麻豆腐もいただき、
その独特の粘りに厳しい修行がうかがわれる。

1回目に高野山に来た時は高校2年生で
友人とふたり、その時も宿坊に泊ったが、
この時は胡麻豆腐がどうにも食べられず
友人に助けてもらったことをよく覚えている。

今回はおとなになって胡麻豆腐の味も分かり、
次の日、お土産に購入したほどなので、
少しは人間修業ができたのかもしれない。











2日目。
雨の予報を覆し、
額に汗するほどの暑い1日。
お天気もピーカンで
さすが晴れ女の面目躍如。

この日のメインは伊勢神宮だったのだが、
その前に二見ヶ浦の夫婦岩と天の岩屋に
立ち寄ったので、
天の岩屋に投げ縄を投げる真似をして
天照大神様に上天気のお礼を申し上げた。

伊勢神宮は外宮と内宮の順にお参りした。
玉砂利を踏みしめ新緑の参道を歩くと
清々しい風が吹き渡り、
何だか心が澄み渡ってくる。

帰りにおかげ横丁で
赤福本店の赤福氷をいただいた。
これがことのほか美味で、
歩き疲れた体に赤福と同じこしあんが甘く、
白玉がもっちりとし、
そして抹茶のかかったかき氷が
喉をうるおし、つくづく
日本人に生まれてよかったと思った。















3日目4日目は紀伊半島を南下し、
熊野三山と那智の滝を制覇。

世界遺産構成資産としては
鬼が城という奇岩群も含まれる。
そこでは自然の作り上げた造形に驚き、
紀伊半島の雄大な自然を満喫。

バスは海岸線をひた走り、
1日の走行距離は毎日250㎞を超えた。

熊野三山とは熊野速玉大社と
熊野那智大社と熊野本宮大社を指し、
3日目に最初のふたつをお参りした。

とにかく熊野大社をお参りするには
階段を登らなくてはならない。
速玉大社はさほどのことはなかったが、
本宮大社は160段ほどあるし、
那智大社にいたっては460段もある。

私はもう心臓がバクバクいうほどしんどくて
めまいで転げ落ちるのではと
怖くなるほどだった。
友人は日頃から鍛えているので
すたこらさっさといけるので羨ましい。

ただ、たどり着いた先には本当に立派な
お社があって、
霊験あらたかな気持ちになる。
日差しが眩しく、空気が爽やかで美味しい。

熊野大社に来るのは2度目なのだが、
以前来た時は那智の滝は行けなかった。
今回は工程に組み込まれていたので、
その勇壮な滝のしぶきを浴びることができ
やはり何だか神々しいものを感じた。

熊野大社の守り神は八咫烏なので
のぼりはもちろん
おみくじやポストまで
八咫烏をモチーフにしたものがある。

友人も私も八咫烏のおみくじをひき、
それぞれ今の自分の気持ちに寄り添う
いい言葉をいただき、
心をリセットできた。

私は高野山で今年だけしか作っていないという
蓮のはなびらの形に
弘法大師様が描かれたお守りも求め、
お参りに明け暮れたツアーが無事、終了。

おみくじによれば、
私が今もっとも大切にしなければならない
言葉が「癒」だそうで
吉でも凶でもなく
自分の原点を見つめ、
日々を大切に生きなさいということらしい。

何かとあれこれ抱えて忙しい毎日。

人の3倍生きてるなんて言われて
いい気になっているけど、
歳も考え、もっと健康に留意しなさいという
教えにちがいない。

早々に忙しい日常が戻ってきてしまうけど、
ぼちぼちでんなの精神で
ほどほどを心掛けるとしよう。

そんなことに気づけた
癒しの4日間だった。
















































2023年4月14日金曜日

3回転目の本摺り

 


















いよいよこのポストの作品も3巡目。
今回はこのポストが今も現役だということを
テーマにしてみた。

タイトルは「鎌倉のポスト」

前回と何が違うかというと
前回は「あじさい便り」というタイトルで
紫陽花の花に目がいくように作った。

しかし、今回は紫陽花の色彩は
控えめにし、
背景に溶け込ませてみた。

これまでも男の子が学校帰りに
水溜まりで遊んでいる構図の時は
水遊びにフォーカスしたり、
学校帰りであることにフォーカスしたり、
同じ構図でも
着眼点を変えて作ってきた。

今回は男の子のものとおぼしき
青い傘が共通のモチーフで描かれて、
1作目と2作目が連作であることを
示している。

そして、ポストの立てかけられた
傘の忘れ物にフォーカスしたり、
紫陽花の時期に届く手紙に
思いを馳せたりした。

最後はポストそのものがメインモチーフで
鎌倉市ではこのオールドスタイルの
ポストが町中にあって
現役のポストとして活躍中だということを
テーマにしている。

版は写真にあるように
両面彫りで版木1枚だけ。
版数はいろいろ取りまわしているので、
15~16版はあると思うが、
版木としては1枚だけで
6通りの作品を摺ったことになる。

(版はカギ見当とひきつけ見当の1組で
1版、2版と数える)

今までだったら、2点の作品、
しかも雨部分なども共通で彫ることはないので、
2点分だとしてももっと版木を必要としていた。

今回の試みで
いろいろ思うところがあったし、
とても勉強になった。

物価高で和紙も絵具も版木も
全てのものが高騰している今、
版数を落とし、
和紙の白の美しさを利用し
もっと賢く作品作りをすることを考えねば。

3巡目のこの作品は摺る枚数さえセーブし、
5枚しか和紙を準備しなかった。
途中で、
試し摺りとは違う色を何か所か使ったため、
結局、1枚は途中でボツにしたので
4枚だけしか仕上がらなかった。

まあ、タンスの肥やしをそんなにたくさん
作っても仕方ないので、
このぐらいの枚数がほどがいいのかもしれない。

自分の体力に見合った枚数だけ摺って、
無茶を信条とするのはもう辞めよう。

これが2日前に誕生日を迎えて
またひとつ歳をとり、
実感したことである。

腹八分目
何ごともほどほどに。
細く長く続けるコツは
こういうことかなと学んだところである。
(遅!)