2023年6月28日水曜日

「映え」を狙って

 







1週間、時間が経つのは本当に早い。
今週も火曜日になり「ばぁばご飯」の日になった。

今回の「ばぁばご飯」は
娘が出社だったので、孫たちは保育園だし、
ひとりで留守宅に入り込んで
自由気ままに料理するというパターンだった。

12時過ぎに到着し、ランチを済ませ、
おもむろに冷蔵庫から食材を取り出す。
必要なものを全部カウンターに出し、
冷蔵庫にメニュー表のメモを貼り、
どんな順番に作るか考える。

何種類かずつある鍋やフライパン、
ザルやボールも見えるところに出し、
どの料理にどの調理器具を使うか考える。

今回もいつものように
汁物から作ることにした。
「けんちん汁」だ。
なぜなら、切る野菜や肉の種類が多いから。

9品のリクエストの内、
3時半ぐらいまでに6品か7品作り、
そこでテレビを見るなり、お昼寝するなり
コーヒーブレイクをとる。

3人が帰宅するのは5時半なので、
4時半ぐらいから
炒め物を炒めたり、揚げ物を揚げたり
熱い方が美味しいものの仕上げに入る。

今回は家のバナナが痛みかけていたので
急遽、
バナナケーキを焼いて持ってきていたので
合計10品の豪華な食卓だ。

5時15分にはすべての料理をテーブルに並べ、
最後は写真撮影会だ。

まずは椅子の上に立ち、
俯瞰で全体像を撮る。

次に1品ずつ。

そして、最後はテーブルの周囲を回りながら、
多少、器の位置を変えたりして
しずる感のある「映え写真」を狙う。

大体、そういう時は汁物の大きな鍋は邪魔なので
それ以外の皿や大鉢を、美味しそうに見えるよう
色合いや季節感を考え、アップで撮ることが多い。

上の写真も同じように見えると思うが、
よく見ると
テーブルの周囲を回りながら撮っているので
手前にいる料理が違う。

「映え」狙いとしては
「バナナケーキ」のボリューム、
「卵の巾着」の黄色と白、
「キャロット・ラぺ」のオレンジ、
「ささみとセロリのマリネ」の季節感あたりを
どう配置すればいい感じになるか。

そんなことを考えながら
スマホを構えてテーブル越しにかがみこんで
シャッターを切っている。

なにしろ、孫たちが帰宅すると
急に賑やかになって
手や足を洗い、着替えて、
保育園であった話を聴き、
覚えたダンスを披露するなど、
映え写真を撮るどころの騒ぎではなくなる。

もちろんそれはそれで楽しいのだが、
料理はひとつの作品だと思っているオーママは
嵐がやってくる前の静けさが勝負の時。

というわけで、
ほとんど同じに見える写真も
これぞという1枚を狙って何枚も撮ったという
「ばぁばご飯」の舞台裏のお話である。













2023年6月20日火曜日

今夜のばぁばご飯は肉祭り

 























紫陽花展が終わったと思ったら、
待ったなしでオーママのミッション
「ばぁばご飯」の日がやってきた。

最終日の日曜の夜、
搬出した作品群が家に戻る前に、
娘からリクエスト・メニューが送られてきた。

見るともなく見て、
月曜日は陶芸工房に籠っていたので、
火曜日の今日になって
ようやくばぁばモードに切り替わった。

それでも午前中にはカウンセリングがあり、
仕事人としてのミッションは片づけての
登板だ。

よくよくメニューを見てみると、
今回は魚料理はなし。
夏場に子どもも食べられる美味しい魚は
確かにないかもしれない。
まさか鮎なんていうわけにもいかないし。

というわけで、本日のばぁばご飯は
「肉祭り」

チーズ・イン・ハンバーグ
豚ロースのソテー 野菜のせ
パリパリチキン
の3種

もちろんバランスは考えて
他に
カボチャの煮物
ほうれん草のクリームスープ
大根とじゃこの和風サラダ
山芋ときゅうりの中華サラダ
海苔巻き卵焼き
そして、
ズッキーニのアンチョビ・フライ
以上9品

新ネタはズッキーニのアンチョビ・フライ
アンチョビの入ったつけ汁に
ズッキーニを漬け込み、
片栗粉をまとわせ揚げたものだが、
これがビールにピッタリの味で
美味だった。

孫たちはズッキーニには目もくれず
自分のリクエストしたものに飛びついていたが
娘と私はビール片手に
新ネタにかぶりついた。

これはこの夏のヒットメニューになる予感。

娘達ファミリーは
ちゃんと紫陽花展にも来てくれてはいるが、
孫たちにとって
私はお絵描きの人ではなく
ばぁばご飯の人であろうから
その期待に応えて
これからも美味しいものを作ろうと思う。

子育ては20年ものの大がかりな制作だ。
1食1食が子どもの体と心を育てると思うと
応援しなければと思う
健気なオーママであった。














































2023年6月19日月曜日

釉がけは体力勝負

 








18日の日曜日、
無事に今年の紫陽花展が終了した。

今回はけっこう精力的にDMを郵送したり、
手渡ししたので、
かなり多くのお客様に来ていただいた。

中でもトピックスは
もちろん56年ぶりに実家の番頭さんが
川越から訪ねて来てくれたことに尽きる。

その他のお客様は、
コロナを境に親交が途絶えたママ友関係や
絵画教室関連の方々がいらっしゃらなくなり、
そんな中でも関係のあった方、
パティシエ学校やお茶のお稽古、
陶芸工房の皆さんなど、
目下、お目にかかる機会のある方にとって代わって
きているということは言えるだろう。

人生は「袖振り合うも他生の縁」というが
本当に他生の縁があった方だけが
残るのであって
大概はお目にかからなくなると
ご縁も途絶えてしまうようだ。

そう考えると56年ぶりの再会は
一体どんなご縁だったのか。
大切にしなければいけないご縁かもという気が
今更ながらしてくる。

さて、昨日は長女ファミリーが例年通り
にぎやかにやってきて、
紫陽花展のメンバーも温かく迎えてくださった。

現在4件目のギャラリー、画廊・楽に
移った年に孫1号が生まれたから
ここでの開催は早6回目ということになる。

約四半世紀続いたグループだが
最長老のKさんが今回で卒業ということだ。
私も最古参のひとりなので、
寂しい限りだが、
御年83歳というから、
そろそろ引き際と考えるのもむべなるかな。

ともあれ、ゆるゆるとメンバーチェンジが
ありつつもひとつのグループ展が
ここまで長く続いていることに感謝したい。

さて、一晩寝て、
今日は先週の土曜日にするはずだった
陶芸工房の釉がけの日だ。

土曜日は展覧会場に詰めていたので、
今日は振り替えてもらった作陶日だ。

月曜の午後のメンバーは
会ったことのない若い女性ひとりと、
やはり振り替えたという同じ年恰好の女性だった。

若い女性の方は
入会して間がないらしく、
釉薬をかけるのはこれが2回目。
もうひとりは今回は釉がけの作品はなく、
削りの作業のために来たという。

今回、私は数を数えるのももどかしいほど
大量の素焼作品が焼きあがっている。
しかも釉薬の色数も5色を予定している。

これはとてもひとりで攪拌して
釉がけして3時間半で終えられる量ではない。

2回に分けるのもやむを得ないと覚悟して、
まずは
月曜日の午後にお邪魔することにした。

先生に嫌味を言われるのが分かっていたが
午後クラススタートの13時半より30分早く
工房入りし、
案の定、先生が何か言ったが聞こえないふり。

とにかく一刻も早く作業に取り掛からねばと
机の前に器を広げた。

通常、4人で作業する机がひとりの作品で
いっぱいになってしまうほどだったから、
いつもの土曜日にお店を広げなくて正解
だっかもしれない。

定刻にやってきたその若い女性は
まだ何色の釉薬にするか決めてないというが
幸い私が予定していた5色の釉薬の内、
2色を選んでかけると言ってくれたので、
攪拌をお願いすることができた。

もちろん残る3色は自分で攪拌するわけで
それだけで1色20分、3色で計1時間、
釉薬の入った大きなバケツの前で
思い撹拌機を持ってじっとしていなければ
ならない。

釉がけの作業は
まずは器の余分なチリや細かい粘土を落とし、
スポンジで水洗いし、
撥水剤を高台など、釉薬がついて欲しくないところに
塗ってはじくようにする。

それから床に新聞紙を敷き詰め、
釉薬を攪拌し、
じゅうぶん滑らかになったら、
釉薬を器にかけ、乾くのをまって
撥水剤を塗った部分についた釉薬を落とす。

若い女性が今回釉薬をかけるのは
たったの3つの湯飲み。

ちなみにもう一人の女性は
削りの作業の器がふたつだけ。

なのに私は一目では数えきれないほどの数が
大小、箸置きの12個も含めると
30個以上ある。

しかも、その内ふたつは蓋の付く箱ものなので、
釉薬が流れ出して、身と蓋がくっつかないよう
細心の注意が必要だ。

先週、画廊に来てくれたいつもの同じ曜日の
メンバーたちが
口々に「あの量は1回じゃ無理よ」というので
無理はしないと誓ったものの
心の片隅では30分早くいって何とか
5時までに全部釉がけしてしまいたいと
思っていた。

結果的には
2色、新人さんが攪拌をしてくれたので
自分は3色で済んだので、
何とか全部にかけ終え、
高台を拭く作業、道具の後片付け、
工房の掃除まで終えることができた。

その間、水を1滴も飲まなかったことに気づき、
ちょっとまずいなとは思ったが、
体力と気力の限りを尽くして
すべての器に釉薬をかけ終えたので、
自分との内なる勝負に勝ったことになる。

きっと次女は無茶する母を叱責するだろうが、
詰まった予定の中で
もう1日釉がけのために出かけてくるのは
大変なので、
やり終えて正解だ。

帰宅後は
当然のごとく夕飯が出てくると思っている
ダンナには文句を言わせないだけの
ものは作り、
今夜のスプリングバレーのビールは
ひときわ五臓六腑に染みわたった。













2023年6月14日水曜日

56年ぶりの再会

 














紫陽花展の3日目、
今日はとても嬉しいことがあった。

久しく会っていなかった「マサちゃん」が
会場に訪ねてきてくれたのだ。
なんと56年ぶりの再会だ。

私の実家は呉服屋を営んでいたのだが、
父と母は当の昔に他界しており、
呉服屋自体も誰も継がなかったのですでにない。

マサちゃんは私が3歳の時から約10年、
番頭さんとして働いていてくれた人だ。

記憶に薄いのだが
確か私が私立の中学受験をし、
合格したのを見届けたかどうかというあたりで
ある日、ふっつりいなくなってしまった。

だから、それ以来消息不明で、
子ども心に「何かあったのかしら」とは
感じていたが、
親に訊くこともできずに
それ以後、会うことはなかった。

それがどういうルートか、
ある日突然、私のいとこから連絡があって
彼に仲介してもらい
マサちゃんと電話で話すことができたのが
2年前。

そこから更に時は過ぎ、
今回、紫陽花展の案内状を送ったので、
川越からはるばる展覧会を観に
来てくれたというわけだ。

呉服屋の番頭さんだったわけだから、
私も着物でいこうと決め、
この季節限定の紗袷の着物を準備した。
水曜日の天気予報は雨だったけど、
なんとか雨は落ちてきていない。
(結局、雨は降らずじまい)

11時半ごろと約束して会場で待っていると
画廊の中を覗き込む着物姿の男性が…。

なにしろ56年ぶりか57年ぶり。
顔の印象はうっすら残っているものの、
その間の
お互いの変貌ぶりはいかばかりか。

それでもドアを開け、入ってきた男性に
「マサちゃん?」と声をかけると
男性は声にならない声でうなづき、
みるみる大粒の涙が頬を伝った。

まるで映画の1シーンのように
時が止まり、
温かい空気に包まれた。

紫陽花展の仲間のEさんがもらい泣きしながら、
何枚も写真を撮ってくれた。

やはりマサちゃんも着物で来てくれたので
私も着物でお迎え出来て、正解だ。

それから、ゆっくり作品を見ながら、
昔話と行きつ戻りつしながら、
最後は作品のひとつがお嫁に行くことになった。

昔話の続きは和食レストランに場所を替え、
いつまでも続いたが、
マサちゃんの口から次から次へと出てくる
私の幼稚園の園長先生やピアノレッスンのこと、
小学校の時の友達の名前や
受験の時の勉強の話など、
その克明な記憶力には本当にびっくりした。

私にとって幼少期の記憶というのは
父と母が他界し、実家もなくなった今、
本当に頭の中だけのかすかなものになっていて、
リアルな思い出では決してない。

まして、それをアルバムを見ながら語り合ったり、
思い出して話題に出来る人はいないので
本当にこんなことがあるなんてと思う
驚きに満ちたひとときだった。

とうわけで、人生、長く生きていると
こんなにいいことがあるんだ。
今日はそんな風に思えた大切な1日である。











2023年6月12日月曜日

第23回 紫陽花展

 



















本日6月12日(月)より
関内の画廊・楽にて
第23回の紫陽花展が始まった。

展示は昨日の夕方5時からで
今回はなんだかんだ少し位置が決まるのに
時間を要し、
作業半ばでメンバーの記念写真だけ撮って
7時過ぎに解散になった。

というのも、
今回の展示で「卒業式」を迎える最長老のKさん、
新入会のOさん、
そして他のメンバー全員が揃うのは
搬入の時か搬出の時ぐらい。

写真を撮るなら、
搬出は意外とバタバタ片づけて
あっという間に散ってしまうので、
搬入の時の方がいいということになった。

第1回から参加のKさんは
約四半世紀の長きにわたり、
展覧会を盛り立ててくださった。

80代半ばに差し掛かり、
遂に卒業。
仕方ないとも思うし、
もうあと少しご一緒にとも思う。

長いこと続くグループ展には
こうした
メンバーチェンジは時折あることだが、
いつも切ない思いがする。

今回、私の作品は大小合わせて8点。
内6点を1列に横並びに並べたかったので、
長い壁が欲しくて、
玄関入ってすぐ左手の壁に飾ることになった。

この位置は今までで初めての位置である。
画廊の中の位置としてはいい位置とは言えないが
小ぶりの作品を6点ぎゅう詰めにして
更にあと2点も一列に並べたかったので
しかたあるまい。

この6点は実験的試みで
2点分の版木の計18版の内、
いかに少ない版で1点の作品として成り立つか。

創った版を全部摺るのが当たり前だった
自分の摺りのルールを打ち破り、
摺らない版をあえてつくるという
初めての作品群である。

決して摺りの途中経過を示すものではないので
それぞれに独立したタイトルもついている。

つまり「シンプルな昔ながらのラーメン」と
「具を全部のせにしたラーメン」と
「その真ん中あたりのラーメン」と
あなたはどれがお好みですかみたいな
問いかけである。

初日の今日は遠方からきてくださった友人と
早めの予約でイタリアンのランチを採り、
13時からの開始と同時に会場入りした。

まずはひとり目のお客様である友人が
「私はこれが好き」と
ポストの作品の「昔ながらのラーメン」に
1票を投じ、赤丸印をつけてくれた。

その後も夕方まで
引きも切らず友人が訪ねてきてくれたが
総じて「シンプルな昔ながらのラーメン」の方が
「こってり全部のせ系ラーメン」より好評で、
「何なのよ、私の苦労は…」という
結果になった。

版画家生活40数年間、
色数も版数も多くて
彫るのも摺るもの大変なものを良しとする
感覚に「喝!」を入れられたような気分だ。

これからあと6日。
皆皆様の意見に謙虚に耳を傾け
今後の制作に生かそうと思う。

今回の大きな2点の全部のせ版画への反応も
注視しながら
終了後の新作の構想を練るつもり。

なかなか版画制作のマンネリ化を打破できずに
いたけれど、
今回の実験的試みには
本当に多くのご意見ご感想をいただけそうなので
残りの会期が楽しみである。

いつのまにかあれこれ着飾りすぎた自分の
版画制作スタイルにも
「断捨離」の時が来たのかもしれない。