2023年6月14日水曜日

56年ぶりの再会

 














紫陽花展の3日目、
今日はとても嬉しいことがあった。

久しく会っていなかった「マサちゃん」が
会場に訪ねてきてくれたのだ。
なんと56年ぶりの再会だ。

私の実家は呉服屋を営んでいたのだが、
父と母は当の昔に他界しており、
呉服屋自体も誰も継がなかったのですでにない。

マサちゃんは私が3歳の時から約10年、
番頭さんとして働いていてくれた人だ。

記憶に薄いのだが
確か私が私立の中学受験をし、
合格したのを見届けたかどうかというあたりで
ある日、ふっつりいなくなってしまった。

だから、それ以来消息不明で、
子ども心に「何かあったのかしら」とは
感じていたが、
親に訊くこともできずに
それ以後、会うことはなかった。

それがどういうルートか、
ある日突然、私のいとこから連絡があって
彼に仲介してもらい
マサちゃんと電話で話すことができたのが
2年前。

そこから更に時は過ぎ、
今回、紫陽花展の案内状を送ったので、
川越からはるばる展覧会を観に
来てくれたというわけだ。

呉服屋の番頭さんだったわけだから、
私も着物でいこうと決め、
この季節限定の紗袷の着物を準備した。
水曜日の天気予報は雨だったけど、
なんとか雨は落ちてきていない。
(結局、雨は降らずじまい)

11時半ごろと約束して会場で待っていると
画廊の中を覗き込む着物姿の男性が…。

なにしろ56年ぶりか57年ぶり。
顔の印象はうっすら残っているものの、
その間の
お互いの変貌ぶりはいかばかりか。

それでもドアを開け、入ってきた男性に
「マサちゃん?」と声をかけると
男性は声にならない声でうなづき、
みるみる大粒の涙が頬を伝った。

まるで映画の1シーンのように
時が止まり、
温かい空気に包まれた。

紫陽花展の仲間のEさんがもらい泣きしながら、
何枚も写真を撮ってくれた。

やはりマサちゃんも着物で来てくれたので
私も着物でお迎え出来て、正解だ。

それから、ゆっくり作品を見ながら、
昔話と行きつ戻りつしながら、
最後は作品のひとつがお嫁に行くことになった。

昔話の続きは和食レストランに場所を替え、
いつまでも続いたが、
マサちゃんの口から次から次へと出てくる
私の幼稚園の園長先生やピアノレッスンのこと、
小学校の時の友達の名前や
受験の時の勉強の話など、
その克明な記憶力には本当にびっくりした。

私にとって幼少期の記憶というのは
父と母が他界し、実家もなくなった今、
本当に頭の中だけのかすかなものになっていて、
リアルな思い出では決してない。

まして、それをアルバムを見ながら語り合ったり、
思い出して話題に出来る人はいないので
本当にこんなことがあるなんてと思う
驚きに満ちたひとときだった。

とうわけで、人生、長く生きていると
こんなにいいことがあるんだ。
今日はそんな風に思えた大切な1日である。











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