銀座の柴田悦子画廊にて
5月20日から26日まで開催されている
「大坪奈古展」に行ってきた。
実は私はあまり人の展覧会を見に行かない。
なぜかというと、
自分が作品を作ることは好きだが、
人の作品を見てもあんまり感動しないから。
しかし、大坪奈古さんの作品は
一度、本物を観てみたいと思っていた。
大坪さんは友人の日本画家のお友達という
関係で少しだけお話したことがある。
彼女の作品は段ボールを使った
カラフルな立体作品であることだけは
知っていたが、
それ以上のことは知らなかった。
しかし、今週の柴田悦子画廊のことを
Facebookにアップしている人が
何人かいて、
「これは実物を見なければ」という気になった。
幻の満月村にある奇天烈な建物と
その住人たちの気配を段ボールで造形する
「奈古ワールド」
新作の「魚征」というお魚屋さん。
「魚征」は満月村猫魔山塊の麓に竣工した。
早朝に届く魚は、客人の望み通りに調理される。
長い回廊の食事処を抜けた奥には
昨年、奇跡のように湧き出した温泉が。
壁面のタイル画は満月村の山河。
心身共に温めてくれるだろう。
と、DMにはある。
他にも「猫バス」や「観覧車」など
画廊に所狭しと繰り広げられる
独特な世界。
引きで観ても圧巻だが、
寄りで観ても笑っちゃうほど
中身がぎっしり詰まっている。
どこを切り取って写真を撮ろうか、
きりがない。
しかし、いたって本人の奈古さんは
のほほんとした雰囲気で
「私1枚も写真を撮ってないの」と
どこ吹く風。
「ねえねえ、ここを入るとお食事処になってて
お魚料理のメニューが書いてあってね。
犬や猫やうさぎがね…」
と、説明のおしゃべりが止まらない。
「その奥には温泉が湧いているお風呂があって、
こっちが脱衣所でこっちがトイレ。
縄文式のトイレがいくつもあってね、
猫用犬用ウサギ用なの…」という具合。
毎日毎日、アトリエに籠って
次から次へと湧き出るアイデアを
段ボールと紙粘土で形にしていく。
アトリエ中が生み出した段ボールのおうちや
遊具でいっぱいになって、
「どうしよう~」「どうやって持っていこう」
「これ帰ってきたら、置くとこな~い」と
なんだか嬉しそう。
大体、長年、制作していると
「そろそろ断捨離しなきゃ」とか
「どんだけ制作しても、いずれ皆ゴミだからね」
という話はよく耳にするが、
奈古さんは可愛い声で
「そうだよね~。困っちゃうよね~」と
言いながら、
その溢れる創作意欲に任せて
これからも作品を生み出してくのだろう。
私も最近は版数を制限し
色数も抑えて、
断捨離とまではいかないが
なるべくシンプルでスマートにと
心掛けている。
その点、奈古さんは真逆のスタイルで
隙間なく、細かく、愉快に
どこどこまでも
自分の世界の住人達で満員御礼にしていく。
ふと見ると
私が大好きな「猫バス」の作品に
赤い丸のシールが貼られていた。
とある事務所にお嫁入りが決まったとか。
他にも壁にちょこっと飾れるぐらいの作品には
いくつも赤丸のシールがついていたが、
かなりの大きさがある「猫バス」の
行き先が決まったのは本当によかった。
「奈古ワールド」のファンは
次の作品も楽しみにしているだろうから、
それにはアトリエに次の作品用のスペースが
あって、
尚且つ、奈古さんの制作へのモチベーションが
上がることが肝要だ。
そんな心配はいらなさそうな奈古さんだったけど
同じ作家仲間のひとりとして
いつまでも楽しく、
夢中になって作品に取り組んでほしいと思う
素敵な作家さんだった。
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