2024年11月18日月曜日

「むくげ」の作品 本摺り

 


























昨日と今日の丸2日かけて
新作の本摺りをした。

先月は「蓮」の花だったが
今回は「むくげ」の花。

初めて摺る「むくげ」の花はかなり手強い相手。
どこが手強いかというと
木版画で白い花を摺ることが難しいから。

白い花の影をグレーにしてしまうと
たちまち石のように硬い感じになる。

プレバトの鉛筆画の先生ではないが、
影といえばグレーと決めつけると
味気ないし、硬くなるので
そのものの質感を考慮して他の色を使う。

先週、試摺りをとりながら
今回は紫を使った柔らかいグレーと
淡いピンクを使い
花の陰影を表現することにした。

更にパールホワイトという絵具を混ぜて
2版目にさらに3色のせ、
花の地模様とでもいうべき表情を出してみた。

「むくげ」の作品をなぜ手掛けたかというと
来年の「文学と版画展」に出す
装丁に使おうと思ったからというのが
直接的な理由だ。

来年の9月初めの展覧会のために
1年も前から準備するのかと
思われるかもしれないが、
まず、どの本の装丁にするか決め、
そこに登場させる花の時期によっては
取材が必要だからだ。

むくげは夏の花。
それを使うとなったら、
来年の春になって取材しようと思っても
夏の花はまだ咲いていない。

かといって
8月に咲く花を待っていたのでは
その年の9月初めに作品が間に合わない。

というわけで、
結局、今年の8月に取材したものをデザインし
8月下旬から彫りだし
順番からいって、むくげを蓮の作品の後にしたので
11月になって試摺りと本摺りになった
ということである。

来年の文学と版画展に出したいという理由の
他にも
「むくげ」には思い入れがある。

お茶の世界で
夏の茶花の代表が「むくげ」である。
冬の代表は「椿」

「むくげ」と「椿」は両横綱というか
東西の女王様なのだ。

いずれも茶室の床の間に
一輪、ポンと活けてあるだけで
場の空気が引き締まり、華やぐ。

そんな格調高い花が「むくげ」である。

また、「むくげ」は韓国の国の花でもある。

来年、装丁に使おうと思っている本は
「利休にたずねよ」なのだが、
そこに出てくる韓国から売られそうになって
やってきた女性を
利休が救うというお話で
その中で
「むくげ」がとても象徴的に登場し
印象深い花なのだ。

韓国から日本に渡ってきて
「唐物」といって
珍重されている茶器もあるように
「むくげ」はある意味、
日本と韓国との橋渡し役でもある。

わたしも40年以上の長きにわたって
お茶のお稽古をしてきたので、
むくげの花を作品で手掛ける意義を感じている。

白い花は難しいからと苦手意識で
遠ざけてきたところがあるが、
ここでひとつ正面からぶつかって
自分のものにできたらという思いで
今回のテーマに挑戦してみた。

なんだか加賀友禅の着物みたいな感じに
見えなくもないが、
皆さんにどのような感想をいただけるのか
楽しみにしている。




















































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