今日は木目柄の千代紙を12枚摺った。
以前から何点か創っているオブジェ(立体)に使う木目柄の作品である。
木版画は木版の版が1点あれば、何十点でも何百点でも摺ろうと思えば摺れる。
事実、浮世絵は江戸時代、何十何百と摺り増されて、
いわば印刷物として流通していた。
現代の芸術作品としての木版画は、エディションナンバーといって、
作家が「生涯かけてこの作品は30枚しか摺りませんよ」という摺りの最大値を決め、
その内の1/30から30/30というエディションナンバーと呼ばれる数字を
それぞれの作品の左下に書き込むことで、
その作品の希少性を確保してきた。
だから、作家自らが摺る作品数は30枚ぐらいが限界なので、
30前後がほどがよいエディションとされてきたし、
工房で摺り師が摺っている作品は30枚じゃ商売にならないので
エディションナンバーが200とか300とかにならざるを得なかった。
けれど、物理的には版が壊れてしまわない限り、いくらでも摺れるのが版画だ。
それをこの木目柄の千代紙は表している。
以前、自分で彫った木目の版木をいろいろな色に変えて摺ることで
いくらでも木目柄の千代紙風木版画が量産されることになる。
それをパネルに貼ったり
椅子や靴などに貼って、千代紙で覆い尽くすことで、
木製のものでも鉄製のものでも皮製のものでも
何もかもが木目柄になるという現代美術的発想の作品が出来上がる。
今回の個展は評論家の希望で、木目シリーズがメインになるので、
すでにある木製の椅子とパイプ椅子に加えて
スチール製の脚立を新作として発表しようかと考えている。
脚立の素材は冷たいスチールで、脚立を立てる時にはガチャガチャいうという
固定概念があると思うが、
木目柄で覆い尽くされることで、違うイメージをもってもらえれば面白いと
考えている。
芸術というと何だか難しいもの、分かりにくいものという印象があると思うけれど、
私の中ではそうした理屈や哲学はどうでもよくて
共感性とユーモアが大切だと思っている。
さあ、こんな私の作品を美術評論家はどんな風に評し
案内状の推薦文にしてくれるのか
今はとても楽しみにしているので、
自然とばれんを持つ手に力が入る。
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