1月いっぱいで彫り上がった作品の試し摺りが始まった。
2月に入るやいなや、3月下旬の個展が決まったので、にわかに忙しさが増し
気分は高揚しているのだが、
それとは別に、冷静に今、目の前にある新作を仕上げなければならない。
数日前、美術評論家との打ち合わせで、今回の個展は『木目シリーズ』を中心に
過去の作品を体系立ててならべようということに決まった。
木目シリーズはなぜ始まったかといえば、
椅子のシリーズの中で木の椅子の木目を彫りながら、
木版画家なら木目を自分ですべて彫ってみようという思いが湧き上がり
そこからすべてが動き出したと言える。
だから、今回の個展に並べる作品は皆、木目や木が関係しているものにすべき、
そう考えると、今目の前にある鳥の大きな作品は展示しない方向かもしれない。
元々、この作品は来年の4月の個展に向け、準備していた新作だが
今回の個展に出せないかもしれないと思うと、ちょっと気がそげる。
それでも、間違いなく来年の個展のメインの壁にかけたい作品なので
ここ一番いい作品に仕上げたい気持ちは満々である。
彫っている時からある程度イメージが湧いていて
試し摺りもさほど苦労せずいくかと思っていた。
が、しかし、ここ2~3日、案外苦戦中だ。
夜空に飛ぶぶっぽうそうがモデルなので、
全体に暗い画面になることはわかっていたが、
いざ、摺ってみると、やっぱり暗いというか重い。
軽い作品ではないのだから、重くて何が悪いとも思うのだが、
これでいいのか逡巡している。
木版の制作工程の中で
試し摺りはもっともアーティスティックで、繊細で、ナーバスになる。
毎回、このパートを楽しまなくてはと思うが、
今日も昨日も一昨日も寒くて寒くて・・・。
しかも、明日は20年に1度の大雪だそうな。
気分転換のエステは早々にキャンセルして、明日は1日家に籠もることにした。
写真は順々に摺り重ねられていく工程を写したものだ。
案外、紙の白が強いし美しいと毎回、この段階で思う。
しかし、途中で辞めるわけにもいかず、すべての色を摺り終え、
画面を絵の具で覆い尽くすと
どこか納得がいかない・・・。
何が納得出来ないのか。
どこをどうすればいいのか。
そんな
誰にも相談できない、
自分しか信じるものがない、
版画家の正念場を、今、迎えている。
まるで、オリンピックに出る選手達のようだ。
それに引き替え、何なんだあの佐村河内守とかいう輩とゴーストライターとやらは。
まったくあり得ない愚挙だと思うが、
それに踊らされてCDを買ったり、コンサートに行ったり、
あの曲に涙した人々の気持ちはどうしたらいいんだろう、全く。
ヤレヤレ。
きっと明日もしんしんと降る雪を窓辺に感じながら
ぶつぶつ独り言を言いつつ、作品と対峙することになるだろう。
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