遂に私の歌舞伎月間、最後の催し、七月大歌舞伎昼の部に行く日がやってきた。
東京は35度の猛暑日になると予報が出ていたが、
チケットを裏で手を回して取ってくれた母代わりの友人は
私のキモノ姿をいつも楽しみにしてくれているので、
キモノで行くことに。
着るだけで大汗が吹き出るが、時間に余裕をもって着付け、
さらに汗で長襦袢が足にからみついて転ぶかもしれないので、
ゆっくり歩いても大丈夫な時間を割り出し、
意を決して猛暑の中に突っ込んでいった。
友人はめっきり足が弱った上に、朝起きるのが弱いから、
演目の2つ目に間に合うように会場入りすると連絡があったので、
私は開演の1時間も前に歌舞伎座前に到着し、
芝居がはねた後の喫茶店を予約したり、お弁当を買ったり、
写真を近くの男性に撮ってもらったりして過ごした。
新歌舞伎座の地下にはお土産やお弁当を売っている大きなスペースがあり、
そこを冷やかして歩くだけでも歌舞伎座にきたというワクワクが味わえる。
しかも、今日はどこぞかの大手キモノ着付け教室の団体予約があるようで、
地下はキモノ姿の人で溢れかえっていた。
その人達は3階席だったので、
歌舞伎座の中に入ってからは上の方にいって見えなくなってしまったが、
歌舞伎座の中に入ってからは上の方にいって見えなくなってしまったが、
それまでは周辺にキモノ姿のおば様達が大勢いて、華やいだ雰囲気だった。
台風の日に夜の部に来た時とは大違いで、
猛暑なんのそのでキモノを着ていって正解。
さて、肝心の昼の部。
正直いって、今回の昼の部、サイコ-!!
これを見逃す手はない。
これを見逃す手はない。
3本立ての演目で、いずれも1時間前後の短いものだが、
『南総里見八犬伝』『与話情浮名横櫛』『蜘蛛絲梓弦』で
有名な話ばかりだし、タイプのまったく違う歌舞伎だという点で
とても面白かった。
『南総里見八犬伝』は歌舞伎でかかるのは珍しいと思うのだが、
獅童と死闘を繰り広げる名もなき役者達のアクロバティックな大立ち回りと
様式美にのっとった殺陣が美しかった。
体育会系の技を日夜磨いている面々が歌舞伎を裏で支えていると実感。
『与話情浮名横櫛』はお富と与三郎の有名なセリフのお話。
何十年も前、お富を玉三郞、与三郎を今の仁左衛門こと片岡孝夫がやって、
あまりにシュッとした美しさに息を飲んだ記憶があるが、
それを今回は玉三郞と海老蔵で演じていた。
玉三郞はさすがに60代、昔のような美しさはないが、艶っぽさは健在。
海辺で一目惚れする白塗りの若旦那を海老蔵がなよなよと演じ、
何だか昔の孝夫ちゃんそっくり。
でも、あんな若旦那があんな年増の女将さんに惚れるかなと
ちょっと無理がある。
でも、あんな若旦那があんな年増の女将さんに惚れるかなと
ちょっと無理がある。
後半の切られ与三郎の啖呵を切る場面はいつもの海老蔵にしては抑え目で、
新聞評で型に入り過ぎての駄目が出ているので、
少し表現を変えたのかもしれない。
それにしても今回の海老蔵は昼と夜とでタイプの違う役を何役やっているのか。
組んでいる玉三郞も猿之助も中車も芝居巧者なだけに
苦労が絶えないというあたりかもしれない。
そして、何より何より凄かったのが、『蜘蛛絲梓弦』
猿之助が早変わりで7役務めるという、いわゆる変化(へんげ)舞踊。
10年近く前、まだ、猿之助が亀治郎の頃、
浅草公会堂で行われた新春大歌舞伎でこの同じ演目を演ったのを観て
すごい人がいるものと本当に驚いたことがある。
小柄で俊敏で運動神経抜群の彼ならではの当たり役だ。
最初は真っ赤なキモノを着たおぼこ娘から始まり、
薬売り、芸妓、目の見えない按摩、傾城薄雲と次々早変わりで姿を変えていく。
源頼光の家来ふたりの土蜘蛛退治が題材で、
相手を取り逃がしては
次々、猿之助ひとりが演じて別の人に早変わりするという
歌舞伎ならではの趣向だ。
とにかく、猿之助の身の軽さと確かな舞踊の素養、
よくその長袴をはいたまま、そんなことが出来るものと感心しきりの技わざ技。
現代のパフォーマーもびっくりのアクロバティックさと柔軟さである。
更に10年前は20代後半ぐらいでまだまだ若かったので勢いが先立っていたけど、
今は怪しい雰囲気、凄みみたいなものも備わってきて、
途中ちらちら見せる蜘蛛の片鱗と、
途中ちらちら見せる蜘蛛の片鱗と、
最後に女郎蜘蛛の精になった時のど迫力が圧巻だ。
舞台の背景も正に錦繍とはこんな感じで、
華やかな紅葉のもみじで埋められ、
華やかな紅葉のもみじで埋められ、
金地に蜘蛛の巣の縫い取りのにぎにぎしい衣装の蜘蛛の精、
他の役者達もこれでもかと色鮮やかで格調高い衣装を身にまとい、
その全体は錦絵のような艶やかさ美しさ。
そこにシューッ、シューッと大量の白い蜘蛛の糸が舞台狭しと放たれて
「これぞ歌舞伎!よっ、待ってました、日本一!!」
とかけ声をかけたくなる豪華な作品だ。
そこにシューッ、シューッと大量の白い蜘蛛の糸が舞台狭しと放たれて
「これぞ歌舞伎!よっ、待ってました、日本一!!」
とかけ声をかけたくなる豪華な作品だ。
たぶん、勘三郎の『鏡獅子』ではないけれど、
この演目は猿之助を象徴する大事な演目になるだろう。
期せずして、若き日の亀治郎のこの作品を観ているので、
これからも猿之助の『女郎蜘蛛の精』を追っかけたいと思った次第である。
あ~、本当に凄かった。
今日、夢に出そう。
凄すぎる猿之助。
恐すぎる女郎蜘蛛の精。
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