毎日毎日雨ばかりで本当に気が滅入ると思っていたら、
今度は一転、連日の猛暑。
横浜はそれでも34度ぐらいだから、
他の39度なんていう場所に比べたら、まだ、涼しいぐらいのものか・・・。
そうはいっても34度も十分に身にこたえる。
今日は鎌倉に住む友人に会うため、
私が鎌倉の由比ヶ浜まで出向くことになった。
その江ノ電の小さな駅のすぐ側にある「松原庵」という
有名なお蕎麦屋に行くためだ。
この店はたぶん築100年ぐらい経つような古民家だったが、
どこかの鎌倉特集によれば、オーナーが解体寸前の古民家を引き取って改築し、
おそばだけでなく日本料理も出す料理屋さんを始めたと言うことだ。
広い庭もあって、日本家屋の座敷の中のテーブル席と
庭の日よけ付きテーブル席の両方があり、
今日のようなウィークデイの昼間でも満席で、
11時台スタートの第1組と13時スタートの第2組で2回転させるという盛況ぶりだ。
私達はランチコース2700円を注文した。
最初にひと皿に7種類の前菜がのっているプレートがでてくる。
お魚のカルパッチョや鶏肉の柔らか煮のようなものもあるが、
主には野菜やとうふを使ったバラエティに富んだ料理がちょんちょんと並んでいる。
どれも手が込んでいて、美味しいのだが、
「これ何だと思う?」と首をかしげるような食材もあり、
お品書きとチラチラ見比べ、
「家じゃあこんなの作れないし、こんなちょこっと何種類も作るのは無理よね」と
大体この手の料理を前にすると女性なら同じことをいう内容で盛りあがりながら、
もの珍しいお料理に舌鼓を打つことになる。
その後には野菜のてんぷらとせいろ蕎麦がでてくる。
てんぷらに海老やキスなど魚介類がまったく入らないのも松原庵スタイル。
ごぼうとかついに最後まで何の野菜か分からなかったエリンギ風のものなど、
5種類の野菜のてんぷらをそばつゆもしくは岩塩につけながらいただく。
おそばは半透明のきれいなおそばで、やや腰の強い細麺だ。
香りがよく、とても美味しい。
せいろかかけそばか選べるが
夏でなくても当然のごとくに私はせいろをいただくことにしている。
本日もぺろりと平らげ、多少物足りない感じもするが、
美味しいものを食べた満足感で気分はいい。
スイーツやコーヒーはこのコースにはついておらず、
別室のカフェに移動して、注文することも可能だが、
友人のマンションがすぐ近くだと分かっていたので、
あらかじめ一緒に食べるつもりの和菓子を持っていった。
だからそこではスイーツは食べずに、彼女の家に向かった。
外は本日も35度を目指して気温上昇中。
照り返しが強く、帽子をかぶっても、サングラスをしても、クラクラした。
彼女の部屋はマンションの4階にあるので、窓から遠くに海が見える。
さっきの照りつける日差しが他人事のように感じられる静かな部屋で
フルーツあんみつを食べながら、穏やかな時間がトロトロと流れる。
時折、友人が飼っている真っ黒い毛色のネコがすり寄ってきて、
くぐもった声で話しかけてくる。
結局、ネコは外からやってきた私ではなく、友人の膝の上に乗って
彼女の胸に顔を埋めたり、スリスリしたりしているのを見ながら、
こういうゆっくり時間の流れる午後も悪くないなと思った。
実は友人は闘病中で、すでに残された時間が限られている。
そのことを受け入れている友人を心の底から強いなと感じながら、
もう少しこのままこうしていて欲しいと思う。
2ヶ月に1度ぐらいの割りで会う度に、
友人から、いろいろなことが出来なくなってきているという話を聴く。
緩やかに人生の坂を下っていくというその感覚を
本当のところは分かっていないとは分かっているけど、
20年来の友人としては、まだもう少しつきあって欲しいと願っているのだ。
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