2015年9月17日木曜日

『黒蜥蜴』 その魅惑的な世界

 
 
 
 
3度目の抽選でようやく当たり、手にしたチケットで『黒蜥蜴』の舞台を観てきた。
 
美輪明宏がライフワークにしている舞台で
御年80(?)の美輪明宏が体力的にもはや限界なので
黒蜥蜴はもうできないだろうと宣言したせいか、
とにかくチケットをとるのが大変だった。
 
たしかに2時半に始まった舞台は終わってみれば夕方6時15分。
間に15分休憩が2度入るとは言え、
美輪明宏はその間、ほぼ出ずっぱり。
しかも、豪華絢爛な衣装を6~7回は着替えただろうか。
 
黒いロングドレスから粋なキモノへ、そして、また今度は白いロングドレスへと
歌舞伎の早変わりさながら、次々と変え、
セリフも驚くほど膨大な量だし、早口で気っ風のいい役どころ。
 
また、何より美輪明宏らしいと思ったのは、
会場に入るなりいい香りが立ちこめていて、
チケットを切ってもらって劇場に入るまでにすでに三輪ちゃまワールド全開。
 
そして、幕が上がれば、
舞台からもまた香しい香りが客席に流れ込むしかけになっていて、
五感すべてに訴えかけて、その世界に引きずり込まれてしまう。
 
劇そのものは現代劇とも時代劇ともつかない感じで
大仰なセリフ回しが新劇みたいでちょっと慣れるのに時間がかかる。
 
舞台装置は贅沢なもので、歌舞伎みたいに回転したり花道があるわけじゃ
ないから、相当、手間とお金がかかっていると分かる。
ひとくちでいって、これでもかという豪華なてんこ盛り舞台。
 
話が後先になるが、劇場は赤と黒でできていてドラマチックな印象で
KAAT神奈川芸術劇場ととてもよく似ている。
(もちろん、東京のこちらが先に出来ているから、神奈川が真似たのだろうが)
とにかく、真っ赤な血のような緞帳の色といい、
比較的小さくて、役者の息遣いも感じられるような一体感といい、
美輪明宏好みなんだろうと思われる。
 
その上、始まる前のアナウンスで
「咳をするときはハンカチかタオルで口をふさいで、他の人の迷惑にならないよう」
とまで言うところも一緒だから、
これは美輪明宏が指示してアナウンスしているのではと思った。
 
『黒蜥蜴』の物語り自体に今イチ感情移入できずに帰ってきたが、
その「これでもか」な世界観は一見の価値ありだし、
とにかく劇場に香水をまいたり、凝った舞台装置や大道具だったり、
艶やかな衣装だったりと、たっぷり4時間ちかく楽しんで9800円は
リーズナブルというか、お安いのでは。
 
脇を固めるのが美輪明宏好みの俳優陣ばかりで、
顔はいいんだけど、大根役者ばかりなのが、ど~なのよと言いたくなるが、
最後は総立ちのカーテンコールだったから、
観客達は役者がどうのと言うより、この世界観全部が好きなんだろうなと思う。
 
会場には假屋崎省吾や、名前が分からないが時折テレビで観る役者達もいて、
皆、三輪ワールドの信奉者なんだろう。
 
ちょっと宝塚を観に行った時を彷彿とさせる独特の雰囲気を味わい、
現実逃避の数時間を楽しむことが出来た。
 
80にしてあの美しさ、そして、実は男性。
う~む。
恐るべし美輪明宏、
おぬし何者?もののけ?それとも、本当に黒蜥蜴?
 
歌舞伎の女形や宝塚にも通じる性倒錯の世界は、不思議な魅力に満ちている。
 
 


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