再放送という形でつい今し方Eテレで放送された
『こころの時代 沖縄にケーテ・コルヴィッツがあるということ』を観た。
ケーテ・コルヴィッツは戦争をテーマに作品を創ったドイツ人の版画家・彫刻家だ。
第2次世界大戦の終戦の年の春、77歳で終戦を待たずして亡くなっている。
女流画家であり、母親でもあったケーテは
第一次大戦で次男を、第二次世界大戦で孫を失った。
戦争をテーマに数多くの作品を創っているのだが、
その作品の多くは
死んだ子どもを抱きしめる母親であったり、
死体が折り重なる暗闇で我が子を探し求める母親だったり、
子どもを必死に守ろうとする母親の群像だったりと、
母親の視点で捉えた戦争なのである。
私が一番心打たれた作品は
『ケーテ・コルヴィッツのピエタ』という小さな彫刻で、
ピエタとは普通、十字架から下ろされたキリストを抱くマリア像を指すのだが、
戦争で死んだ息子を抱きしめる老いた母親像として創られている。
作品を観ていると、
それがいつのどこで起きた戦争のことを描いたものであれ、
戦争による悲しみは万国共通であり、
子を亡くした母親は何国人であれ皆、絶望の中にいると分かるので、
その作品の普遍性を物語っている。
そうしたケーテ・コルヴィッツの作品が沖縄・宜野湾市の米軍基地のすぐ脇に立つ
佐喜眞美術館にコレクションされていることには大きな意味がある。
沖縄は日本で唯一、先の戦争で戦地になり、
大きな犠牲を払った地である。
終戦後、持っていた土地を米軍に接収された佐喜眞氏には
接収代金として相当高額な金銭が米国から転がり込み、
それを何か意味あるものにしなければという思いで建てられたのが
佐喜眞美術館だそうだ。
実は版17というグループ展の一員として、ここの美術館に3度訪れたことがあり、
そして、館長の佐喜眞道夫氏にはずいぶんお世話になった。
だから、番組を通して、その佐喜眞氏がどんな思いと考えで沖縄に美術館を建て、
戦争に関する作品をテーマにコレクションするに至ったかが分かり
とても理解が深まったし、親近感を持つことが出来た。
戦争を知らない世代としては、戦争の悲惨さを描いた作品は
どこか他人事になりがちなのだが、
戦争というものは戦地でだけ行われているわけではなく、
我が子が亡くなったり、家族を失うことでもあるということを知ることで、
もっと身に迫って捉えることができる気がする。
版17のメンバーから、連絡網で再放送を観るよう連絡があって、
予定を変更して、家で観ていたのだが、
いろいろなサジェスチョンに富んだ番組だったので
本当に観てよかったと思った。
現在の日本の政治状況はすこぶる心配だし、
オリンピック関連の不手際もとても気になる。
いずれも『平和』を掲げて、
その意味の重要性は何を置いても守るべきものという認識はあるのに、
なんだか不穏な感じになっている。
さて、『今の自分は何をなすべきか』
といういつもの命題にぶつかるわけだが、
何とか流されずに表現者としての生きる意味を見出したいと思う。
と、宣言だけはかっこいいのだが、
首凝りと肩こりが今イチすっきりせず、
何だかやる気スイッチが入らない。
こりゃ、夏バテか?
さわやかな秋の訪れが待たれる今日このごろである。
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