目下、制作中の作品には生まれて初めて、魚の群れが出てくる。
原画を起こし、版木を彫るところまでは出来たが、
さて、そこから先、魚群と水の色はどうなっているのか、ちょっと心許ない。
そこで、次の作品のイメージを固めるために、魚の群れを実際に観に、
八景島シーパラダイスまで行くことにした。
モデルに使ったタカベという魚群がここにはいるはずなのだ。
当初、長女を引っ張り込み、5連休の2日目に行こうと計画していたが、
2ヶ月近く前に購入したチケットをしげしげ眺めてみたら、
5連休の内、中3日間は使用できないと判明。
わざわざ長女は実家に泊まりに来ていたにも関わらず、
その日には使えない割引チケットだったのである。
結局、チケットの有効期限としては、2ヶ月間も猶予があったにも関わらず、
そのままズルズル月末になだれ込み、
9月30日までしか使えないチケットにはお連れ様が見つからないまま、
『ひとりシーパラ』を決行することになった。
いつもは税務署に行くときしか利用しないシーサイドラインという無人の
モノレールに金沢八景から乗って、八景島駅に降り立つと、
当然、周囲はカップルか子ども連れの家族ばかり。
おばさんのおひとり様はかなりばつが悪いが、
そんなこと言っている場合じゃない。
シーサイドラインで後ろの席に座っていた若い女性ふたりも
八景島駅で降り、アクアミュージアムに向け歩き出したので、
思い切って話しかけてみた。
「アクアリゾーツとランチがセットになったチケットを、
相方が行けなくなって1枚余分に持っているんですけど、いかがですか?
3800円を2000円で?」
「えっ、いいんですか?嬉しいです」
てな具合で、運よくだぶついたチケットをさばくことが出来た。ラッキー!
彼女達もラッキーと思っていただけたなら、めでたしめでたし。
そんなわけで、ゴミになってしまうはずのチケットが2000円になり、
おみやげのひとつも買おうかと気分も軽い。
まずはアクアミュージアムからじっくり鑑賞し、
海の中には本当にいろいろな生き物が生息しているものだと感心した。
こちらは鑑賞しているつもりだが、時折、鮫やセイウチ、オットセイなどと目が合う。
大型の動物は「それはもしかしてポーズ?」といいたいような
不思議な恰好をして、こちらを見ている。
人が自分を見ているとわかって、やっているとしか思えないようなしぐさと目線だ。
生まれて3ヶ月ほどのイルカの赤ちゃんもお母さんのお乳を飲んだりしながら
ぴったり寄りそっていて、可愛いし、
白イルカも大声で挨拶したり、絵を描いたり(描かされたり)して
頭の良さをアピール。
いずれも健気で、癒される。
そして、目的の「タカベの魚群」は
ドルフィン・ファンタジーという水槽にイルカ数頭と共に大量に泳いでいた。
15~20㎝ぐらいの魚で背中から尾びれにかけ美しい黄色い帯が光っている。
魚群で行動するのが特徴で、イルカの泳ぐ水の流れに影響を受け、
魚群の方向が変わる度、黄色い帯が翻って、新体操の選手のリボンのようだ。
今月は特別にハロウィン・ショータイムと銘打って、
ガラスに貼り付けたハロウィンかぼちゃの顔の前でえさやりをすると、
魚群がそこに集中して、かぼちゃのようになる。
作品にかぼちゃのように集まっているタカベは出てこないが、
季節柄、今だけの催しに遭遇し、それはそれでよかった。
ショータイムじゃないときのタカベの魚群をしかと目に焼き付け、
カメラに納め、無事、本日の目的を達成して、家路についた。
これからは非婚時代。
私もダンナが10月にバンコクに発ったら、ひとり暮らし再開だ。
ひとりじゃ、つまらないなんて言っていたら、何もできない。
誰かを誘わなくても、行きたいところへは行き、
見たいものは見、食べたいものは食べる。
おひとり様の生活をエンジョイすることで、
充実した老後が待っていると思うので、
ひとりを栄養に出来る大人の女を目指そうと思う。
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