5月の歌舞伎座は毎年、団菊祭と決まっている。
団十郎は亡くなってしまったので、海老蔵が目玉ということになるが、
菊がつくのは菊五郎と菊之助、
更に夜の部では弱冠2才の菊之助の息子のお披露目もあるので、
今月の歌舞伎座は華やかだ。
両家とそのゆかりの縁者が勢揃いし、肝入りの演目がかかっている。
私は例によって、歌舞伎座に通じている年長(87才)の友人の計らいで
チケットをとってもらったので、昼の部を観に行った。
昼の演目は
1.鵺退治
2.寺子屋
3.十六夜清心
4.楼門五三桐
「鵺退治」は54年ぶりの再演だというから、私はもちろん、
会場にいる大方の人が初めて見る演目だろう。
30分ほどの短い作品で、
顔はサル、胴は狸、尾は蛇、手足は虎という物の怪が、夜ごと現れ、
時の帝を脅かしているというので、源頼政が退治する話。
おどろおどろしさを表現する鳴り物や暗雲垂れ込める様子を表現する雲幕など、
歌舞伎の様式美を活かした作品だ。
「寺子屋」は歌舞伎の人気演目で、上演回数も上位トップ3に入るという。
いわゆるお上に忠義立てするために、自分の息子を身代わりに殺し、
差し出すというお涙頂戴ものの代表格。
息子を断腸の思いで差し出した夫婦を海老蔵と菊之助がやっているのだが、
菊之助の成長は目を見張るものがあって、
いわゆる女形が演じている感じがまったくなく、
骨格的にも肌の質感も声のトーンも無理なく女性的なのが凄い。
踊りも泣きの演技もすごく上手くなっていて、
夜の部の海老蔵と踊る「男女道成寺」が艶やかでしかも上手と新聞評にあったが、
昼の部の「寺子屋」の女房千代も泣きの演技が見事だった。
今回は演目の人間関係が複雑そうなので、珍しくイヤホンガイドを借りてみたが、
いろいろな解説がつくと、理解の度が深まるので、
勉強になり、借りてよかった。
最後の「楼門五三桐」は
有名な南禅寺の山門の上で石川五右衛門が「絶景かな、絶景かな」と叫ぶ
有名なあれであるが・・・。
どんなお話なのかと思ったら、本当に石川五右衛門が山門の上にいて、
山門の下に真柴久吉がいて、
満開の桜、金銀華やかな彩りの山門、豪華な衣装が目にまばゆい。
歌舞伎らしい豪華絢爛、豪快な様式美といった短い作品で、
お話というより一幅の絵という感じ。
お話というより一幅の絵という感じ。
新聞評では石川五右衛門が吉右衛門、真柴久吉が菊五郎だから、
両人とも人間国宝という滅多に見られない豪華競演という意味で
確かに価値がある。
夜の部だと、ここに2才の息子と菊之助パパが加わり、
人間国宝2人に見守られた孫と、成長著しい次代を担う息子という
正になかなか見られない超豪華競演ということになる。
実は一緒に観るはずの87才の友人は体調不良で来られなくなり、
急遽、同い年の古い友人を誘い、観たのだが、
30数年ぶりに歌舞伎を観たという友人も十分楽しめたようで、
昔ちんぷんかんぷんだった内容が今回は理解できたといっていた。
87才の歌舞伎通はそろそろ歌舞伎座通いも引退かなというお年頃だし、
60界隈の私達はいつのまにか歌舞伎が楽しめる年頃になっている。
会場に若い人は数えるほどなのが寂しい限りだが、
日本文化の代表格、歌舞伎をもっと身近なものに感じて欲しい、
そして、若い年代にも観に来て欲しい、
そんな風に舞台上の老若男女(本当は男しかいないけど)の面々を見て考えた。
演者も世代交代してるけど、
観客席も同じく若い人を取り込めなくては、
日本文化の継承が危ぶまれるからだ。
演者も世代交代してるけど、
観客席も同じく若い人を取り込めなくては、
日本文化の継承が危ぶまれるからだ。
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