2016年5月19日木曜日

戦い半ば

 
 
 
 
外は湿度の低いカラリとした上天気。
なれど、私は夕べからアトリエに籠もって、徹夜で本摺りである。
 
しかも、上下2枚を継ぐいでようやく1枚の作品になるという版画としては最大級に
大きな作品なので、
今はその作品の上半分のパートが4枚仕上がったところ。
 
仕上がった4枚を、板に水張りといってテープで貼り付け、
和紙が乾くと縮む性質を利用して、パンとしわなく伸ばす仕上げを行っている。
 
上下に分かれているということは、
上下のつなぎ目の部分には3㎝ぐらいの共通の絵柄があるということで、
その部分の色が違ってしまうと、継いだときに継ぎ目がバレバレになるので、
絵の具の調合としては、上下2点の作品全部に必要な分量だけ
すでに用意してある。
 
ということで、今日の夜から、引き続き、
疲れた体にむち打って、今度は下半分を摺らなければならないので、
先程、下半分用の和紙を湿した。
 
本摺りの時、和紙は湿らせた状態を保ちつつ、摺りおおせなければならないので、
今日みたいにピーカンの晴れだと、
常にも増して加湿器をガンガンにつけて作業しなければならない。
 
途中、何度も霧吹きで和紙全体に湿度を与えながらの摺り作業は、
ひとり物言わずに湿度と乾燥とに戦いを挑む戦士という気分で、
寡黙な修行そのものだ。
 
今回の作品は昨年暮れに亡くなった友人を悼んでのものなので、
深く静かな鎮魂の作品なのだが、
その静謐な気分とは裏腹に
現実の作業は、腰はミシミシ、目はショボショボ、
昨日の整体で整えたはずの体をすり減らしての大乱闘の体である。
 
ものを生み出すって、本当に大変。

つい今し方、次女からLINEがあって、
先日、膀胱炎になりながら、連日の徹夜で臨んだコンペの結果が出て、
「今回は負けてしまいました」といってきた。

彼女も初めての超大型広告のデザインコンペに心血注いだのに、
陽の目を見ることは出来なかったわけだ。

まあ、版画は自分の作品を自分ひとりで創って、
予定されている展覧会に出品するだけだから、陽の目は見るんだけど・・・。
 
でも、峠は越えた。
後は残り半分だと気合いを入れ直し、
今から大量に作り置きしたカレーで腹ごしらえし、
2時間ぐらいお昼寝して英気を養い、
再び立ち上がって後半戦を戦うつもり。


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