2016年8月23日火曜日

シネマ歌舞伎 「牡丹灯籠」

 
今月のシネマ歌舞伎は2007年10月に歌舞伎座にかかった「牡丹灯籠」
 
去年の七月大歌舞伎の夜の演目でもある。
去年はチケット手配にちょっとした手違いがあり、
なんと、「牡丹灯籠」は2回も観ているから、役者陣の細かな演技も記憶に新しい。
 
女房お峰の役は坂東玉三郞で同じだが、
その亭主の伴蔵役は、2007年の時は片岡仁左衛門で、去年は市川中車だった。
 
また、ストーリーテラーの重要な役どころとして、落語家が出てくるのだが、
2007年に坂東三津五郎がやったところを、去年は市川猿之助。
 
去年の猿之助と中車、それぞれの芸達者ぶりが脳裏に強く残っていたので、
同じ演目を9年前はどんな風に演じていたのか気になって、
東銀座まで出掛けることにした。
 
玉三郞が今、必死に育てようとしている若手というか中堅のひとりは
猿之助だと思うが、去年の落語家ぶりは、怪談話をする落語家の
不気味さや凄みを感じさせ、さすがだと思った。
 
9年前の落語家は三津五郎だったが、
こちらは正当派というか、どこかおっとりして品がいい。
この時、三津五郎は三役こなしていて、馬引き男との好対照の役作りが見事だ。
 
玉三郞のお峰役は9年前も1年前もさほど変わりがなく、見た目の感じも同じ。
ずいぶん前から、はすっぱな女房役をこなしていたことにビックリ。
それでも去年の方が面白みが増していて、客席の笑いも大きい。
歳と共に何か吹っ切れたのかも。
 
亭主の伴蔵役が一番タイプが違っていて、
去年は中車だったから、本当に立て板に水の語り口調で、
おもしろ可笑しさが全面に出ていたから、伴蔵はそういう役だと思っていた。
今後、中車のはまり役になるに違いないと踏んでいる。
 
そしたら、9年前の伴蔵は仁左衛門だったから、
もっとシュッとした旦那風で、語り口調もさほどべらんめいじゃない。
 
姿形のバランスは9年前の玉三郞&仁左衛門の方がお似合いだ。
 
でも役どころの面白みは中車の方が上だろう。
 
今日、観た映画は途中15分の休憩を挟んで2時間45分もかかっている。
途中で何度か眠くなって、ふと気づくと最後の大立ち回りになっていた。
 
去年の幕切れと違う形だったから、
9年前の形じゃ長すぎてお客が飽きちゃうと思ったか、
最後の方の演出を変えて、少し短くしているような気がする。
 
まあ、最後、寝過ごしているので、大きなことは言えないが・・・。
 
歌舞伎鑑賞の醍醐味は、こうした古典の演目を、
役者の配役を変えた形で観ることにもある。
 
贔屓の役者、上手い役者、目をつけている役者など、
気に留めている役者の成長ぶりや、配役による演じ分けを追いかけることは、
ある程度、年数かけて見続けてきたファンの楽しみ方である。
 
夕方、なじみの呉服店で新しく担当についてくださることになった方から
電話があった。
先日、1度だけ、キモノバッグと草履を求めたときにお目にかかった方だ。
お決まりの展示会のお誘いだった。
 
そちらの方は丁重にお断りしたのだが、
その方も歌舞伎通で、
ひょんなことから10月の歌舞伎座、夜の部のチケットを取って下さるとこのこと。
演目は玉三郞の「藤娘」!
 
いつもチケットを取って下さるおばあちゃまが体調不良で入院中なので、
歌舞伎チケット入手は当分無理と諦めていたところ。
 
これで、また、少し先にお楽しみが出来た。
 
そして、何より、歌舞伎のお話ができる友人が新しくできたことが嬉しい。
呉服店にお勤めならば、もちろんドレスコードはキモノだろう。
10月ならば、暑さも抜けて、キモノで歌舞伎に行ける。
 
思いがけず、
新しい歌舞伎フレンドの出現にウキウキする8月の蒸し暑い夕暮れだった。

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