「ねえねえ聞いた?私達1日1個ずつしか咲かないらしいわよ」
「誰が決めたのよ、そんなこと」
「一斉に咲くみたいな協調性はないとかって、失礼しちゃうわ」
「じゃあ、ここらでパアッと咲いてみせましょうか」
「実力を見せなきゃね」
「それから、花びらに見える部分はがくに違いないとも言っているけど、
知りもしないで、適当なこと言わないで欲しいわね」
「そうよ。これはれっきとした花びらよ。それ以外に何に見えるのかしら」
「花が落ちた後に小さながくが残っているのに気がつかないのかしら」
「きっと針のような部分の方が美しいから、こっちが花びらだと思ったんじゃない?」
「これは私達だけが持っている冠なのにね」
これは誰の会話かというと
我が家の庭の時計草たちの声。
もちろん、私の妄想である。
そんな声が聞こえてくるぐらい、3日前の朝、
今まで1輪か2輪しか咲かなかった時計草が一挙に花開いていた。
「ちょっと貴女たち、どうしちゃったの」と、思わず駆け寄るほど、
赤紫の株と赤紫の株の両方の花が合計10個以上咲いていた。
慌てて、ネットで検索すると、
私ががくに違いないと思っていた部分は見ての通りの花びらで、
鮮やかな濃い紫と白のグラデーションになった針のような部分は、
『副花冠』という名の特殊な花びらだった。
『花冠』という素敵な名前をもつ、まさに時計草は王冠をかぶった王女様のような
ダイナミック、かつ高貴な花なのである。
しかも、その繁殖力はやはり相当凄いらしく、
夏のグリーンカーテンに使われるほどで、
ややもすると庭中が時計草で覆われ、他の植物を覆い尽くすことがあるから、
注意が必要とある。
確かに我が家のフェンスに這わせた生命力が強くて困っている白薔薇の幹にも、
構わず絡みついて、
どんどん触手を延ばしている。
はたから見ると白薔薇の咲くおうちだったはずが、
いつのまにか時計草で覆い尽くされたおうちになる可能性も感じる。
だから、花が終わったら、思い切った剪定が必要らしい。
やっぱり、植物界でも生命力の強いものとそうでもないものはあるらしく、
ジャスミンや時計草のようにツルものは総じて強く、
また、薔薇やサクランボのように幹や茎にとげのあるものも強い気がする。
まあ、くせのある人が世の中をしぶとく生き残れるように、
花の世界も自己主張の強いものが、生命力も強いと言うことかも。
と、思って、今朝の庭に出てみると、
今日は以前に戻ったように、赤紫がひとつと、青紫がひとつしか咲いていない。
それも、「直径8センチなんて見くびっちゃいけないよ」とばかり、
直径10㎝はある大輪の花である。
その誇らしげな王冠を天に掲げるようにして、
胸を張って咲いている。
おしゃべりば時計草は
「どうよ。見てよ」
そう、言っているに違いない。
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