ダンナが珍しく私を誘って(実際には誘われてはいないが・・・)
旅行に行くことになった。
旅行といってもツアーが全く駄目なダンナは一都市滞在型というか、
一箇所だけ、同じホテルなり旅館なりに連泊して、
とにかくのんびりするのが旅行だと思っているので、
今回も横浜に住んでいながら、沼津に2泊3日の旅らしい。
沼津といえば、日帰りで立ち寄り温泉で十分の距離だが、
三津という場所にある明治創業の老舗旅館『松濤館』に2連泊するという。
お陰で私は水曜日のお茶のお稽古をお休みする羽目になり、
もうこうなるとハイハイわかりましたとついていくしかない。
ダンナは車に自転車を積み込み、向こうでツーリングする気で満々だ。
私はまだ病み上がりの体なので、宿で長女のためのレシピを書いて、
赤ん坊が産まれた後、ご飯作りがスムーズに出来るよう、
我が家の献立を伝授するためのノートを作ることにした。
長女は今日までキッチンに立つことを避けて暮らしてきたせいで、
結婚した今になって、ご飯作りが相当、苦痛の種らしい。
「そんなこと、いざとなれば出来るようになるわよ」とうそぶいてきたが、
いざとなっても、急に段取りよく出来るわけでも、
手際よく出来るわけでもなく、
一度に何品かを作るなんざ、神業のようなことらしい。
「そんな娘に育ててしまって誠に申し訳ございません」の気持ちも込め、
私がよく作るレシピで、多くの野菜やお肉を同時にとれるものを中心に、
レシピ集にしてまとめ、
子どもが産まれて実家に来ている間に特訓して仕込もうという計画なのだ。
さて、そんなレシピ用ノートを車に積み、
やってきたお宿は、それはそれは見事に富士山が真っ正面に見える
素晴らしい場所にあった。
フロントからも、お部屋からも、お風呂からも、
雲ひとつない空を背景に白く雪をいただいた富士山が燦然と輝いて立っている。
その神々しいまでの美しさに見とれ、
2泊3日、
私は日本人に生まれたことを誇りに思いながら、
ゆっくりとした時間を過ごした。
食事も豪勢な懐石料理で、
とりわけ朝ご飯の充実ぶりは凄かった。
神経痛で未だに脇腹が痛い身でありながら、
食欲はだいぶいつもどおりに戻っていたので、
いずれも美味しく味わい完食した。
ダンナが自転車ででかけた中日には、私ひとりしか乗船客がいないのに、
湾内を1周する遊覧船を出してくれたので、
ひとり優雅に駿河湾の船上から富士山を眺めることが出来た。
そして、レシピは30品目ぐらいは書けただろうか。
これをローテーションで作れるようになれば、
何とか新米ママとしてやっていけるのでは・・・。
料理に命をかけていた新婚時代の私とは、だいぶ違う我が娘を、
母親として憂いているが、
可哀想なのは食べさせてもらえない婿殿と産まれてくる子どもなので、
ばぁばとして責任を感じているのである。
今どきの働くママもいいけれど、
食は生活の基本。
家族の健康は結局、女が守るしかないでしょと老婆心ながら思うわけである。
美味しいものを上げ膳据え膳でいただいた私も
明日からはちゃんとお台所に立たなければ、
そう思う旅の終わりであった。
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