陶芸工房の課題として、『貯金箱』と『抹茶椀』というふたつが出され、
会員はそれぞれ創作に励んでいる。
いつもは課題が出ても、中には創らない人もいるし、私もパスのこともあるが、
今は11月の1年おきに開かれる工房の展覧会に向け制作しているので、
マストで創らなければならない。
さて、陶器の貯金箱といえば、ぶたの貯金箱が定番だが、
どんな形にするのか、老若男女の会員、それぞれの個性と実力が問われている。
中年の男性がピンクのぶたの貯金箱はないだろうし、
かといって子どもっぽくないテーマとなると案外、難しい。
そもそも貯金箱という存在自体が、自分達の生活にはないものだから、
孫のために創る人もいるし、
自分のためとなるとどうする?という壁にぶつかる。
私も例外ではなく、すぐにはテーマが思いつかず、
まずは抹茶椀をいくつか手びねりしながら、イメージを練った。
かたわらで貯金箱に取り組んでいる仲間達は、ロボット型、ロケット型、
竹の節を切り取った形、ふくろうの形など、
それぞれ思いついた形に横スリットを入れ、貯金箱として成形している。
実は貯金箱、技術的にも案外難しく、
中が空洞で、
開いているのはお金を投入するスリットだけで、後は閉じられているというのは、
成形するのも、焼成するのも、ハードルが高い。
通常、花瓶みたいに筒状のものを創る時は、先ず、底を創り、
中にペットボトルや缶などに新聞を巻き付けた型を底に立て、、
引き延ばした土を巻き付け、胴を創ることが出来る。
その場合、成形後に上から型を抜き取れば、綺麗な円筒状のものが出来る。
しかし、貯金箱は上から型を抜き取ることが出来ない。
底の土の上に芯無しで、いきなり板状に引き延ばした土を立てるのは、
かなりの技術と、職人的な勘と、土と折り合いをつける会話力が必要だ。
『土と会話する』
これが実は陶芸をやっていて、もしかして一番大切じゃないかと最近、思う。
菊練りといって、土を何十回となく錬りながら、
土の硬さ、瑞々しさ、腰、ねばりなどを肌で感じ取りながら、
その日の気象条件、温度湿度などとも相談して、
「あんた、今日、何になりたいの?」
「貯金箱にするために、板作りで背を高くしたいけど、大丈夫?」などと
話しかけるのである。
そうして、創りたい形をイメージしながら、手元の土の硬さや水の含み具合をみて、
ちょうどよい錬り具合に整えていく。
今回の土は戸外のポリバケツに入れておいた残りの土だったので、
とにかく冷えていて硬かった。
それを心の中で「よしよし、今、暖めるから待ってね」と話しかけながら、よく錬り、
5ミリの厚みで30㎝四方になるまで専用の麺棒で引き伸ばす。
端っこで、直径8㎝の円を底土用に切り取り、
その側面、つまり、5ミリの厚さに圧着して、
20㎝以上の高さの土を支えられるところまで、
しっかり練り上げる必要があるのだ。
しかも、支えの芯無しで・・・。
イメージとしてはワインの瓶をラッピングしたような形をと思っていたので、
くびれの部分までとそこから上とで土を区切り、
切り目を入れて、首がすぼまるようにした。
前回それを大きな1枚の土で創ったら、寄せた部分のギャザーが多すぎて、
きれいにすぼまらなかったので、
今回はもう少し計画的に平面図に興してから創ってみたというわけだ。
いずれもお金を入れるスリットは縦にして、
いかにも貯金箱という感じにならないようにした。
コインがたくさん貯まって、
リボンのかかったくびれの部分をもってカシャカシャいわすイメージは、
お宝という感じで、貯金箱らしいデザインなのではと思っている。
さて、ここから、まず、乾燥でヒビとかが入らず、素焼きもうまく通過し、
釉薬をかける段まで進めたら、全体に白い釉薬をかけるつもりでいる。
リボンだからといって、そこだけ赤くしようとかは考えていない。
とにかく、縦のスリット一箇所だけという焼成テクニックの難しさを乗り越え、
無事、焼き上がりますように。
自分で焼成段階はやっていないので、じれったい。
あとは焼成時に先生にうまくいくよう、念を送ってもらうしかない。
私にできるのは、先生が念を送ってくださるよう、先生に念を送るだけだ。
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