今週は水曜日を除いて、ずっと家に籠もって、版画を摺っていた。
1月2月で彫り上げた2点分の版の内の2点目の作品である。
しかし、月曜日にまず試し摺りを取ったのだが、
1点目の作品とは違う雰囲気にしようと試みた背景の渋い紫がいけなかった。
思い描いた色を先ずは何色か版に乗せて全体に摺ってみたが、どこか品がない。
そして、まとまらない。
こうなると、試し摺りは難航する。
一度頭から背景に使った紫を追い出し、一から出直すしかない。
ここがもっともアーティスティックな局面だ。
悩んだ末に出した結論は、1点目と対の作品なので、同じ色調にするというもの。
逆に同じ色調にしたせいで、2点には『静と動』という違う特徴があるということを、
今更ながら感じた。
火曜日、同じ色調にした試し摺りをもう一度取り、ようやく心が落ちついたので、
これで仕切り直して、木曜から本摺りに向かうことにした。
紫系の背景の試し摺りはすでに丸めてゴミ箱に・・・。
水曜日はお茶のお稽古と心理学の講義を受けたため、
昼前から夜遅くまで家を空け、木版から一気に離れた感じだが、
本摺りに向け、気持ちをリセットするにはこの方がいい。
自分の体力や集中力が落ちていることを考え、
木曜日から金・土と3日間も予定を入れず、本摺りに備えた。
最近気に入っている朝に和紙の湿しをして、5時間、間を開け、
午後から摺り始めるという方式で、1日目にある程度まで摺り、
2日目は朝から気持ちもスッキリ、1日中頑張り、夕方6枚を摺り終えた。
3日目の今日は午前中、多少のリタッチと作品の水張りと
絵の具や筆の後片付けをした。
以前はこれを1日に詰め込んでいたが、今はそんな無茶をしても、
摺りが雑になるばかりでなく、詰めの甘いいい加減な作品になるだけだ。
だから、これからは余裕をもって、これぐらいの時間割りで進めようと思う。
そして、午後は朝、ネット予約した映画を観に行くことにした。
『モアナと伝説の海』
今日、封切られたばかりのディズニー映画だが、
家から徒歩10分にある最寄り駅の映画館でやっているので、誠にありがたい。
会場は1番大きな5番スクリーンなのだが、小学生ぐらいの親子連れで満席。
私の両脇も左が小学校の低学年とおぼしき男の子とお母さん、
右が幼稚園年長さんぐらいの女の子とお母さんだった。
私ぐらいの年齢でひとりで観に来ている人はほとんど見かけないが、
そんなの関係ない!
ひとり映画鑑賞には何の問題もなし。
この映画、予想以上によかった!
海や人物の表現も凄かったし、美しかったし、
物語のテーマもいろいろ考えさせる深い内容でよかった。
『アナ雪』と同じチームが創っているということもあって、
耳に残る迫力のある挿入歌も心に残る。
月曜から苦労した試し摺りに引き続き1週間かかって本摺りを終え、
今週は私のエネルギーのすべてを版画に注ぎ込んでしまったので、
もはやエンプティランプが点滅していたのだが、
この映画で十分、ガソリン満タンにチャージできたという気がする。
アニメーション作品だったせいで、人が創り出す描いたものがこれほどまでに
人を感動させるのだと、同じ絵描きチームの人間として嬉しい。
自分の作品はひとりシコシコと日本の伝統文化の流れの中で創っていて、
世界を席巻しているディズニー映画とは規模も何もかも違うけど、
伝統は大事にしないと『モアナ』も言っている。
伝統文化の実践で疲れた我が身にはもってこいのエネチャージだったのである。
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