今年に入って初めての歌舞伎鑑賞。
昨年から上等なお席を取ってもらっている歌舞伎フレンドと一緒。
本日も前から2列目19番と20番というど真ん中のかぶりつきである。
演目は
『明君行状記』
『義経千本桜 渡海屋 大物浦』
『どんつく』の3本。
『明君行状記』は長セリフの応酬がつづく世話物。
『義経千本桜』は歌舞伎の代表演目のひとつで
平家再興を願った武将の末路を描いた義太夫狂言屈指の名作。
『どんつく』は陽気でおかしみのある江戸情緒たっぷりの舞踊で、
亡くなった三津五郎さんの三回忌追善狂言としての上演。
三演目のタイプがまったく違ったので、とても楽しめた。
時折、歌舞伎通であり、三津五郎門下として舞踊に通じている友人に
通人ならではの裏事情やら歌舞伎の見方などを教えてもらいながら、
本日も歌舞伎を堪能してきた。
前から2列目ど真ん中ともなると、本当に至近距離に役者がいるので、
ちょっとした目の動き、表情の変化なども手に取るように見える。
なので、生身の人間が演じているその臨場感や、当人の緊張感などが
ずんずん伝わってくるので、歌舞伎役者の凄さがつくづく感じられた。
先ず、よくぞあの長台詞を間違わずに(数回かんだが・・・)言えるものだと
梅玉さんに感心したし、
父の名に恥じぬよう頑張る三津五郎の息子の巳之助さんの一生懸命さにも
心打たれた。
そして、何より義経千本桜では友盛役の仁左衛門さんが、
自分の型で演じきるため、初老の身を正になげうって大上段から飛び降りたことに
驚いた。
この演目、最後の見得では、友盛が大きな碇を振り上げたところで終わる
スタイルが多いと思われるが、
今日観た仁左衛門さんはその大碇と共に後ろ向きに海に飛び込んで果てる。
その飛び降りるまでの狂気迫る演技と、途中、帝役の子役のセリフ回しのうまさに、
会場のあちこちで涙をぬぐう人の姿が・・・。
歌舞伎座であんなに泣いている人を見たのは初めてだ。
あの子役は誰かと調べたら、市川右近とあるので、
先日、襲名して右團次となった市川右近の長男に違いない。
数年前に歌舞伎界を担う役者さんが次々亡くなって、暗澹たる状態だったけど、
着実に次代を担うべく生まれてきた若い役者達は真剣に歌舞伎に取り組み、
伝統を守り、引き継ぎ、革新へと進もうとしている。
それを子役の右近君にも、大役に必死に取り組む巳之助さんにも感じた。
そしてまた、バトンを渡そうとしている大重鎮の仁左衛門さんや梅玉さんなど、
おじいさん達の覚悟と頑張りにも頭が下がった。
歌舞伎はひとりの力では到底出来ない。
ものすごく多くの人が関わって、更に役者達ひとりひとりの魅力が加わって
初めて成立する。
数日前に観た『モアナと伝説の海』も
エンドロールに流れる人の多さにびっくりしたが、
たぶん、歌舞伎も想像以上に多くの支える人がいるのだろう。
ひとつの作品を多くの人の手で創り出す映画や演劇の魅力に触れ、
羨ましく感じると共に、ひとりで生み出す芸術の気楽さと孤独を感じた。
今更、生み出す側には参加出来ないけど、
歌舞伎役者の真剣な思いを間近に感じる1ファンであり続け、
これからも応援していこうと思った。
最後に歌舞伎の衣装の美しさは特筆に値すると思う。
今回は巳之助さんが相模五郎役で身につけていた全身白づくめの衣装が
格好良かった。
そのままパリコレに出てきても可笑しくない。
歌舞伎の衣装はかなりにぎにぎしいものが多いが、どれも意味があり、
伝統に裏付けられている。
そのあたりが奥が深くて面白い所以だろう。
残念ながら舞踏家の目は持ち合わせていないが、
ビジュアル面で、カラーコーディネイトやファッションセンスの観点から
歌舞伎鑑賞するのも一興なのである。
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