2020年9月9日水曜日

版17展 24年の歩み











9月16日より、岩崎ミュージアムで始まる
「版17展」の記録集が届いた。

「版17」という版画家グループは
その24年の歴史を
今回の展覧会をもって、閉じることになっている。

私は2006年の「第13回展」からの参加で、
会の活動をその数年前から展覧会を通じて見ており、
運よくそのメンバーからのお誘いを受け
仲間に加えてもらった。

「版17」というグループは
神奈川県に住む今は亡き由木礼氏の元に参集した
主に神奈川県在住の17名限定の版画家集団である。
(後に住まいは神奈川、東京、千葉、埼玉となっていく)

主なメンバーは男性で、
それもこわもてのおじさま揃い、
当時、私は神奈川県人になって日が浅く、
由木礼氏も存じ上げないし、
それ以外のメンバーに知り合いもほとんどいない状態だった。

なので、メンバーにどうかという話をいただいた時は
正直、うれしかったと同時にすごく驚いた。

17名のうち、女性は私を含めて3名。
いささかたじろぐ男性色の強いメンバーと共に
三渓園の燈明寺での特別展示が、初回の参加となった。

初参加の燈明寺では、毎日、着物を着て、会場入りし、
置き畳の上に風炉先仕立ての版画作品を置き、
希望の方にはその場でお茶を点てお出しするという
パフォーマンスを行った。

次の年は「オブジェ展」だったので、
全員、版画家にもかかわらず、
オブジェを出品するという課題に挑戦。

私は自刻自摺の木目の作品で、椅子と背景を作り、
今思えば、その年代の私の代表作になった。

オブジェで作品を出すように宿題が出なければ、
自分がオブジェに挑戦することはなかったのではないかと思うと
版17に参加することで
自分を鍛えることができたといえる。

更に2009年には
「版17」はチェコのプラハで展覧会を行うことになり、
17名の内、プラハまで行った作家の中で
木版画家は私ひとりだったので、
着物を着て、ギャラリーの見守る中、
木版画の摺りをデモンストレーションした。

「版17」は24年間で6回の海外展を開催しているが、
その際、現地に出向いた作家の中で、
木版の摺りができる者が、
デモンストレーションを行い、
日本の冠たる芸術である浮世絵の技法を紹介することになっている。

私は入会して間もなく、
2007年の岩城ミュージアムでの展示の折も、
デモンストレーターとして、木版の摺りを行っている。

この時は神奈川県の画廊組合が行ったアートラリーの
賞品作品を担当していたので、
摺りのデモンストレーションではこの作品を摺った記憶がある。

会場には100名以上のお客さんがつめかけ、
人前で木版画の制作工程の説明をしながら
摺るということに目覚めたのが、
この岩崎のデモだった気がする。

その勢いで、
プラハのデモでは着物を着て、赤いたすきをかけ、
言葉こそ通訳がついたが、
時折、英語を交え、
司会の園山氏とボケとツッコミみたいなやり取りをしつつ、
領事館館長ご夫妻を含む、大勢のチェコの人々の前で、
しっかり日本女性をアピールすることができたと思う。

今、振り返ると
あの頃が版17としても、個人的な版画家活動としても
楽しかったし、面白かった。

そこに参加できたことはラッキーだったし、
幸せなことだったと思う。

その後、版17は岩崎ミュージアムから企画展の扱いを外され、
東京都美術館の建て替え後の
都美セレクション 第一回展に応募したり、
銀座のIONACギャラリーに拠点を移したりして、
徐々に破天荒なグループ展という位置づけから
おとなしくて重鎮ばかりの展覧会になっていく。

17名の会員を束ねる長を続けることと、
17名分の大きめの作品、各2点ずつの
展示スペースを確保することはかなり難しく、
結局、24年間の活動に終止符を打つことになった。

思えば、みんな等しく年を取り、
何かしら既往症を抱えつつ、
コロナに愛されたらヤバイメンバーばかりになってしまった。

それでなくても我の強い面々が寄り集まって、
24年間もひとつのグループ活動を続けてこられたんだから、
よく、頑張ったと思う。

お金もないくせに
やれカタログを作ろうだの、
海外展を企画しようだの、
海外の作家を招聘しようだの、
希望ばっかり唱える会だった。

長年、会計としては
会費徴収の時期になると、
同じ人にやいのやいのと催促するのが常だった。

しかし、おかげで、
最後にはこんなに素晴らしい記録集ができた。

記録集のあちこちに
「ウォーリーを探せ」のように
自分の姿と作品と名前をみつけ、
胸がキュンとなった。

懐かしい日々が走馬灯のようによみがえり、
版画家として経験した様々な出来事が
自分の宝物なのだと思えた記録集である。

版17最後の展覧会には
死ぬかと思うような大変さで摺り上げた例の作品を出品する。

ぜひ、17名(正確には16名)の力作?を
ご高覧しただけたら幸いに存じます。

私はお当番として、9月20日と10月1日には
間違いなく会場に詰めています。

「版17」~24年の軌跡~
2020年9月16日~10月4日
10:00~17:00
岩崎ミュージアム
(入場には事前の予約が必要です)
045-623-2111

どうぞ宜しくお願いしたします。


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