2021年10月13日水曜日

トリオ・リベルタにかぶりつき

 








本日は待ちに待った
トリオ・リベルタのコンサート。

何を待ちに待っていたかというと、
もの凄くいいお席が取れていたのだ。

前から4列目、まん真ん中の席とひとつ左の席。

このチケットを取ったのは
さかのぼること約1か月前。

やはりトリオ・リベルタの
「浴衣でサロンコンサート」が行われた次の日、
ファンクラブ会員だけに送られてくるメールで、
今日のコンサートの先行予約のお知らせが来た。

その中に席の希望があれば書くようにとあったので、
ダメもとで、フライヤーの地図の座席番号をみて、
「前寄りで8~12番あたりが取れたら嬉しいです」と
メールに書いて申し込んだ。

そうしたら本当に前から4列目の10番と12番が
割り振られたというわけだ。

チケットの入った封筒には
別途、会場の地図も入っており、
わざわざ黄色いマーカーで取ってくれた席の番号に
印が付いていた。

まるで音楽監督が座って指示する時のような席。
しかも、コロナ禍で
ひとつおきにしか人を入れていないので、
実際に座ってみれば、
だれひとり自分の前には人が座らない状態で
ヴァイオリンの石田様とピアノの中岡さんが
ストレートに見える。

そんな特等席をいただいておきながら
着物を着ないという選択肢は、私にはない。

個展の初日に来た紬に
紫いろの地にろーけつ染めの唐草模様の帯を〆め、
いそいそと出掛けた。

同行の友人も相手は着物かと、
きれいなミモザイエローのセーターに
ミモザ柄のスカートをチョイス。

きっと舞台からもよく見えるに違いないと
ふたりとも張りきった。

コンサート内容は
前回のサロンコンサート同様、
クラシックとピアソラが半分半分。

しかも、一部と二部に分けるのではなく、
クラシックの次にピアソラ、
また、クラシックの次にピアソラと、
今までにない構成。
(アンコールでさえもこの構成で4曲)

ピアソラはジャンルでいえばタンゴなのだが、
全く違和感なくクラシックの曲と融合し、
その選曲の妙で、
とても新鮮に感じることが出来た。

折しも、
ショパン国際ピアノコンクールの真っただ中。

私は連日、YouTubeでショパンの曲を弾く
ピアニストの映像を見まくっていたので、
今回はリベルタ・メンバーの顔を
「曲の解釈と顔の表情」をテーマに
じろじろ見てしまった。

ショパンコンクールに出ているピアニストは
いずれもとても切なげな表情や恍惚の表情など、
「人前でそんな顔しちゃっていいんですか」と
言いたくなるような、凄い表情をする。

たったひとつの音を出すのに
そこに込めた感情をあらわにして
全身全霊で指先を鍵盤に置く。

その表情やしぐさも審査対象なので、
自然にそんな表情になってしまうというより、
その表情さえも演奏の一部をいうことだろう。

ショパンコンクールのピアニストたちに
比べれば、
トリオ・リベルタの3人は
淡々と演奏しているかに見えるが、
目の前の石田様は感情がのってくると
体をしならせ、その1音に弦を集中する。

初めて行った和光大学ポプリホールは
コンパクトなホールながら音響はいい感じで、
それぞれの楽器から音が立ち上るのが
ハッキリ聴きとれる明快さがあって、
全体にクリアで華やかな音色に響いていた。

友人と二人、帰りの電車の中で、
「今日のは本妻ヴァイオリンだったわよね」と
石田様の使っている2台のヴァイオリンの
どちらが使われたか確認し合った。

石田様のヴァイオリンは
先に持っていた本妻ヴァイオリンと
数年前に手に入れた愛人ヴァイオリンがある。
(制昨年は大体同じ、イタリア製)

本妻ヴァイオリンは繊細で豊かな音が出るが、
愛人ヴァイオリンはもっと派手で伸びのある音色なのだ。

私たちの間では
大きなホールには愛人を連れていき、
今日のようなコンパクトなホールでは
本妻を使っているのではと分析している。

ファンがそんな解釈をしているなんて
石田様の伺い知るところではないだろう。

それと同じで
暗い客席にいてもチラッとは見るかもしれないと
ファンは何を着ていくのか考え、おしゃれして、
胸ときめかせて、前列4番目の席から
熱視線をおくっている。

大相撲の升席で、
タニマチのお姐さま方が
いい着物を着て観戦しているのと同じ。

だからといっても何ごとも起りはしないのが
現実だが…。

帰りがけ、
アンコールで弾いた曲目が書かれた紙の端に
3人のサインをみつけ、
サインする姿が目に浮かび、
肉筆のサインに3人の温もりを感じた。

今は演奏後のサイン会もないし、
CDを買って握手するなんてこともできない。

でもやっぱり、同じ空間で
同じ空気を吸って、
その紡ぎ出す音の振動を体で受け止める
生のコンサートは最高だ。

そんなLIVEの楽しさを満喫させてくれた
トリオ・リベルタのコンサートであった。

ブラボー!!


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