2023年3月10日金曜日

新しい試み2日目

 




















今日は新しい試みで摺る
本摺りの2日目。

昨日は雨降りの日に学校から帰宅する少年が
水たまりで遊んでいるところに
フォーカスして、
雨と水たまりから摺り始めた。

結果、1点目は紫陽花を入れない作品になった。
2点目は紫陽花の花は入っているが、
背景の垣根は紙の白のままで残した。

今日、トライした3点目は
昨日とは違う順番で摺ることにした。

まず、雨から摺るところは同じ。
相変わらず雨だけでも美しい。
(自画自賛)

次に昨日は背景の空の部分を摺り、
その影響で、次は水たまりを摺った。

しかし、今日は雨のつぎは紫陽花の花。
雨に使ったパステルカラーの5色と
相性のいい同じくパステルカラーの
紫陽花の花と葉っぱを摺ってみた。

ここまでは可愛い色だけで出来ている。
版画も油絵も同じだが、
結果オーライを狙うのではなく、
途中のどの部分も色合わせの美しい
心地よい配色で進めていくのがよいとされている。

作者もその方が気分がいいので、
長時間、気持ちよく制作できる。

次に背景の空の色を
今回は古代紫を基調にした
グレイッシュ・パープルの濃淡にした。
昨日のグレイの濃淡より濃い濃淡である。

大きな場所の絵具の明度が変わることで、
他の部分の明度も変わってくる。
上部を摺ると、下部もバランス上、
摺ることになるが、
今日は水たまりではなく、雨に濡れた路面から。
混色はせず古代紫そのものの色にしてみた。

ここで水たまりの部分を
何とか紙の白のまま残したいという願望が
むくむくと湧いてきた。
紙の白の楕円形の中に摺られた雨の模様が
とても美しかったからだ。

それを残せるかどうかはまだ先の話なので、
まずは少年のパートを摺ることにし、
レインコートと傘、顔や手足を摺る。
長靴を最後に残したのは
もしかして色を変更するかもとの思いから。

果たして、やっぱりという感じで
ここは昨日の青い長靴ではなく、
黄色い長靴であるべきと
心の声がうるさく言ってきた。

しかし、一度、青い絵具を乗せた版に
黄色を乗せるのはかなり難しい。
黄色より青の方が濃いので
版木に青が染みこんでいると
黄色がうまく出ない可能性が高いのだ。

お風呂場で版木を洗い、更に長靴のところを
布でぎゅうぎゅうこすり、
何とか青い絵具を追い出し
黄色い長靴として摺れるようにした。

ここまでの色合わせは思い通り。
残るは紫陽花の花のシルエット部分と
背景の紫陽花の垣根。

まずは絵具を調合してあった
濃い緑と渋い黄緑のグラデで垣根を摺った。
何か思い描いたイメージと違う。
しかも、
残った紫陽花の花びら以外のシルエット部分に
どんな色を乗せればいいのか分からない。

何十年も版画を摺ってきても
何色を置けばいいのかピンとこないこともある。
万事休す。

今日は5枚、和紙を湿して作業しているが
ここへきて1枚摺って急ブレーキがかかった。

アトリエを抜け出し、あけぼのの桜餅を頬張り
お茶をしばいて、しばし休憩。
頭をリセットしないと残り4枚も失敗してしまう。

アトリエに戻り、作品を冷静に見つめ直し、
水たまりを紙の白のまま残すため、
垣根は極明るいグレーにしてみることに。
紫陽花のシルエットは中間色のグリーンの濃淡に。
更にパステルカラーだった紫陽花の花びらと葉を
もっと強い赤紫と緑に変更した。

つまり、花びらと葉っぱは
すでに摺ったものの上から
もっと強い色を乗せたわけである。

とまあ、こんな風に
アトリエでひとり悶々と思いを巡らし、
自分の色感を信じ、
本摺りだというのに
本番で計画した色の変更を実行した。

結果オーライかどうかは分からないが
本人としてはこちらの色合わせの方がいいと
思える方で
残り4枚を摺り、水張りした。

これで昨日と今日で、ひとつ分の版木から
3点の作品を創ったことになる。

試みとしては面白いと思うので、
是非、展示の機会を設け、
皆さんのご意見を賜りたいものである。

ともあれ、
これでWBCをゆっくり観戦できる。
今夜はチキンのオーブン焼きとポテサラを作った。
ビールが旨かったのはいうまでもない。








































0 件のコメント:

コメントを投稿