令和7年、大相撲9月場所の3日目
両国国技館まで
大相撲観戦に行ってきた。
今場所は私の『推し』の力士にとって特別の場所。
先々場所にスピード出世で横綱にまで
昇りつめた「大の里」だったが、
先場所は途中から崩れていいところなし。
今場所は期するところありの大切な場所。
先場所は名古屋だったので、
そのふがいない姿はテレビで観ていたが、
今場所は東京、両国の国技館なので、
是が非でも生横綱をこの目で観たいと
勢い込んだ。
いつも国技館のチケットを取ってくれているのは
Aさんご夫妻で、
Aさんの旦那さんは「友風」関の中学の時の先生。
相撲部で相撲を教えていたのだ。
以来、ずっと親のような気持ちで
「友風」を見守り、応援している。
「友風」は幕内にいた時、とても大きな怪我をして
相当下まで転落してしまった。
しかし、
努力の甲斐あって数場所前に十両へ昇格。
私がAさんと親しくして大相撲観戦に
伺うようになってからはずっと十両力士だった。
更に、先場所「友風」は勝ち越したことにより、
今場所はなんと幕内の前頭十六枚目に復活した。
これは本当にすごいことで、
十両と幕内では全然待遇面も違う格段の差なのだ。
もちろん、そんな「友風」を応援するため、
川崎の後援会を中心とした応援団は
まとめた位置に席をとり、
タオルやうちわを手に手に
「友風」に力水ならぬ、黄色い声援でエールを
おくるため国技館に集結した。
Aさんご夫婦と私は着物を着て、
晴れの舞台のお祝いの気持ちを表現した。
私の着物と帯はトンボの柄で
トンボは「勝虫」と呼ばれ
勝負事には縁起がいい。
これがゲン担ぎの大切にする世界での
せめてもの応援の気持ちである。
私もその一員に紛れ込ませてもらっているので
もちろん、「友風」の出番では「友風」ファンだ。
しかし、なんと間の悪いことに
3日目の「友風」の対戦相手は「翔猿」だ。
「友風」は威風堂々、大きな体を活かした押し相撲だが
「翔猿」はその名の通り、小兵ながら
すばしこい動きを得意とする負けん気の強い力士。
闘争心むき出しに何をしでかすか分からない。
そんなところが全く油断ならないので、
今日はまずい相手との対戦だなと
だれもが思っていた。
内心、無理かなと思っていた「友風」ファンも
少なからずいただろう。
「友風」の取り組みは中入り後の4番目。
私たちは2時には集合して、席に着くなり
お稲荷さんやいぶしさんまの押し寿司など
お昼ご飯をいただきながら、十両の取り組みを観た。
最近はまだ髷も結えないような力士が力をつけ、
十両の土俵で活躍している。
そうかと思えば、41歳にしてまだまだ幕内上位で
初日二日目の横綱と対戦した「玉鷲」関もいる。
今場所、大関を狙う位置にいて注目されているのは
「若隆景」関だ。
3日目にして「若隆景」はこの「玉鷲」と対戦する。
さて、この若武者と重鎮との対決やいかに。
そんな感じで自分の「推し」は押さえつつ、
他にも何人か気になる力士の順番を気にしながら
途中で写真撮影会したり、
「絵番付」という幕内力士の似顔絵(全身像)で
描かれた番付表を買いに行ったりと
手慣れたAさんについて歩いて
国技館の生観戦を楽しんだ。
「友風」は「翔猿」相手に長い攻防のあるいい相撲を
取って、勝ちを収めた。
取り組みが終わってすぐに物言いがつき、
長い協議時間にはハラハラしたが
「翔猿」の足が先に土俵から出ていると
ビデオ判定があり、「友風」が勝ち名乗りを受けた。
「友風」は取り組みの後、10分ほどで国技館を
後にするのが通例なので、
私たちは勝った「友風」の顔を一目見ようと
外に出て出待ちした。
まだ、興奮冷めやらぬ様子で赤い顔をした
「友風」は
川崎の面々やAさんご夫妻の顔を見て
顔をほころばせた。
負けて出待ちに応えるのと
勝って出待ちに応えるのでは
全く心持ちが違うだろうから、
本当に応援団がたくさん来ている時に勝てて
ホッとしているに違いない。
もの凄い声で「友風~」「ともかぜ~」と
叫んだ私たちの野太い声は
きっと「友風」の耳にも届いていたことだろう。
私も着物のマダム風情ではあったけど、
ちゃんと腹式呼吸の低い声で
Aさんご夫妻と共にしっかり声援した。
話が前後するが、
今場所の見どころのひとつに
横綱の土俵入りがある。
中入り後、幕内力士の土俵入りがあり、
引き続いて、横綱の土俵入りがある。
もちろん「大の里」の横綱のまわしをつけた姿は
初めて生で観る。
ふたりの横綱がそれぞれ太刀持ちを従え
堂々たる所作で土俵入りした。
先に「大の里」が「隆の勝」と「高安」を従え
土俵に上がった。
白いもちっとした肌質の横綱に
目も鮮やかな白い綱が神々しくさえある。
美しい。
豊昇龍の組は一段肌が浅黒く
格闘家というイメージだ。
さあ、2日目まで土つかずできている横綱ふたり、
3日目はいかに。
また、ひとり大関の「琴桜」はどうか。
場所の最初に横綱や大関がころころ負けると
場所が引き締まらない。
2日までは3人とも勝っているので
このままの調子で場を盛り上げてほしい。
3日目の対戦は
「琴桜」の相手は伸び盛り「安青錦」
「豊昇龍」の相手はこちらも伸び盛り「伯桜鵬」
そして
「大の里」の相手は苦手の「阿炎」
「阿炎」も負けず嫌いがまわしをしているような
力士で長い手足でぐいぐい来る。
「大の里」は苦手意識があると聞くので
圧倒されて引いてしまう悪い癖がでないといいが…。
そんなこんなでハラハラドキドキしていたが
最後の3番は
若い「安青錦」が勝って
すごすごと大関「琴桜」は下がっていった。
横綱は二人とも、相手をぶちかまし、
さすがの実力を見せつけて3日目は終わった。
取り組みがすべて終わった後は
河岸を変えて「ちゃんこ寺尾」で祝勝会。
ちゃんこ鍋の具材の上には
大根で作られた「白星」が。
貸し切りで大盛上がりの応援団の面々は
もちろん、「友風」関の今宵の取り組みを肴に
美味しいちゃんこと美味しいお酒を
心ゆくまで楽しんだ。
私が国技館から一路、京急電車に揺られ帰宅すると
夜10時過ぎ。
世界陸上の110mハードルの決勝が終わったばかり、
メダルを狙っていた村竹ラシッド選手が
ほんのコンマ数秒遅く5位に終わり
「何がいけなかったのか」
「何をすればよかったのか」と
人目もはばからず号泣して悔し涙を流していた。
戦うスポーツ選手の姿が
ここにもあることを見ながら、
私も自分にできることに真摯に取り組み、
真っ向勝負でやらなくては。
そんな熱い思いがこみ上げてきた。
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