ここ数日、個展に出品するオブジェに使う千代紙を摺っていた。
『版であること(複数性の意味)』
『版木にも美しい木目がすでに存在すること』
『日本人と木の文化』
当たり前に接している木や木目、版画家にとっての版木などが
深掘りすれば日本人のルーツにまで関わっている、
そんな思いで創っているオブジェに使用する千代紙である。
もちろん、原画になっている木目は私の作品で
版木にすでに存在している木目をさらに浮き上がらせ、版として彫り上げたものを
摺っている。
その1枚(両面彫ってあるので厳密には2点)と
何も彫っていない1枚の版木さえあれば
いろいろな色の組み合わせの千代紙が出来る。
今回はローズウッド風の家具と鋳物のガーデンチェアー、
貝やガラスのピッチャーなどをオブジェにするつもり。
もともと木製だとだれもが知っているものと
もともと木製ではないと知っているものの両方を、
すべてこの千代紙で包んで木製風にしてしまうつもりだ。
前回前々回と、個展におけるオブジェコーナーの評価が高いことを受けての
3匹目のドジョウの感は否めないが、
オブジェ作品を展示できるのは個展の時ぐらいしかないので、
今回も正面の壁はオブジェでいこうと考えている。
オブジェは売値がつかないコーナーになるので、
多分に実験的な意味合いが強いが、
作家として何を考え作品を創っているのか表明の場として
やっぱり外せない。
立体なので会場に動きを作る上でも効果が高いと考えている。
その材料となる千代紙が大量に摺れたので、
ここしばらくはオブジェ制作に取りかかることにしよう。
きっと個展の始まる前には家中のあちらこちらに
木目の家具や小物がころがっているに違いない。
それを見ながら、また、何か感じることがあれば
次の一手が閃くかも。
木ではないと分かっているものを木製にしてしまうとどうなるか。
究極は木目の人間だよな、きっと。
分かっちゃいるけど、具現化は難しいよなぁ。
ブツブツ・・・。
そんな風に版画家は、日々、ひとりアトリエで呻吟している。
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